ソフトウェアの会計処理、税務上注意が必要なこと
会計や税務でソフトウェアになるもの
ソフトウェア(コンピュータ・ソフトウェア)とは、次のようなもののことをいいます。
- コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム
- システム仕様書、フローチャート等の関連文書
参照:日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」第6項
たとえば業務で使用するソフトを購入したときはもちろん、自社でソフトウェアを開発したようなときも会計や税務上のソフトウェアとなり、ソフトウェアの会計処理をすることが求められます。
ソフトウェアを購入したときの会計処理
取得価額が10万円以上のソフトウェアを購入したときは、原則として、固定資産に計上します。10万円未満のものについては、他の有形固定資産などと同様に少額減価償却資産として取得時に全額費用処理することができます。また、中小企業者等の少額減価償却資産の特例も適用することができますので、適用対象法人は、取得価額が30万円未満のソフトウェアであれば、一定の要件のもとに、全額費用処理することができます。
ソフトウェアを固定資産に計上するとき、通常は、無形固定資産の「ソフトウェア」勘定に計上します。そして、減価償却を行います。ソフトウェアの減価償却の方法は、定額法と決められていて、通常は5年の耐用年数で減価償却をしていくことになります。
固定資産計上するソフトウェアの取得価額には、購入の代価に加えて購入に要した費用や事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。たとえば、ソフトウェアの代金の他にインストールや初期設定などの導入費用がかかったときは、その導入費用についてもソフトウェアの取得価額となり減価償却の対象となります。
自社でソフトウェアを開発したときの会計処理
外部から購入する以外にソフトウェアを取得する方法として、ソフトウェアの自社開発が考えられます。
ソフトウェアの自社開発を行ったときは、開発にかかった費用を集計して、ソフトウェアに計上し、外部から購入したときと同じように減価償却をしなければなりません。開発にかかった費用を集計することがポイントです。
これには、外部に支払った外注費その他の経費の他に、社内でかかった労務費も集計しなければなりません。労務費を集計するためには、自社利用のソフトウェア開発のプロジェクトコードのようなものを用意し、開発にかかわった人がかかわった時間をプロジェクトコードに紐づけします。そして、全体の労務費を、開発にかかわった時間とその他の時間に按分し、開発にかかわった時間がソフトウェアの開発費用となります。
このように、自社でソフトウェアを開発するときは、開発費用の集計が必要で、これは後から遡ってすることは困難です。そのため、開発費用を集計する体制を事前に整えておくことが必要です。
研究開発目的でソフトウェアの開発をしたときの会計処理
外部から購入したソフトウェアや自社開発のソフトウェアは減価償却が必要ですが、研究開発目的でソフトウェアの開発をしたときに要した開発費用は研究開発費となり、発生時の費用として処理することとなります。
ソフトウェアを除却したときの会計処理
器具備品を除却したときと同じようにソフトウェアについても除却するときは、ソフトウェアを取崩し、その時点の残存簿価が固定資産除却損(特別損失)となります。しかし、ソフトウェアの場合は、物理的な除却をしていない場合でも、今後事業で一切用いないことが明らかなときは、除却損を計上することができることとされています。
たとえば、そのソフトウェアを使った業務が廃止され、利用しなくなったときや、ハードウェアやオペレーティングシステムの更新に伴って利用していたソフトウェアが利用できなくなったときなどがこれにあたります。
なお、ソフトウェアをいつ除却したかにより、固定資産除却損の金額が変わってきますので、いつ除却したかというのは重要な情報です。しかし、ソフトウェアを使わなくなった時点やアンインストールして使えなくした時点というのは後々の検証が難しく、税務調査などで論点となることがあります。
ソフトウェアを除却した時点が適正であるということを示すために、稟議書や除却申請書などの関連文書を残すとともに、そのソフトウェアを使った業務の廃止に伴い除却したのであれば、業務の廃止を示す文書(顧客への案内文書など)や、ソフトウェアをアンインストールする際の画面コピーなどを残すようにしておくとよいでしょう。
まとめ
ソフトウェアを外部から購入したときの取扱いは、他の固定資産と大きく変わりませんが、除却したときは、後々問題とならないように、除却時点が適正であることを示す記録を残しておくように注意しましょう。
自社でソフトウェアを開発するときは、開発費用を集計しなければならないので、事前にその準備をしておかなければなりません。労務費などが適正に集計されていなければ、後々税務調査などで問題となる可能性があります。
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