慶弔見舞金とは 相場や種類、税務上の取り扱いについて紹介

慶弔見舞金とは 相場や種類、税務上の取り扱いについて紹介

福利厚生の一環として会社が独自に設けることができる「慶弔見舞金制度」があります。この制度は法的に義務化されてはいませんが、多くの会社が設けています。今回は、慶弔見舞金の目的や相場などについてご紹介していきます。

慶弔見舞金とは何か

慶弔見舞金とは、会社が雇用する社員の離職防止目的や、社員のモチベーションアップ目的のために、会社が独自に設けることができる福利厚生制度の1つです。

主に冠婚葬祭に際して会社から従業員に対して支払われることが多く、たとえば社員やその家族にお祝い事があったときや、ご不幸があったときなどに、会社から支払われる金品が慶弔見舞金です。

あくまでも雇用における義務的な制度ではありませんので、金額や家族の範囲などは会社が自由に取り決めることができます。しかし、支払額の差などから社員同士のトラブルにも発展しかねませんので、就業規則などの社内規定の1つとして定めておく必要があるでしょう。

以下、慶弔見舞金にはどのような種類があるのか、また慶弔見舞金の課税関係はどのようになっているのかについて説明していきます。

慶弔見舞金の種類

慶弔見舞金にはどのような種類があるかというと、会社によって異なりますが、一般的には、結婚祝い金、出産祝い金、傷病見舞金、災害見舞金、弔慰金、入学祝い金、永年勤続祝い金、定年退職祝い金などがあります。会社独自という趣旨もあり、未成年の社員が成人を迎えたときの成人祝い金や、ペットを亡くした社員へのお見舞い金など、個性的な慶弔見舞金を設けている会社も多いようです。

慶弔見舞金の課税関係について

慶弔見舞金は賃金と同様に社員に支払われるものであるため、所得税などの課税対象となり得るかは気になるポイントです。結論として、慶弔見舞金は課税対象とはなりませんが、その理由などを詳しく見ていきましょう。

1.社会通念上相当と認められる場合は非課税

お祝い金関係については、所得税法基本通達第28-5に次のとおり規定されています。

使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は給与等とする。ただし、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものは、課税しなくて差し支えない。

引用:国税庁 法第28条《給与所得》関係 28-5

本来お祝い金は給与等に該当するので源泉徴収の対象となり、会社は毎月のお給料と同様に、お祝い金に対しても源泉徴収するのが原則です。

ですが、ただし書きにあるように、社会通念上相当と認められる場合には、給与課税されないことになります。そのことから、消費税の課税対象にもならず、社会保険や労働保険もかからないものとされています。

2.弔慰金関係の課税について

慶弔見舞金の1つとして、社員やその家族が亡くなったときに支給している会社も多い、弔慰金ですが、こちらも所得税法基本通達第9-23にある通り、社会通念上相当と認められるものについては、課税されません。

個人が支払を受ける葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、課税しないものとされています

引用:国税庁 13 源泉所得税の取扱い災害見舞金の支給2

慶弔見舞金の相場

給与として源泉徴収されないためには、お祝い金も、弔慰金もその支払われる金額が社会通念上相当と認められるかどうかがポイントとなります。
社会通念上相当と認められるかどうか、とは相場と置き換えても良いと思います。

その場合、果たして相場はいくらなのかという疑問が出てきます。

インターネットで「お祝い金 相場」と検索すると、いろいろなお祝い金や弔慰金の相場を表示しているサイトがあると思います。これらの相場は絶対値ではなく、あくまで目安となりますが平均的な相場としては以下となります。

種類相場
結婚祝い金10,000~30,000円
出産祝い金10,000~30,000円
死亡慶弔金10,000~100,000円
災害見舞金10,000~100,000円

そもそも慶弔見舞金制度自体が絶対に支払をしなければいけないというものではなく、会社で独自に採用する、しないを決めてよいものであり、日本ではいろいろな事情から慣習的に採用している会社が多いという制度です。

このように慶弔規定は会社独自に設定できるので、いくらでなければいけないということではなく、慶弔規定上は好きな金額で、それこそ多額の金額で設定することも可能なのです。

ただし給与課税されない範囲は、先ほどの所得税の基本通達にあるように、社会通念上相当とされる部分になります。
よって相場から大幅に逸脱した慶弔規定に基づき慶弔見舞金の支払いをしている場合は、原則とおり給与の支給とみなされ、源泉徴収の対象となってきますのでご注意ください。

また、祝金や見舞金などは一般的に対価として支払われるものでないため消費税法上、課税の対象となりません。消費税の本則課税を採用している場合には課税仕入としないようご注意ください。

まとめ

慶弔見舞金は、所得税がかからない、福利厚生費として損金に算入できるというメリットがあるのに対し、慶弔見舞金に該当するかどうか確認するのに手間がかかる、慶弔見舞金に該当する人、しない人がいるため不公平感があるなどのデメリットもあります。

慶弔見舞金は労働の対価としての賃金とは異なり、法的には会社に支払い義務はないので、
当然慶弔見舞金制度がない会社もあります。

慶弔見舞金の支払いを予定している場合には、会社内で慶弔規定をあらかじめ作成しておく必要があります。また慶弔見舞金の支払いは、作成した慶弔規定に沿って行うことが必要です。

お祝い金の中でもその性質上、永年勤続祝い金や定年退職祝い金は、ある程度多額になることが多いです。給与として源泉課税されないためにも、念のため慶弔規定を見直してみてください。

このように慶弔見舞金を支払うメリット、デメリットがあります。
慶弔見舞金の支払いをするメリット、デメリットを比較した上で、会社で慶弔見舞金制度を採用するかどうかを検討してみてください。そして慶弔見舞金を支払う場合には、その支払基準となる慶弔規定をしっかり整備し、その規定に従った支払いをするようにご注意ください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 添田 裕美

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添田裕美税理士事務所 税理士 平成13年税理士登録。税理士事務所において延べ中小企業100社以上に関与。その後独立し添田裕美税理士事務所を開設。 経営計画書作成の支援や決算分析、節税、相続対策など、中小企業経営者の身近な相談役を目指す。

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