試算表の見方、作り方とは?3つの試算表のポイントを解説

試算表の見方、作り方とは?3つの試算表のポイントを解説

経理担当者が作成する書類に「試算表」があります。耳にする機会は多くても、どのような役割があるのか、どのような目的で作成するのか、という点までは詳しく理解できていない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、試算表の役割や種類、試算表の見方などについて詳しく解説します。なんとなく触れていた試算表の中身を、しっかりと理解しましょう。

試算表とは

試算表は、決算書の作成前の途中の段階で、現在の業績を確認するための集計表です。決算書は会社の1年間の業績を集計したものですが、1ヶ月分、3ヶ月分、半年分など年度の途中で集計します。一般的には1ヶ月ごとに集計したものが月次表ですが、月次試算表ともいいます。
試算表は、決算書を作成する前に集計するものですが、決算の直前の時期に作成しても何の意味も持ちません。なぜなら、試算表は期中での会社の業績を確認する目的で作成するものであり、決算書を正確に作成するためだけの書類ではないからです。

試算表は、帳簿ミスを発見することはもちろん、会社の業績の状況をおおよそで知ることができます。できるだけ早期から業績を確認することで、期中においての経営改善につなげやすくなるのです。また、金融機関に融資の申し込みをする際には、試算表を提出することがあります。

試算表の役割

上述でも触れた通り、試算表には「適切な決算書作成」「期中の業績確認」「融資の添付資料」としての役割があります。

適切な決算書作成

試算表を作成することにより、仕訳や帳簿の転記、計算ミスを早期に発見できます。決算書の作成段階になってからどんな取引だったか記憶を辿るのは難しいため、あいまいな処理で済ませてしまうことも少なくありません。月次試算表を作成することで、取引との整合性を確かめながら進められます。

期中の業績確認

試算表で期中のおおよその業績が把握できます。前年の同期時と比較しながら、業績が向上しているかなどを判断します。仮に問題点があったとしても、期中の早い段階で改善に取り組めるでしょう。また、試算表の結果からおおよその業績を予測することも可能です。年度末に近づくほど今期の業績は明らかになりますので、利益が出そうなのか赤字になりそうなのかも予測できます。

融資の添付資料

金融機関に提出する添付資料として、試算表を求められることは多いでしょう。前年度の決算書はあくまで結果であり、金融機関が現況を把握、または予測するには試算表が適しているのです。そのため、いつでも試算表が集計できるように準備しておくことが大切です。

試算表の作成時期

試算表の作成は会社ごとに自由に決められます。しかし、試算表を作成する目的を考えるなら、できるだけ短いスパンで作成して検証することが望ましいため、税理士事務所と連携しながら会計処理をしている場合には月次試算表として作成するのがよいでしょう。

ただし、月次試算表の完成が翌月以降になってしまうと、タイミングよく現状を分析することができません。月試算表が速やかに完成できるように、社内の会計処理も遅れなく進めましょう。

融資を受ける場合

金融機関に融資を受けるときは、前年度の決算書や今年度の試算表を求められることがあります。上述でも触れた通り、前年度の決算はあくまで結果であり、今後の業績を予測する資料として試算表も重視します。

試算表は日々の会計記録の積み重ねです。いざ必要となったときに慌てて会計入力を始めても、すぐに完成できるとは限りません。日頃から月次試算表として備えておくのがおすすめです。

試算表の種類と作り方

試算表には「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類があります。

合計試算表

合計試算表は、仕訳後の総勘定元帳を借方と貸方に集計したものです。借方と貸方の合計額は合致するのが前提ですから、もし数字が違っていたら入力ミスや転記ミスなどが疑われます。

残高試算表

残高試算表は、勘定ごとの残高を借方と貸方に振り分けてまとめたものです。貸借対照表や損益計算書のフォーマットとほぼ同じように作成されますので、売上高やキャシュフローなど現状の業績を把握できます。また、借方と貸方の合計は合致します。

なお、残高試算表については、こちらの「決算書作成に役立つ!残高試算表の作成方法とその他試算表との違い」でもご紹介していますので、あわせてご覧ください。

合計残高試算表

合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を組み合わせたものです。会社の業績を把握しながら、どのような取引があったのかも同時に知ることができます。借方と貸方の合計は必ず合致します。

残高試算表を作成する元となるのは、仕訳された「総勘定元帳」です。日々の取引を仕訳し、総勘定元帳を作成することで、試算表が容易に作成できます。

試算表の見方

会社の業績を把握するには、貸借対照表や損益計算書と同じフォーマットの残高試算表が適しています。

貸借対照表

貸借対照表では、残高が極端に大きな数字になっているものがないか確認します。覚えがないのに数字が大きすぎる場合は、入力や記載ミスの可能性があるでしょう。また、現預金や売掛金の残高、買掛金や未払金の残高をチェックすることで、資金繰りの計画も把握しやすくなります。

損益計算書

損益計算書でも、残高が極端に大きな数字がないか確認します。また、売上高と利益のチェックは大切です。製造勘定も使っている場合は、製造原価の増加傾向がないか把握するとよいでしょう。

なお、試算表は、年度初めから作成月までの合計として作成する試算表と、毎月の月次試算表の結果を月ごとに記載する年間試算表の2種類を作成するのがおすすめです。一定期間の合計試算表よりも各勘定の流れが把握しやすく、前年度との比較も行いやすくなります。

まとめ

試算表は、仕訳ミスから会社の業績、金融機関への融資資料など大切な役割を果たしてくれるものです。日頃の会計処理をしているだけで、簡単に全体像を把握することはできません。しかし、試算表を活用すれば、会社の業績がどのような方向に向かっているのか、立ち位置を把握しやすくなります。

日々の会計処理を的確に行うことはもちろん、一定の時期に試算表を作成し、適切な経営改善につながるようにしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 谷澤 佳彦

谷澤佳彦様(トリミング&圧縮)

1993年に税理士資格を取得し、「谷澤佳彦税理士事務所」を開設。近年は相続・事業承継に対する税務相談を数多く対応する。司法書士や不動産鑑定士など他の専門家とタッグを組み、組織として企業の繁栄・事業承継をサポートすることも得意とする。AFP(Affiliated Financial Planner) 資格を 2002 年に取得、 2 級 FP 技能士資格を2003 年に取得。

谷澤佳彦税理士事務所