有価証券報告書とは 提出義務・記載要領と見るべきポイント
上場企業など、一定の要件に該当する企業には、有価証券報告書の提出が義務付けられています。
有価証券報告書は企業の状況を詳細に記す書類であるため、競合を分析する際にも役立つといわれています。今回は、有価証券報告書の記載事項や閲覧方法、見るべきポイントなどについてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
有価証券報告書とは
「有価証券報告書」は「有報(ゆうほう)」とも呼ばれており、株式などを発行している上場企業が、自社の企業概況や経営状況をまとめた書類のことです。
企業の将来性や現在の状況を表すものであり、金融商品法に基づいて、市場の公正化と投資家の保護の目的があります。
有価証券報告書は、事業年度ごとに提出されることになっており、事業年度終了後3カ月以内に報告書を提出しなくてはなりません。この内容は一般の人でも見ることができ、金融庁のEDINET(エディネット)などで開示されています。
一定の要件に該当する場合、有価証券報告書の提出が免除されています。その場合、申請書を提出して承認を得なければなりません。
有価証券報告書の提出義務、記載事項について
次に、有価証券報告書の提出義務や記載事項について確認してみましょう。関東財務局が発表している「企業内容等開示(ディスクロージャー)制度の概要」を基に説明していきます。
提出義務
有価証券報告書は、金融商品取引法第24条によって、事業年度終了後3カ月以内に内閣総理大臣へ書類を提出することが義務となっています。たとえば、3月決算の企業であれば、6月末までに報告書を提出する必要があるということです。
報告書の提出義務者
次の有価証券発行者は、報告書の提出義務があります。
- 金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者
- 店頭登録されている有価証券の発行者
- 募集または売り出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券の発行者
- 所有者数が1,000人以上の株券(株券を受託有価証券とする有価証券信託受益証券および、株券にかかる権利を表示している預託証券を含む)または、優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く)、及び所有者数が500人以上のみなし有価証券(ただし、総出資金額が1億円未満のものを除く)の発行者
記載事項
有価証券報告書の記載事項には、主に次のような項目があります。
- 企業概況:経営指標、事業の内容、従業員の状況など
- 事業の状況:経営方針、経営環境、事業等のリスク、財務状況、キャッシュフロー分析など
- 設備の状況:設備投資の概要、状況、新設など
- 提出会社の状況:株式等の状況、配当政策、役員の状況など
- コーポレート・ガバナンスの状況等:コーポレート・ガバナンスの状況、監査報酬の内容など
- 経理の状況:連結財務諸表、比較情報、会計方針など
有価証券報告書の提出義務がある企業のなかで、上場企業は半期報告書の提出の義務もあります。2023年度以前は四半期報告制度でしたが、2024年4月以降から半期報告制度に改訂されています。
(参照)関東財務局「企業内容等開示(ディスクロージャー)制度の概要」
有価証券報告書の閲覧方法
有価証券報告書は、金融庁のEDINETサイトから閲覧できます。EDINETでは、有価証券報告書のほか、次の書類も縦覧することが可能です。
- 有価証券届出書・・・・・・受理した日から5年を経過するまで
- 発行登録書・・・・・・受理した日から発行登録が効力を失うまで
- 発行登録追補書類・・・・・・受理した日から発行登録が効力を失うまで
- 有価証券報告書・・・・・・受理した日から5年を経過するまで
- 有価証券報告書に係る確認書・・・・・・受理した日から5年を経過するまで
- 内部統制報告書・・・・・・受理した日から5年を経過するまで
- 半期報告書・・・・・・受理した日から3年を経過するまで
- 半期報告書に係る確認書・・・・・・受理した日から3年を経過するまで
- 臨時報告書・・・・・・受理した日から1年を経過するまで
- 親会社等状況報告書・・・・・・受理した日から5年を経過するまで
- 自己株券買付状況報告書・・・・・・受理した日から1年を経過するまで
- 公開買付届出書・・・・・・受理した日から公開買付期間末日の翌日以後5年を経過するまで
- 公開買付撤回届出書・・・・・・受理した日から公開買付期間末日の翌日以後5年を経過するまで
- 公開買付報告書・・・・・・受理した日から公開買付期間末日の翌日以後5年を経過するまで
- 意見表明報告書・・・・・・受理した日から公開買付期間末日の翌日以後5年を経過するまで
- 対質問回答報告書・・・・・・受理した日から公開買付期間末日の翌日以後5年を経過するまで
- 大量保有報告書・・・・・・受理した日から5年間まで
EDINETサイトでの縦覧時間は、午前9:00~12:00、午後13:00~17:15までの間になっていますので、利用の際は時間に注意しましょう。
(参考) 金融庁「EDINET」
有価証券報告書と類似している書類
有価証券報告書に類似していて間違えられやすい書類に、「決算短信」と「有価証券届出書」「有価証券通知書」があります。これらの書類は、有価証券報告書とは別の書類となりますので、よく注意しましょう。
決算短信
決算短信とは、企業の決算の内容をまとめたもので、決算後の45日後に発表されています。有価証券報告書は決算の3カ月後に提出されるため、できるだけ早く投資家に企業の内容を知らせる目的がありますが、決算内容は正式なものではなく推測の部分も含むため、参考資料のひとつとされています。
有価証券届出書
有価証券の募集または売り出しをするときに、金融商品取引法によって内閣総理大臣に提出することが義務付けされているものです。一定の要件に該当する場合に必要になります。
有価証券通知書
一定の要件に該当し、有価証券届出書の提出が免除されている場合、有価証券の募集または売り出しが開始される日の前日までに財務局に提出するものです。
有価証券報告書を見るポイント
有価証券報告書は、一般人でも無料で閲覧できる有意義な資料ですが、特に経理部門が注目すべきポイントは、どのような部分でしょうか。
詳細に記載される資料を見ると、企業の業績の流れを感じることができるでしょう。たとえば、「収益性」「安全性」「キャッシュフロー」の項目です。売上高や利益の推移、財務状況、キャッシュの流れを観察し、企業の成長の傾向を掴んでおきたいですね。
まとめ
今回は、有価証券報告書の概要や記載事項、閲覧方法などについてご紹介しました。企業の状況から経理内容まで詳細に記され、競合他社の分析などに活用できそうですね。反対に、自社が提出するときには、詳細に分析されることになります。
実際にいろいろな企業の有価証券報告書を閲覧してみてはいかがでしょうか。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。