押さえておきたい中小企業の会計指針・会計要領
中小企業はどのように会計処理を行えばよいのでしょうか。ここでは、会計処理がどのように行われるかを理解したうえで、中小企業が従うべき会計のルールとして公表されている「中小企業の会計に関する指針」の概要について明らかにします。
会計って何?
企業が事業活動を行った結果を会計という道具を使って処理することにより、企業が一定期間に行った活動の成果や、その時の状況を表すことが可能になります。
「会計」によると、たとえば“パソコンを10万円の現金で販売する”という事業活動は、以下のように表現されます。
これを「仕訳」と言います。事業活動が仕訳として会計処理され、仕訳が取引記録として蓄積されることによって、企業の財政状態や経営成績を表すことができるのです。
それでは何のために会計処理され、会計処理をすることが誰の役に立つのでしょうか。
企業は一人だけで完結しているものではありません。株主が出資し、経営者が経営を行い、従業員が労働しています。また、仕入先や販売先などの取引先が多く存在し、金融機関なども関係していることは多いでしょう。
これらの利害関係者(ステーク・ホルダーとも言います)が企業の財政状態や経営成績を把握することで、それぞれの利害を調整(※1)する機能を会計は担っています。ここで、「財政状態」はある一時点における企業の状況、「経営成績」はある一定期間における事業の業績を示すものであり、前者は「貸借対照表」、後者は「損益計算書」として作成されます(図1)。
※1
たとえば、株主は多く配当してもらうほうが良いですが、経営者は多くを配当すると経営の原資が乏しくなります。そのため「会計」というルールを用いることで、利害関係者の理解を得るのです。
会計処理のルール
利害調整機能を果たす会計処理は、一般に定められたルールに従って行われなければなりません。たとえば会社法においては、“一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行(会社法第431条)”によって会計処理することが求められており、それらは企業会計基準委員会(ASBJ)によって作成されています(図2)。
但し、最近では会計基準の国際化が進み、日本でもIFRS(国際財務報告基準)に基づいた会計処理を採用している上場企業が増えてきています。日本で採用できるIFRSについても「指定国際会計基準」として金融庁長官が定めています。
これらの会計基準は、すべての企業に対して適用されますが、非常に利害関係者の多い上場企業などにも適用されており、会計処理が難しい内容も含まれています。特に中小企業が利用するためにはコストの観点からも対応が難しい場合もあり、会計実務としては法人税法の規定に沿った会計処理が行われることが多いというのが実態です。
中小企業が会計処理するにあたって
そこで作成されたのが「中小企業の会計に関する指針」です。資金調達先の多様化や取引先の拡大等も見据えて、会計の質の向上を図る取組を促進するため、中小企業庁、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会がそれぞれ基準の作成を行っていましたが、それらを統合することによって、日本における中小企業が準拠すべき基準として作成されました。
この指針に準拠した会計処理を行うことによって、企業の財政状態及び経営成績が適切に表示されることになるため、経営者が自社の状態を適切に把握できるようになったり、たとえば、資金調達金利の低減措置を受けられる場合(※1)もあるなど、適用するメリットは多くあります。
(※1) 「中小企業会計のための基本要領」に従った処理を行い、それを税理士等が確認することで優遇措置を受けられる場合があります。
中小企業の会計に関する指針は、中小企業のための規範として活用するため、コスト・ベネフィットの観点から、会計処理の簡便化や法人税法で規定する処理の適用が、一定の場合には認められています。中小企業が使いやすいように、対応が図られているのです。
国際的な観点でもIFRS for SMEsという中小企業が採用すべき基準が公開されています。
このような基準に準拠した会計処理を行うことにより、企業経営における意思決定を誤るリスクも減少し、また対外的に信頼性の高い報告ができることから、積極的に適用していくことが望まれます。
中小企業の会計に関する指針を分かりやすい資料にまとめました。
是非ご活用ください。
経理プラス:中小企業の会計に関する指針 -収益・費用-
中小企業の会計に関する指針は、これまでもたびたび改訂されてきています。最新の情報については、下記の参考サイトをご確認ください。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。