消費税の中間納付・中間申告 押さえておきたい対象者と申請方法
消費税の中間納付をご存知でしょうか。前年の納税額に応じて1年間の内に複数回に分けて消費税を納税します。今回は消費税の中間納付について目的や中間納付の計算方法や注意点を紹介します。
消費税の中間申告とは
消費税の中間申告とは前期の消費税納付額に従い課税期間の概算納税額を算出し分割しての申告・納税するものです。前期の消費税額によって中間申告の回数と納税額の分割する割合が異なります。そのため、中間申告で税金を納めたときは、確定申告の際、中間で納めた分の税額が控除されます。また、控除しきれなかった場合には還付されます。
中間申告の目的
消費税の中間申告は、国の財政収入の平準化を目的に行われています。法人は原則、年に一度の決算申告で消費税や法人税等の納付を行いますが、それでは決算の多い12月や3月に納付が固まってしまいます(正確には決算月の2か月後に納付が発生します)。
納付時期が偏ると国の歳入時期が固まることになり、財政資金の有効かつスムーズな遂行ができません。なお、平成30年度の消費税歳入は年間17兆円ともの凄い金額でした。そのため、消費税の中間申告、中間納付を要請して適正な財政確保を推進しています。
前年度の納税額により中間申告が必要となってくる
中間申告には前期に収めた税額によって回数と金額の割合が異なります。どのような違いがあるのか確認をしましょう。
軽減税率により税率が変更
2019年10月より消費税率及び、地方消費税率が引き上げられました。変更前、変更後の消費税の取り扱いを見ておきましょう。
摘要開始日 | 令和元年9月30日まで | 令和元年10月1日から | |
税率区分 | 標準税率 | 軽減税率 | |
消費税率 | 6.30% | 7.80% | 6.24% |
地方消費税率 | 1.70% | 2.20% | 1.76% |
合計 | 8.00% | 10.00% | 8.00% |
なお、軽減税率は飲料食品や新聞を売買する際に適用されます。ただし、外食やケータリングは対象外になるなど例外項目が多いので、国税局のホームページなどを見ながら取引に適用される税率を都度確認しましょう。
直前の課税期間の確定消費税額によって回数が異なる
直前の課税期間の確定消費税額が48万円を超える場合、消費税の中間申告が必要になります。納付税額に応じて中間申告回数が異なるため、順番に見ていきましょう。
中間申告が年1回
直前の課税期間の消費税額が48万円超~400万円以下の場合、中間申告は年1回必要です。申告期限は、中間申告の対象となる課税期間の末日の翌月から2か月以内になります。
中間申告が年3回
直前の課税期間の消費税額が400万円超~4,800万円以下の場合、中間申告が年3回必要です。各申告期限は、中間申告の対象となる課税期間の末日の翌月から2か月以内になります。
中間申告が年11回
直前の課税期間の消費税額が4,800万円超の場合、中間申告が年11回必要になります。申告期限は、その課税期間開始後の一カ月分はその課税期間開始日から2カ月を経過した日から2カ月以内、以後の10カ月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2カ月以内です。
表にまとめると、下記のようになります。
直前の課税期間の確定消費税額 | 48万円以下 | 48万円超から400万円以下 | 400万円超から4,800万円以下 | 4,800万円超 |
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中間申告の回数 | 原則、中間申告不要 | 年1回 | 年3回 | 年11回 |
中間申告提出・納付期限 | ただし、任意の中間申告制度あり | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2月以内 | 課税期間開始後の1カ月月分:その課税期間開始日から2月を経過した日から2カ月以内 以後の10カ月分:中間申告対象期間の末日の翌日から2カ月以内 |
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申告回数 | 確定申告1回 | 確定申告1回+中間申告1回 | 確定申告1回+中間申告3回 | 確定申告1回+中間申告11回 |
中間申告の算出方法は2つ
中間申告の方法は予定申告方式と仮決算方式の2通りあります。2つの方式は自由に選択できます。それぞれどのような特徴があるのか見ていきましょう。
予定申告方式
予定申告方式は、直前の課税期間の消費税額を申告回数に応じて分割し納税額を計算する方法です。予定申告は納税することで中間申告したとみなされることから、申告・納税が非常に簡単です。通常、税務署から消費税の納付書が中間申告のタイミングで送付されてきますので、その納付書に記載の金額を金融機関等で納付すれば一連の処理が完了します。
仮決算方式
一方、仮決算方式は期首から一定期間を事業年度とみなして仮決算を行い、税金計算を行う方法です。予定申告方式と比較して実態の決算に基づいて税金計算を行うため、適正な納税額を計算できるメリットがあります(予定申告方式でも仮決算方式でも決算時に税金計算をし直すため、1年間トータルの納税額はどちらの方式を取っても同じ額)。
仮決算方式の注意点
仮決算方式は先述のとおり、仮決算を行ったうえで消費税額の計算を行います。そのため、本決算時に準ずる決算処理が必要となり、経理担当者や税理士の負担が増加します。よって、費用対効果を考えて予定申告方式を用いるか、仮決算方式を用いるか判断しましょう。また、中間申告時に計算した消費税額がマイナス(還付)となった場合でも、中間申告の時点では還付されません。
中間申告は電子申請できる?
中間申告であっても、事業年度末の確定申告と同様にe-tax・eLTAXを利用して電子申告をすることができます。また年度と同様にダイレクト納付を行うこともできます。
中間申告の勘定科目、仕訳方法
税抜経理を行っていて、中間申告で消費税等を納付したときは「仮払金」として処理するのが一般的です。年度決算で消費税額が確定したときに、仮払金を取り崩し、年税額との差額が未収入金(未収消費税等)もしくは未払消費税等となります。
税込経理を行っている場合は、中間申告で納付した消費税等は「租税公課」として処理します。
消費税の中間申告制度とは
消費税には、任意の中間申告制度というものが設けられており、この制度を利用すると、年1回、自主的に中間申告をすることができます。個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度の消費税の年税額が48万円以下の者についても、この任意の中間申告制度を利用することにより、中間申告書の提出が可能とあります。なお、この任意の中間申告制度を利用するためには、任意に中間申告書を提出する旨の届出書を事前に納税地の所轄税務署長に提出しておく必要があります。
中間申告の義務がない事業者の場合は年一回、確定申告時に年税額をまとめて納付することとなります。しかし、これでは一時の支出額が大きくなります。この任意の中間申告制度を利用して中間時点で一度納税しておくことにより、適切な資金管理を行うことができるようにもなります。
(参照元URL:国税庁HP 任意の中間申告制度)
中間申告や納付で注意するべきポイント
中間申告をしなかった場合
中間申告をしなかった場合、予定申告方式での中間申告がされたものとみなされ、直前の課税期間の消費税額を基礎として計算された税額が納税額として確定します。
納付が遅れた場合
納付が遅れた場合は、納付期限から納付日までの延滞税が発生します。延滞税は国税・地方税の合算額に対してかかり、納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでは原則として年7.3%、2ヶ月を超えると原則年14.6%の利率がかかってきます。
まとめ
消費税についても、中間申告の仕組みをしっかりと理解し、中間申告での納税も資金計画で考えておく必要があるでしょう。消費税が一度に納税となると資金繰りが大変、というようなときは任意の中間申告制度の活用も検討されてはいかがでしょうか。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。