定期券の払い戻しと経理処理を解説!テレワーク化で実費精算が増加?
社員が退職したときや会社がテレワークを導入したときなどに、社員の通勤用の定期券を払い戻す機会があります。テレワークを機に、定期券を解約して払い戻し、実費精算に切り替える企業も増えています。
いざ払い戻しの手続きを進めるとき、「そもそも定期券はいつでも払い戻しができるのか」「どのように経理処理をするのか」など、重要な点を確認しておかなければ手続きをスムーズに進められなくなってしまうかもしれません。そこで今回は、通勤用の定期券を払い戻す際の手続きや仕訳方法、さらに注意点など解説していきます。煩雑になりやすい通勤費の経理処理について、しっかりと理解しておきましょう。
定期券の払い戻しが必要なときとは?
はじめに、どのようなときに定期券の払い戻す機会があるか整理しておきましょう。
- 社員が退職
- 社員が転勤
- 社員が通勤経路変更
- 定期券の支給停止
- テレワークなどで定期券が不要
上記で挙げたようなとき、定期券を払い戻す可能性があります。まず、社員が退職、転勤、通勤経路の変更などのときは、利用していた定期券が不要になりますので、払い戻しの手続きをします。
また、会社の都合などで、定期券の支給の停止やテレワーク出勤の導入で実質的な通勤が不要の場合では、利用中の定期券を払い戻す可能性があります。テレワークに伴って定期券を解約を指示する企業では、社員が時々出社する際には、その都度実費精算を行うことになります。
定期券の払い戻し可能な期間
定期券の払い戻しは、いつ申し出ても可能というわけではありません。各公共交通機関の規定にもよりますが、JR東日本では、原則として定期券の有効期間が1カ月以上残っている場合にのみ、払い戻しが可能とされています。そのため、退職や転勤、通勤経路の変更等の事由があっても、払い戻しができないこともあります。ただし、JR東日本では新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発出された、2021年1月8日以降から定期券を使用していない場合、条件付きでの払い戻しが可能になっています。このようなケースもありますので、払い戻しの際は対象の交通機関に確認されることをおすすめします。
参考:JR東日本 きっぷの払いもどし
参考:JR東日本 新型コロナウイルス発生に伴う定期乗車券についてのご案内
テレワークでの定期券の取り扱い、実費精算への切り替え
テレワークで在宅勤務といっても、一定のサイクルで会社に出勤する場合もありますので、在宅日数とのバランスで定期券の支給を停止するか検討することになるでしょう。一般的に通勤用の定期券は6カ月分で購入し、その分の割引額が適用されていますので、割引された金額と出勤する日数分の通勤費の実費と比較して判断します。
定期券の支給を停止する場合には、他の近隣交通費のように、発生した分の通勤費を実費精算することになります。
定期券の払い戻しはルールづくりが大切
通勤のための定期券は、通勤手当に該当するものですので、支給方法や払い戻しなどについては、就業規則に定められていることが望ましいでしょう。社員が住居を変えるなどして通勤経路が変わることは、日常的に発生するものです。経理・総務部として統一した手続きが進められるように、きちんとルールづくりをして、業務フローとしてチェックできるようにすることが大切です。
通勤経路の変更の申請と期限
通勤経路の変更があり、定期券の解約や払い戻しの必要がある場合、速やかに申請することを徹底することが大切です。通勤経路の変更ということは、住居が変わるなど社員の住所変更も必要になりますが、雇用保険や健康保険の手続きを優先し、通勤経路の変更をうっかり忘れてしまうことも少なくありません。住所変更とともに通勤経路の変更の有無をいつまでに申請するか期限を決める、また、遅れた場合はペナルティを科すなどルールを決めましょう。
定期券の払い戻し精算
定期券の払い戻しは、各交通機関によって有効期間の取り扱いの違いや、日割りではなく月割り精算などさまざまなケースがあります。すべてのケースを担当者が把握しておくことは難しいかもしれませんので、精算までのチェック項目などを作成しておくとスムーズな手続きにつながります。
また、定期券の払い戻し後に、数日間の実費支給の交通費があるかどうかも、精算の際には確認が必要です。テレワークのための払い戻しの場合なら、会社出勤が何日以下なら実費支給になるのかも決めておきましょう。
手数料負担について
定期券の払い戻しは、一般的に手数料がかかります。千円以内の手数料を適用している交通機関が多いようですが、手数料は会社が負担するのか社員個人が負担するのか明確にすることが大切です。
ルールは周知させる
せっかくルールづくりをしても、会社内で周知されていなければ意味を成しません。個々で異なる処理にならないように、ルールをしっかりと共有し厳守することが重要なポイントです。
定期券の払い戻しの仕訳方法
ここからは、定期券の払い戻しがあたっときの仕訳方法などについて解説しています。
<6カ月定期券50,000円が払い戻し金20,000円だったとき>
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
現金 | 20,000 | 旅費交通費(通勤費) | 20,000 |
貸方の勘定は、定期券購入を旅費交通費で処理しているか、通勤費で処理しているかで異なります。なお、貸方勘定は雑収入で処理することも可能ですが、通勤費としてきちんと区分したい場合は、雑収入以外での処理がよいでしょう。
定期券の払い戻し時の注意点
定期券の払い戻しは、経理部署の誰が行っても同じように処理できることが大切です。また、通勤費として支給している場合には給与関係のチェックも必要になります。
払い戻しの精算方法を明確に
上述でも触れましたが、基本的に定期券の有効期間が1カ月以上なければ、払い戻しはできない可能性があります。また、1カ月以上残っているとしても、日割りではなく月割りで換算されるケースがあるため、どのような精算方法で処理したのか、個別に記録に残し、明確にしておくことが大切になるでしょう。
通勤費の増減後は社会保険の標準報酬をチェック
給与の中で、通勤費などの固定報酬に変動がある場合、社会保険の標準報酬月額を見直すことがあります。給与が変動した月から3カ月間に支払われた給与の平均月額と、それ以前の月額とに2等級以上の差がでる場合などでは、随時改定の対象となりますので、忘れずにチェックする必要があります。
源泉徴収予定額の見直しをチェック
給与からは、毎月その年の予定源泉徴収額を差し引き、年末調整で実際に支払うべき所得税の計算をして精算します。年度内で通勤費の変動により大幅に給与が変動するときは、源泉徴収予定額の見直しが必要かチェックしましょう。
通勤費を実費精算にするなら経費精算システムの活用がオススメ
定期券を解約して払い戻しを行う場合、それ以降に発生する通勤費は都度、実費精算を行うことになります。テレワークなどによって、不定期かつ従業員によってもバラバラな費用の発生することになりますが、誰が何回出社していくら発生しているのかを正しく把握して管理することは容易ではありません。
こういった状況になっている企業は少なくないのではないでしょうか。
この課題は経費精算システムを活用することで解決できます。
たとえば、経費精算システム「楽楽精算」では、交通系ICカードの利用履歴を読み取って、利用額をそのまま精算する機能があります。この機能を利用すれば、交通系ICカードを利用した日、出社している日の交通費を申請させることができ、出社していないのに申請しようとする不正を防ぐことができます。手入力での申請もできますが、ICカード履歴を利用したか、手入力かを見分けることもできるため、不正防止、正確な管理ができるようになります。
交通費の発生が不定期になれば管理工数が増えますが、システムを利用することで管理は楽になります。また、システムなら在宅でも経費申請が可能になりますので、テレワークを機にシステム導入を検討してはいかがでしょうか。
まとめ
テレワークの導入など、個人の働き方もさまざまな形になっています。それぞれのケースで定期券を発行するか、払い戻すか、または実費精算するかなど、経理部としても多様な対応が求められ、普段でも煩雑になりやすい交通費の精算がさらに複雑化する可能性があります。
特に、定期券の払い戻しでは、交通費の精算を明確にしておくことに加えて、社会保険料の変動などにも影響があるため、一つひとつチェックしていく必要があります。見落としの発生を避けるためにも、社内ルールの作成と周知、また一連の流れをフローチェックできる仕組みをしっかりとつくりましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。