【2020年度税制改正】中小企業が注目すべき9つのポイント

【2020年度税制改正】中小企業が注目すべき9つのポイント

2020年度の税制改正大綱が、2019年12月に発表されました。そこで改正案の内容を、中小企業向けと大企業向けの2つに分類してお伝えしていきます。今回は、中小企業向けに新たに創設される税制と、既存制度の見直しや制度延長になる見込みのものについて解説していきます。

また、他の押さえておくべき2020年度の税制改正内容はこちらの記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。

経理プラス:【2020年度税制改正】大企業が押さえておくべき改正ポイント
経理プラス:【2020年度税制改正】電子帳簿保存制度の見直し 進むペーパーレス化

新たに創設されるもの

まず、新たに創設される3つの制度について、それぞれどのようなものなのかをご説明します。

オープンイノベーションに係る税制措置の創設

オープンイノベーション促進税制とは、青色申告をする法人がベンチャー企業へ投資した場合に優遇税制が適用される制度です。第4次産業革命の可能性を最大限に引き出すためには、既存の企業とベンチャー企業が連携しイノベーションによって活性化する必要があるとの考えから、優秀なアイデアや技術を持つベンチャー企業の成長を促進する目的があります。

2020年4月1日から2022年3月31日までの期間に、一定基準のベンチャー企業へ1億円以上(中小企業は1,000万円)の株式投資を行い、期末まで保有した場合に、その株式の取得価額の25%以下の金額を損金にできるものです。なお、株式取得から5年以内に譲渡した場合に益金算入となります。

5G投資促進税制の創設

次世代通信基準となる5Gの導入を促進するための制度が創設されます。5Gはスマートフォンの通信だけではなく、自動車の自動運転やスマート工場、スマート建設などでも拡大が進められているものです。
海外では既にサービスが開始さていることもあり、日本国内でのインフラ整備を早急に進めることを後押しする目的があります。

5G事業者が整備する基地局の前倒し整備の分や、工場、建設現場、農業などのローカル5G事業者が整備する設備投資を対象に、15%の税額控除、または30%特別償却の特例が適用されます。対象期間は2022年3月31日までの予定です。

法人に係る消費税の申告期限の特例創設

法人が消費税の確定申告を提出する期限を、1ヶ月延長できる特例が創設されます。今までは、法人税については提出期限の1ヶ月延長の特例がありましたが、消費税についてはその特例がありませんでした。そのため、消費税の申告の後に決算内容が変わると、再度修正申告を提出するなどの事務負担がありました。

このように、それぞれの提出期限が異なることで実務上の負担が生じることもあったため、負担を改善する目的で今回の制度が創設されました。2021年3月31日以降に終了する事業年度からは、消費税の申告期限の延長が可能です。

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見直し・延長されるもの

次に、既存制度の見直しや延長になる見込みのものについてご紹介していきます。

交際費等の損金不算入制度の延長等

交際費の課税に関する特例は、地域雇用の中心的な役割を担う中小企業の営業活動を活性化する目的があります。引き続き支援するため、交際費等の損金算入制度が、2022年3月31日まで2年間延長になります。

中小法人は、引き続き定額控除限度額800万円までと交際費等の50%までのどちらかを選択できることになります。なお、2020年の税制改正で、資本金の額等が100億円を超える大企業は損金算入制度の適用対象外となっています。

少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例延長等

中小企業等は、一定の能力を有する社員を複数確保することが困難であり、IT機器のような少額資産を取り入れる事例も多いものです。このような業務効率化を促進する目的で、中小企業等の少額減価償却資産の取得価格の損金算入特例があります。この制度は引き続き2022年3月31日まで2年間延長されます。

なお、今回の改正から連結納税制度適用事業者と従業員500人超え(現行は1,000人以上)の法人は適用対象外となる見込みですので注意が必要です。

連結納税制度をグループ通算制度へ見直し

企業の組織再編を促し、グループ全体での効率的な経営の活性化を後押しするため、親会社と子会社などグループ企業が一体となって申告・納税する現行の連結納税制度を、親会社、子会社それぞれが申告・納税を行う「グループ通算制度」に見直します。

現行制度での事務処理の負担を軽減するねらいがあるようですが、改正後も研究開発税制や外国税額控除等の取り扱い、既存の連結納税グループ親会社の繰越欠損金の取り扱いは維持される予定です。2022年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。

グループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直し

連結納税制度からグループ通算制度に見直されることで、以下のようにいくつかの納税制度が見直しされます。

受取配当金等の益金不算入制度の計算や株式の保有割合

現行改正後
受取配当金等の益金不算入制度の計算原則法あるいは簡便法により計算関連法人株式等に係る配当金額の4%(上限設定あり)
株式の保有割合単体の保有株式数等で判定される100%グループ内の法人全体の保有株式数等で判定される

寄附金の損金不算入制度の計算・金額

現行改正後
税務上の資本金等の額会計上の資本金の額と資本準備金の額の合計

貸倒引当金の金銭債権

現行改正後
100%グループ内の法人間の金銭債権を含める100%グループ内の法人全体の中で定額控除限度額まで

これらの改正制度は、2022年4月1日以降開始する事業年度から適用になります。

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の拡充と延長

企業が地方自治体に寄附を行うことで、地方創生への取り組みを応援する目的がある企業版のふるさと納税の制度を、2025年3月31日まで延長することになりました。税額控除は現行の30%から60%へと引上げされます。この改正により、企業の節税対策が期待されます。なお、税額控除(60%)の内訳は下記の通りです。

対象となる税金現行改正後
法人事業税寄附額の10%寄附額の20%
法人道府県民税寄附額の2.9%寄附額の5.7%
法人市町村民税寄附額の17.1%寄附額の34.3%
法人税道府県市町村民税で控除しきれなかったとき寄附額の10%道府県市町村民税で控除しきれなかったとき寄附額の10%(現行維持)

特定資産の買換特例の一部見直しと延長

特定資産の買換特例が2020年3月31日から3年間延長されます。また、下記のように制度の一部に見直しがあります。

  • 譲渡資産の対象範囲
  • 課税繰り延べ割合の変更
  • 指定区域等の変更
  • 買換資産の対象範囲
  • 譲渡資産の適用要件の一部等

まとめ

今回は、主に中小企業に関連する2020年度の税制改正大綱についてお伝えしました。現行制度の延長については、適用期間の期日を確認してください。また、創設される内容については、引き続きの最新情報の収集をしましょう。グループ申告・納税については経理担当者も大きく係わる部分ですので、対象となる企業は十分に理解しておきたいですね。

また、大企業向けや電子帳簿保存法に関する改正内容をまとめましたので、あわせてご覧ください。

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

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大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。