企業の方向性を左右する投資キャッシュフローの活用方法

企業の方向性を左右する投資キャッシュフローの活用方法

キャッシュフロー計算書とは何か

以前「投資キャッシュフローを見るときのポイントとは?」という記事でキャッシュフロー計算書について簡単に説明しました。キャッシュフロー計算書とは会社の1年間のキャッシュ(現金や預金など)の変動を表す財務諸表のことです。
さらに資金の入出金を、営業活動、投資活動、財務活動の3つの目的別に分けて表示する特徴がありました。

今回はさらに具体的な内容として、投資キャッシュフローの活用方法についてみていきます。

 

投資キャッシュフローでいう投資とは何か

投資キャッシュフローは会社の投資活動に関する資金の流れをあらわす項目でした。
では、ここでいう「投資」とはどのようなものでしょうか。

キャッシュフロー計算書の投資キャッシュフローでいう「投資」とは、主に会社の営業活動に役立つような固定資産の設備投資を指しました。
たとえば工場などの建物や、建物附属設備、機械装置、車両、工具器具備品などの減価償却資産である有形固定資産や、土地などがそれにあたります。
固定資産以外では、株式投資や、定期預金などが該当しました。

一口に投資活動といっても、その意味合いは次のように異なります。

  1. 従来から業務に使用している有形固定資産の買替等
  2. 新規業務に参入するための設備投資
  3. 余剰資金での株式などへの投資や定期預金への預け入れ

上記1.から3.の投資活動はすべて、投資キャッシュフローではマイナスで表示されます。投資キャッシュフローは意思決定の結果にすぎず、むしろ会社の事業計画や、会社のライフサイクル、営業キャッシュフローや財務キャッシュフローなどを考え合わせ、投資活動を行うかどうかを検討することが重要です。

 

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投資キャッシュフローの活用方法

投資キャッシュフローがマイナスのとき

マイナスであれば投資活動を行っている意味になり、たとえば固定資産を購入する、株式を購入する、定期預金をする、といった活動を示します。

投資キャッシュフローがマイナスということは、投資活動を行っているといえます。
その際、上記1.から3.のどの投資活動をしているのか、その投資活動は会社の事業計画と合致した投資活動なのか、さらに企業のライフサイクルとの関係も考える必要があります。
会社設立当初は大幅な設備投資が必要となり、投資キャッシュフローはマイナスの傾向が強くなります。

本来有形固定資産の設備投資は営業キャッシュフローを増加させるために投資するものです。想定していたよりも営業キャッシュフローが増加しないのであれば、過剰設備投資や新規事業展開が上手く行っていない可能性もあります。

定期預金や株式投資も、本業の設備投資との兼ね合いをみる必要があります。
既存業務で使用している設備が劣化しているにもかかわらず、買替せずに定期預金にしていたり、株式投資していたりするようでは本末転倒かもしれません。

投資キャッシュフローがプラスのとき

投資キャッシュフローがプラスであれば過去に投資活動を行ったものを処分したという意味になります。たとえば固定資産を売却する、株式を売却する、定期預金を解約する、といった活動を示します。

投資キャッシュフローがプラスの場合、固定資産の売却や株式の売却、定期預金の解約など、過去に投資したものを売却等して換金化していることになります。

ここでは換金化したお金がどこに使われているのかがポイントになります。
たとえば新たな投資活動にまわっていたり、財務活動の借入返済に充てられているのかも知れません。もしくは営業キャッシュフローがマイナスで、その補填にあてられているのかもしれません。有休資産や不良資産を売却して会社の体質改善を図っているのかもしれません。

 

まとめ

投資キャッシュフローはその会社が将来どのような方向性に向かうのか、会社の事業計画と密接に関わります。

たとえば、営業キャッシュフローや財務キャッシュフローとの兼ね合いで、フリーキャッシュフローが現時点で潤沢でないのであれば、自社内での設備投資ではなく、リースにするという考え方もできると思います。

また、ある程度の規模の設備投資であれば、数年に1度とか、数十年に1度という可能性もあります。設備投資するタイミングで投資に回すことのできる営業キャッシュフローのフリーキャッシュフローが潤沢にあるかどうかもあわせてチェックすることが必須です。

さらに既存業務を発展させるのか、新規業務を展開して多角経営していくのか、いずれ行う設備投資資金を貯めているのか、企業のライフサイクルとの関係も考慮する必要があります。

適切な投資活動を行わないと、企業の成長もありません。
投資キャッシュフローがマイナスであるとか、プラスであることに一喜一憂するのではなく、長期的な視野と、展望を持つ必要があります。
適切な時期に、適切な投資活動を行っているか、キャッシュフロー計算書の投資キャッシュフローを上手く活用してみてください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 添田 裕美

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添田裕美税理士事務所 税理士 平成13年税理士登録。税理士事務所において延べ中小企業100社以上に関与。その後独立し添田裕美税理士事務所を開設。 経営計画書作成の支援や決算分析、節税、相続対策など、中小企業経営者の身近な相談役を目指す。

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