出納帳の目的や書き方とは 経理が知っておきたい効率化の方法を解説

出納帳の目的や書き方とは 経理が知っておきたい効率化の方法を解説

出納帳とはお金の出入りを記録する帳簿を指します。出納帳には、「預金出納帳」と「現金出納帳」の2種類があります。「預金出納帳」は銀行口座の入金や出金を記録する帳簿を指し、「現金出納帳」とは現金の出入りを管理する帳簿です。現金管理は、経理の基本的な業務の一つで、現金という現物を取り扱い、勘定科目などを記入することにより経理処理につなげます。また、基本的な業務でありながら、現金過不足の発生など面倒な点も多い業務。この記事では「現金出納帳」による現金管理について、その目的や書き方など基本事項をとりまとめました。

出納帳とは

出納帳には、前述の通り銀行口座のお金の出入りを記録する預金出納帳と現金の出入りを記録する現金出納帳があります。銀行預金や現金の動きに勘定科目を付与し経理処理を行うことは、最も基本的な経理業務の一つです。出納帳に日々の現預金の流れをきちんと記録・集計することにより、銀行残高と手元の現金残高を一致させることができるようになります。

現金管理と小口現金管理の違い

現金管理は、経理の実務上二つに分けることができます。一つは飲食業やサービス業など日々の取引が現金で行われ、現金収入を集計・把握することが目的の現金管理。二つ目は、従業員の経費精算や現金による小口の支払いなど主に支払いを管理する現金管理で、一般的に小口現金管理と呼ばれます。

現金出納帳と小口現金出納帳の違いについてはこちらの記事でも解説をしていますので、併せてご覧ください。

経理プラス:現金出納帳と小口現金出納帳の基本 2つの違いと効率化の方法

現金管理の目的

現金管理の目的は次のとおりです。

  • 現金という会社の資産をきちんと把握する
  • 不正やミスを防止する
  • 現金売上や経費などをきちんと記帳することにより適切な経理処理を行う

現金出納帳と現金有高帳の違い

現金出納帳に記入された現金残高は、あくまでも帳簿上の残高です。現金出納帳を締めた後は、その日のうちに実際の現金とつき合わせることが大切です。
一方、現金有高帳は、実際の現金を金種別にカウントして記録しておく帳簿です。日々の締め処理として、最終的には現金出納帳と現金有高帳を照合確認し一致させます。

現金過不足が生じたら

現金過不足とは、現金出納帳上の現金と現金有高調の現金が合っていないこと。現金が発生する要因は、記帳漏れやお釣りの金額ミスなどさまざまです。そのため、レジデータや領収書など証憑を再確認して過不足の要因を突き止め、現金出納帳を修正します。
どうしても過不足を解決できないときは現金有高帳の残高に合わせ、過不足分は「現金過不足」の勘定科目を使用して記帳します。

預金出納帳とは

預金出納帳とは、銀行口座のお金の出入りを記録する帳簿です。ネットバンク化が進む前までは通帳の記帳をするため銀行に出向き、通帳から預金出納帳を作成することが一般的な方法でした。
現在はネットバンク化が進み、入出金の動きはデータ化されています。そのデータをダウンロードし、エクセルなどで預金出納帳を作成することができるようになりました。さらに、API連携の方法を使って預金データを会計システムに取り込み勘定科目を付与することで、自動的に預金出納帳が作成できるようになっています。

現金出納帳の記載項目

きちんとした現金管理を行うために、標準的な記載項目と記載上のポイントは次のとおりです。

記載項目記載上のポイント
日付実際に現金が動いた日付。従業員精算の場合、領収書に精算した日付を追記する。
金額収入金額と支出金額の欄を分ける。
複数の勘定科目が発生する場合の記載方法を考慮する。
消費税区分複数税率に対応できるように区分を設ける。
摘要取引の内容を経理処理ができるレベルで記載する。
取引先取引事業者と従業員を分けるのが望ましい。
勘定科目勘定科目コードを設定するとシステム化ができる。
残高残高+入金金額―支払金額で計算する。

また、下記ページでダウンロードできるテンプレートがありますのでご活用ください。

経理プラス:ビジネス書式テンプレート ダウンロード 現金出納帳
経理プラス:ビジネス書式テンプレート ダウンロード 小口現金出納帳

現金出納帳の効率化

現金出納帳は経理業務において基本的な帳簿であり、記載方法や集計・計算など効率化を図る必要があります。現金出納帳の作成が最終的な目的ではなく、実際の現金との照合、会計システムへの入力など、現金管理全体の適正化・効率化を図りましょう。

手書き現金出納帳の弊害

手書き現金出納帳は、帳簿の様式を工夫したり、マニュアル化したりすることで一定の効率化は図れます。しかし、作業自体は人の手作業であり、下記のような作業が発生することがある点に注意してください。

  • 消せるペンを使うなど修正処理が面倒
  • 記載漏れがあった場合、入出金伝票などの並び順と併せるのが面倒
  • 残高計算や入出金総額の計算が面倒
  • 会計システムに入力する場合、二度手間になる

エクセルの活用

手書きの現金出納帳を改善するために手っ取り早い方法は、エクセルを活用することです。修正・追加も簡単ですし、集計・計算が簡単になります。また、勘定科目などコード化すると、会計システムへのインポートデータが作成可能になり、会計システムへの二度打ちなどの工数削減が期待できます。

POSレジ、経費精算システムの活用

最近では、飲食業などの売上管理や経費精算に関連するシステムが数多く提供されています。現金出納帳の作成など現金管理を効率化するとともに、会計システムへの自動連携など多彩な機能を活用することが可能です。

POSレジ

消費税の複数税率の導入とその支援策としての補助金などにより、飲食業を中心に現金商売を行う事業者がPOSレジを導入することが加速しました。POSレジとは、商品を販売した時点で販売に関する情報(たとえば現金売上、カード売上など)を収集し記録する機能を持ったレジです。
現金管理の視点からすればレジの使用ログが残るので、いつ誰が作業を行ったかが明確になり、不正やミスの防止にもつながります。また、会計処理に必要な情報だけでなく、時間や人数、数量、商品名など色々な情報も収集。そのため、販売情報を分析することで売れ筋商品の把握、商品構成などマーケティングにも活用できます。

経費精算システム

経費精算システムは会社で発生した旅費や経費、立替金、小口現金などを精算するシステムのことです。たとえば出張旅費では、出張承認、前払い、出張報告、前払い精算などさまざまな手続きが必要です。小口現金管理では、前払い金の支払いや精算金の支払いなど現金の流れだけを対象にしています。
しかし不正防止の観点などから、一連の流れで承認申請、決裁の仕組みを取り入れている企業が少なくありません。経費精算システムを導入すれば、申請決済のリアルタイム化やペーパレス化など経費精算にかかる業務の効率化が期待できるでしょう。もちろん会計システムと連携することにより、小口現金管理の効率化・適正化が実現できます。

また、こちらの記事では小口現金を廃止して効率化する方法を解説しています。併せてご覧ください。
経理プラス:小口現金を廃止しよう!6つのルールと効率的な立替精算の方法

まとめ

経理は現金の管理からはじまり現金の管理で終わるといわれるほど、現金管理は経理の基本的事項です。現金出納帳を使用した現金管理は、日々発生する経理の基本的な業務となります。一方で現金出納帳の作成は手間暇がかかり、また、現金が介在するため不正の発生しやすい業務です。そのため、経理だけではなく関連する業務全体のシステム化を進め、現金の流れを可視化する仕組みを構築することが重要です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 中小企業診断士 中津 隆

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中小企業診断士、行政書士、税理士(科目合格)資格などを保有。企業の財務会計部での勤務や経営コンサルタントとしての経験を活かし、現在は独立して企業の財務会計業務を支援。補助金申請や銀行融資などの経営支援、記帳代行などを行いながら執筆活動にも取り組む。