売掛金回収の際の仕訳方法

売掛金回収の際の仕訳方法

売掛金回収の際の仕訳方法

売掛金が計上されるときは、通常、「(売掛金)/(売上高)」という仕訳を計上しますね。たとえば、1ヵ月後や2ヵ月後に計上した売掛金が問題なく回収されれば「(現金預金)/(売掛金)」という仕訳を入れて売掛金を取り崩すこととなります。

販売管理システムを導入している場合であれば、個々に売上や売掛金を計上する仕訳を入れるのではなく、売掛残高一覧表などの集計資料に基づいて1ヵ月などの単位で合計して売上や売掛金を計上することもあります。

個別に売掛金を計上したり、取崩をしたりするときは、補助科目を作っておくとよいでしょう。たとえば、売掛金の補助科目としてA社、B社、C社……というものを作ります。

売上計上時には

(売掛金/A社)/(売上高)
(売掛金/B社)/(売上高)
(売掛金/C社)/(売上高)

という仕訳を入力します。
そして、売掛金を回収したときには

(現金預金)/(売掛金/A社)
(現金預金)/(売掛金/B社)
(現金預金)/(売掛金/C社)

という仕訳を入力します。
そうしておけば、補助科目の残高を見ることによって、各社に対する売掛金の残高が分かるようになります。

売掛金を回収したとき、振込手数料を差し引かれていることがあります。たとえば、10万円の売掛金が計上されていて、手数料540円を差し引かれた99,460円の入金があった場合は次のように仕訳を入力します。

借方金額貸方金額
現金預金99,460円売掛金100,000円
支払手数料540円

売掛金を回収できなくなったときにはどうする

売掛金を計上していても、得意先が倒産したり、支払をしないままいなくなったりすると、売掛金を回収することができなくなります。そのようなときは貸倒処理を行います。

貸倒処理をするときの仕訳は次のようになります。

(貸倒損失)/(売掛金)

貸倒処理をすると損失が計上され、売掛金が取崩されます。
ただし、その売掛金が本当に回収できないのかどうか、という判断をするのは容易ではありませんし、その基準がないと公平性を保つことができません。そのため、会社の決算処理で貸倒損失を計上するのは任意ですが、税務上、その貸倒損失が損金として認められるためには制限があり、次のようなケースに限られます。

1. 金銭債権が切り捨てられた場合

会社更生法や民事再生法などの法的な整理手続き等で切り捨てられた金額は貸倒損失として処理することができます。法的な整理手続きによらない場合でも、
債権者集会の協議決定や行政機関・金融機関などのあっせんによる協議で合理的に切り捨てられた金額や、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、債務者に対して書面で明らかにした債務免除額については、貸倒処理することが認められます。

2. 金銭債権の全額が回収不能となった場合

債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合に、
その回収できない部分を貸倒損失として処理することができます。

3. 一定期間取引停止後弁済がない場合等

売掛債権の場合は、継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化し、その債務者との取引を停止した場合で、取引停止時点と最終の弁済時点のうち遅い時点から1年以上経過したときは、備忘価額を残したうえで、貸倒損失として処理することができます。
また、同一地域の債権者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合も同様に処理することができます。

これらの要件を満たしていない債権について会社の決算処理で貸倒損失を計上しているときは、税務上、損金として認められない部分がでてきますので、税務申告書において申告調整をすることが必要となります。

なお、上記のようなケースに至っていない場合でも、一定の場合には、そのときの債権の状況に応じて一定額までは貸倒引当金を計上することが容認されています。

後になって回収できなそうな場合の仕訳方法

一度、貸倒処理した売掛金が後に回収できそうとなったような場合は、

(現金預金)/(償却債権取立益)

という仕訳を計上します。
償却債権取立益は特別利益となります。過年度に償却した債権については償却した年度に経費として処理されています。それが返ってきたということですので、そのときは反対に利益を計上することとなります。

日常的に売掛金に目を光らせて

売掛金は計上したものが、支払期日に回収され、その消込がされるのが正常なサイクルですが、中には期日に回収されず、滞留債権となったり、貸倒が必要となったりすることもあります。そのような場合は、税務上の要件に注意しなければなりません。
また、売掛金について貸倒懸念が生じると、資金繰りに影響を与えたり、回収に手間を要したりすることとなります。そうならないように日常的に売掛金の滞留がないかどうかを確認し、期日どおりに支払われなかったときにはすぐにアクションを起こすことが重要です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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