【税理士監修】収入印紙の割印とは?目的や実務上のやり方を解説
「割印ってどういう目的で押すの?」
「契約書の印紙の割印は片方だけでいいって本当?」
「割印は印紙のどの部分に押せばいいの?」
など、日々の業務の中でみんなが疑問に思っていることを解決します。
また、収入印紙の領収書に貼る収入印紙の金額や貼り方については下記記事で紹介していますので併せてご覧ください。
経理プラス:領収書に貼る収入印紙はいくら?金額や種類、購入方法を解説
収入印紙とは
割印を考える前に、そもそも収入印紙とは何でしょうか。収入印紙をきちんと理解していないと、割印の意味や目的が分らず、どうすれば良いのか分りません。
国税庁の令和4年5月の印紙税の手引きというパンフレットでは、印紙税は日常の経済活動で作成される契約書や領収書などに課税される税金で、20種類の文書が対象となり、それぞれ納付すべき印紙税の額が定められています、とのこと。
この印紙税を納付する手段が、収入印紙。つまり、収入印紙の背景には、印紙税があるということです。割印という言葉は日常使われますが、印紙税法では消印と言っています。一般には収入印紙と言いますが、印紙税法では印紙と言っています。
印紙犯罪処罰法や印紙等模造取締法が、収入印紙の偽造、変造や紛らわしいもの製造、輸入、販売などを処罰しています。
また、法人税の税務調査に合わせて、消費税や源泉所得税と共に印紙税が対象とされることがあるので注意が必要です。
割印の目的
次に、なぜ割印する必要があるのか。印紙税法第8条2項は、課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙を貼り付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない、と定めています。消印の目的は、収入印紙の再使用を防止することです。
割印のやり方と注意点
基本事項と目的が分ったので、割印の仕方や注意点を考えます。
- 割印のしかた
割印は、印紙税法第8条2項にあるように当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければなりません。つまり、添付した契約書・領収書と収入印紙に跨るように印章を押す必要があります。消印の方法は、このように印章のみならず、署名することでも行えます。なお、印鑑は実印や銀行印など地方自治体や金融機関に登録されている特定の印影をさしています。これに対し名前などが彫ってあるいわゆる三文判などのはんこを、正しくは印章と言います。 - 誰の印章や署名で割印するのか
割印は必ずしも自ら行う必要はなく、代理人、使用人、その他の従業員でも良いとされています(印紙税法施行令第5条)。 - 割印するときの印章
通常印章と呼ばれるもののほか、氏名・名称などを表示した日付印や、役職名・氏名などを表示したゴム印でも割印できます。 - 署名で割印するときは
氏名でも、通称でも、会社名でも良いとされています。但し、㊞と書いたり斜線を引いただけでは印章や署名にあたりませんから割印したことにはなりません。 - 印章や署名ははっきり見えて消せないように
印紙税法第8条2項は、判明に印紙を消さなければならないとしていますので、一見して分るように印章しまたは署名することが必要です。また、通常の方法では消せないようにすることが必要なので、鉛筆や消えるインクで署名することは割印したことにはなりません。 - 契約書には当事者すべての割印が必要か
契約書の場合契約当事者が契約書に押印した印鑑で、それぞれ割印するのが通常です。しかし、印紙税法の消印の趣旨からすれば、再使用ができなければよいのですから、契約書では契約の一方の当事者のみで良いことになります。
割印の使われ方
収入印紙の背景にある印紙税法から割印を見てきました。印紙税法の求めるものと、実際に行われている業務には、少々隔たりがあるかもしれません。たとえば、二者間で契約を締結する場合、契約書に貼られた収入印紙には、契約者のところに押された印鑑で契約当事者両者が割印してあるケースがあると思います。これは印紙税法からすれば、やり過ぎとも思えます。
しかし、実務の慣習として育ってきたものと違うことを、印紙税法は認めているからとしてやってしまうと、無用な問題を起こしたりいわれのない誤解を受けたりするかもしれません。日常業務の中では、やり過ぎと思えることは見過ごし、法令違反になりそうなことは断固として行わない姿勢が必要でしょう。
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