残高確認状が届いた場合の対処方法は?
監査を受けている仕入先などがある場合、その仕入先から売掛金(当社にとっては買掛金)の残高確認状(以下、単に「確認状」)が郵送されてくる場合があります。
いきなり届くと驚いてしまうかもしれませんが、何のために送られてきて、どう対処すれば良いのかがわかれば、それほど恐れるものではありません。
今回はこの確認状についてご説明いたします。
そもそも何のために届くの?
確認状は、取引先と共通の認識で計上されるべき勘定科目について、四半期や半期など定期的にお互いの残高を一致させておきましょうという意味合いで送付されます。
たとえば、自社と仕入先との取引において、自社で計上される買掛金の残高と仕入先で計上される売掛金の残高は基本的には一致するはずです。それぞれの経理作業のタイミングによって、計上の時期が少しずれることもありますが、そうしたタイミングのずれを調整すれば一致します。
もし一致しない場合、取引の計上漏れや入金の確認漏れなど何らかの認識の不一致があるということであり、早期に是正しておかなければ後々トラブルになってしまいます。
さらに、こうした認識の不一致の解消という目的以外にも確認状を送付する場合があります。
それが、監査手続としての残高確認です。監査は簡単に言えば粉飾が行われていないことを確かめるために行われます。そして、最も一般的な粉飾の方法として、資産の過大計上が挙げられます。
たとえば、売掛金を実態より多く計上することで、その相手勘定である売上高を過大に計上し、成績を良く見せるという方法です。これを防ぐには売掛金の相手方である得意先に、買掛金の残高がいくらかを確認するのが最も簡単で、確実な方法です。
そのため、監査手続として確認状を得意先に送付するのです。
確認状を送る勘定科目は?
確認状は売掛金だけを対象として送付されるわけではありません。
確認状の送付は、監査手続の中でも企業の外部からの回答を文書で得られる手続として、証明力が高く、また比較的簡単に行えるため、相手方に確認することによって確かめることができる様々な勘定科目について使われる手続です。
具体的には、売掛金のほかにも、以下のような勘定科目に対し確認状を送付することが考えられます。
- 預金
- 受取手形
- 貸付金
- 外部で保管されている棚卸資産
- 外部で保管されている有価証券
- 借入金
- 支払手形
- 買掛金
- 偶発債務
- リース債権・債務
たとえば、預金であれば、金融機関に預金残高についての確認状を送付することによって、貸付金であれば債務者に債務残高について確認状を送付することによって、当社で計上されている額が正しいかどうかがわかります。
確認状の種類は?
確認状を送付することを監査では「確認」と呼びますが、確認は大きく積極的確認と消極的確認とに分かれます。
積極的確認とは、確認状に記載した金額や情報について確認先が同意するか、または確認先が有している情報を記入するよう依頼する確認方法です。つまり、必ず確認の回答を求める方法です。
これに対し、消極的確認とは、確認状に記載した金額や情報に確認先が同意しない場合にのみ回答を求める方法です。
通常、監査では積極的確認が行われますので、確認状が届いた場合には必ず回答を返信しなければ、取引先から延々と回答の催促がくることになってしまいます。
どう対処すれば良いの?
それでは、実際に確認状が届いた場合、どのように対処すれば良いのでしょう。積極的確認の場合、回答をしなければ催促が来つづけるわけですから、ここでは、具体的な回答の方法をお伝えします。
送られてきた確認状には、勘定科目とその金額が記載されていると思います。確認状に記載されている勘定科目の金額が自社で認識している金額と一致していれば、相違のない旨を記入し、同封されている返信用封筒で郵送します。
もし自社で認識している金額と一致していない場合には、相違している旨を伝えた上で、記帳タイミングの違いなど、相違している原因がわかれば、分かる範囲でその原因と金額を付記し返送します。
いずれの場合にも、コピーをとって保存しておいたほうが無難です。
また、確認状が監査手続の一環として送られてきている場合(監査法人が差出人の場合)、当該監査法人宛に返信します。
取引先に直接送付してしまうと、改ざんの可能性があるため、監査手続としてはやり直しになってしまいます。同封の返信用封筒の返信先は監査法人となっていると思いますので、それを使えば間違いありません。
まとめ
今回は、残高確認状の意義と、届いた場合の対処方法についてご説明いたしました。
ルーティンな作業ではありませんし、差出人が監査法人となっている場合もあり、びっくりしてしまうこともあるかと思いますが、本記事を参考に対処していただければと思います。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。