利益剰余金とは?マイナスになる理由や主な用途、配当について解説
企業から生まれる利益を留保するものとして「利益剰余金」があります。言葉としては聞き慣れているかもしれませんが、具体的にどのようなものか詳しくは理解できていないという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、利益剰余の概要についてご紹介するとともに、利益剰余金が生まれる要因、計算方法、利益剰余金と内部留保の関係などを解説していきます。
利益剰余金とは
利益剰余金とは、毎年、企業から生まれる利益を社内留保する際に用いる勘定科目です。貸借対象表の純資産の部の株主資本に記載されます。
単年の会計年度で生まれた利益剰余金が累積されると、企業の資産も比例して増えるため、安定した経営をしていると判断されやすい傾向があります。
利益剰余金の3つの要素
利益剰余金は「利益準備金」と「その他利益剰余金」に大別され、その他利益剰余金はさらに「任意積立金」「繰越利益剰余金」に分けられます。それぞれの特徴を解説していきましょう。
利益準備金
利益準備金は、企業の利益の中で会社に留保することが決まっているものを指します。法定準備金とも呼ばれ、会社法によって積み立てることが義務付けられているものの一つです。
会社法では、配当金額の1/10以上を資本準備金または利益準備金として積み立てることとされています。
任意積立金
その他利益剰余金の一つである「任意積立金」は、企業が独自に行う積立金です。「任意」であることから、義務付けである利益準備金とは異なるスタンスです。任意積立金は資金が社外に出ていくことを防ぐために積立てられます
繰越利益剰余金
繰越利益剰余金も、その他利益剰余金の一つです。繰越ですから、過年度から持ち越しになっている使途が特定されない利益保留となります。繰越利益剰余金の配当・処分を行う場合は、株主総会や取締役会の決議が必要です。
利益剰余金が増減する要因
利益剰余金はマイナスになるケースもあります。そもそも、企業が生み出す利益の一部が利益剰余金であるはずなのに、なぜマイナスになるのでしょうか。
赤字経営などの場合、一時的に資金は「利益剰余金」を取り崩して経営を保つことになります。利益剰余金の減少は、債務超過や倒産リスクがあると見られる可能性もあります。
債務超過になると資産よりも負債が大きくなるため、純資産がマイナスとなってしまうのです。債務超過は、金融機関からの多額の借入金をすることでも起こり得ます。
このほか、稀ではあるものの、株主に過剰配当をすることで利益剰余金がマイナスになるケースもあります。
利益剰余金がマイナスになることは、経営状態として資金繰りもかなり苦しい状態になっていることが予想されますので、利益確保のためにも何らかの改善が必要です。
なお、繰越利益剰余金については、こちらの「繰越利益剰余金とは?貸借対照表での表記方法と処理方法を紹介」の記事でも詳しくご紹介していますので、併せてご覧ください。
利益剰余金の計算方法
利益剰余金は、次のような計算方法によって算出されます。
計算式はいたってシンプルなもので、当年度の利益を蓄積された利益である繰越利益剰余金に加えるだけです。
なお、利益準備金に関してはこちらの「利益準備金はいくらが適切? 具体例から学ぶ計算方法と仕訳方法」の記事でもご紹介していますので、併せてご覧ください。
利益剰余金の用途
利益剰余金の使途は特に決まりがないため、企業のためのさまざまな部分に活用できます。主な用途は次の通りです。
- 設備投資
- 株主配当
- 賃金引上げ
- 資本金の増資
- 企業買収
- 事業資金 など
利益剰余金は、工場の建設や機械の購入などといった設備投資に使われることも多いです。また、株主配当や資本金の増資などに使われることも一般的となっています。会社が利益を出しているなら賃金として従業員に還元する方法もありますが、利益は一時的に得ているケースもあるため、継続して続く賃金に充てることを実行する企業は少ないでしょう。
利益剰余金の配当と処分
企業が得た利益である利益剰余金の使い道は、株主総会において決定されます。これは、「剰余金の処分」と呼ばれるものです。そして、その使い道の中で株主へと配当金が支払われることを「剰余金の配当」といいます。
配当した場合、剰余金は社外に流出することになりますが、利益剰余金と同義である内部留保が多いことは近年社会で話題になっており、利益が出ても内部留保として保持していることが企業にとってマイナスイメージに繋がる可能性もありますので、処分を選択している企業も少なくありません。
なお、内部留保という言葉は会計上で用いるものでなく、社会一般的に使われているものであることを理解しておきましょう。
使い道が決まらなかったもの、いわゆる処分されなかった剰余金は、次年度に繰越されることになります。
まとめ
今回は、利益剰余金の3つの要素に加え、計算方法、用途、処分・配当などについてお伝えしました。法的準備金のように会社法で義務付けられているもののほか、任意積立金、繰越利益剰余金などもあります。剰余金の使われ方で勘定科目が異なりますので、混同しないように、それぞれの意味をしっかりと理解して会計に取り組みましょう。
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