これから始める財務分析!決算書の読み方
財務分析とは? なぜ必要?
財務分析とは、会社の貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などをもとにして、会社の経営状態を様々な観点から分析をすることをいいます。会社は毎期、決算を行い、決算書を作成しています。決算書は過去の実績を表すものですが、同時に、会社の取引活動が数値化されすべて反映されているものですので、過去の数値をうまく活用すれば、将来に活かすことができます。
貸借対照表の財務分析の基本
貸借対照表の財務分析は、次のような指標を用いて行います。
1.流動比率
流動比率とは、流動資産と流動負債を比較し、会社の短期的な支払能力を把握するための指標で、算式は次のとおりです。
流動比率=流動資産/流動負債×100
流動負債を上回る流動資産がある方が短期的な支払能力は高いです。逆に、流動比率が100%を下回っていて流動負債が流動資産よりも多いということきは、流動負債を支払うことができなくなる可能性も高まることから、資金ショートするリスクがでてきます。
ただし、現金商売の場合は、多くの流動資産を抱えていなくても日々、現金が入ってくるので支払能力はありますし、適正水準は業種によって異なります。
2.当座比率
当座比率とは、当座資産と流動負債を比較することで、短期的な支払能力を判断する指標で、算式は次のとおりです。
当座比率=当座資産/流動負債×100
流動比率とよく似た指標ですが、分子に流動資産ではなく、当座資産を用います。当座資産とは、現金、預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券などのことをいいます。
当座資産以外の流動資産の主なものには棚卸資産がありますが、棚卸資産は通常は即時に換金するのが難しい資産であるため、そのような資産(当座資産以外の資産)を除外して指標をみることで、より厳密に短期的な支払能力を判断できるようになります。
3.自己資本比率
自己資本比率とは、総資産(総資本)のうち自己資本がどの程度を占めているかを表す指標で、算式は次のとおりです。
自己資本比率=自己資本/総資産(総資本)×100
自己資本とは株主からの資本金などをいい、借入金(他人資本)などと違って返済しなくてもよいものです。総資産に占める自己資本の割合が高いほど経営が安定しているものと考えられます。
4.固定長期適合比率
固定長期適合比率とは、固定資産に投資した資金がどれだけ長期資金(固定負債+自己資本)で賄われているかを示す指標で、算式は次のとおりです。
固定長期適合比率=固定資産/(固定負債+自己資本)×100
長期的に使用することで収益を生む固定資産は長期資金で賄わなければなりません。これは固定資産と長期資金とのバランスを見る指標です。
損益計算書の財務分析の基本
損益計算書の財務分析は、次のような指標を用いて行います。
1.売上高増加率
売上高増加率とは、当期の売上高と前期の売上高を比較して、売上高の伸び率を把握するための指標です。
売上高増加率=(売上高-前期売上高)/前期売上高×100
事業を拡大していくには、売上を伸ばしていかないといけません。
また、売上高増加率の推移を見て、売上高増加率が落ちているようであれば、それを引き上げる方法を考えなければなりません。それでも売上が伸びないようであれば、事業の転換点が近づいていることを示している可能性があります。
2.売上高総利益率
売上高総利益率とは、粗利率ともいい、売上高に占める売上総利益の割合を示します。
売上高総利益率=売上総利益/売上高×100
低い粗利でたくさんの商品を販売する戦略をとっている会社では売上高総利益率は低くなります。一方で、少量で高い粗利をとる戦略の会社は売上高総利益率が高くなります。このように、売上高総利益率は、会社によって様々ですから、自社の方針と売上高総利益率が整合しているか、ということを確認します。
ただし、どのような戦略をとっているにしても売上高総利益率は原価を削減したり、販売力を強化したりして増加させることが望ましいでしょう。それが減少傾向にあれば、競争力が低下していることを示している可能性があります。
3.売上高販管費比率
売上高販管費率とは、売上高に対して販管費がどれくらいの割合を示しているかを表す指標です。
売上高販管費率=販管費/売上高×100
売上が増えて会社の規模が大きくなると通常販管費も増えていきますが、その増え方はコントロールされていなければなりません。たとえば、売上は10%しか伸びていないのに販管費が30%も伸びているようでは、利益を獲得することが難しくなります。数期間の売上高販管費率の推移を見て、販管費の伸びが適正かどうかを判断します。
キャッシュ・フロー計算書の財務分析の基本
損益計算書は1年間の損益を見るのに用います。これに対して、キャッシュ・フロー計算書とは、1年間の資金の動きを営業活動、投資活動、財務活動の3つの要因別に見るものです。
会社の事業活動は、掛取引があったり、固定資産の減価償却があったりするなど、損益と資金の動きが必ずしも一致することとはなりません。キャッシュ・フロー計算書は資金の動きに着目したものです。
キャッシュ・フロー計算書は営業活動、投資活動、財務活動の3つの要因に区分されており、それぞれ以下のようなことを表します。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー……本業の営業活動で稼いだ資金を示します。
- 投資活動によるキャッシュ・フロー……将来の利益獲得及び資金運用のために支出した資金や回収した資金を示します(固定資産の取得や売却、投資など)。
- 財務活動によるキャッシュ・フロー……借入金の調達や返済、資本の増資などで営業活動及び投資活動を維持するためにどの程度の資金が調達または返済されたかを示します。
キャッシュ・フロー計算書は、要因別にキャッシュの動きを分析します。
たとえば、営業活動がプラスで、投資活動・財務活動がマイナスのときは、本業で資金を稼ぎ、次の投資や借入金の返済をしているような状況が窺えます。これは現在、本業で資金を獲得できていて、それを将来の投資などに充てているので正常なビジネスといえます。
一方で、営業活動がマイナスで、投資活動・財務活動がプラスのときは、本業で資金を稼ぐことができておらず、借入金を新たに調達したり、資産を売却したりしているような状況が窺えます。
ただし、損益と資金の動きにはタイミングのズレがありますので、ある期がそうなっていたからといって、それだけで判断することはできません。数期間を比較して検討して、判断することとなります。
まとめ
財務分析の基本である決算書の読み方を紹介しました。ここで紹介したもの以外にも、財務分析の方法や財務分析のための指標はたくさんあります。その他の様々な方法も理解した上で、自社にあった財務分析の方法を作りましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。