ポイント還元の会計処理 コーポレートカード利用時の注意点

ポイント還元の会計処理 コーポレートカード利用時の注意点

消費増税に伴い、キャッシュレス決済のポイント還元がよく聞かれるようになっています。個人のクレジットカードや電子マネー払いだけではなく、コーポレートカードもポイント還元の対象です。しかし実際にポイントが付与された場合、コーポレートカードのポイントを利用したときの会計処理はどのようになるか、実務で迷う方もいらっしゃるかもしれません。今回は、コーポレートカードのポイント還元での会計処理について紹介していきます。

増税後に変わったコーポレートカードのキャッシュレス決済

法人・事業主が利用する「キャッシュレス決済」のポイントは課税対象です。
消費税が増税になってから特に注目されていますが、以前とは何が違うのでしょうか。

コーポレートカードで支払いをするキャッシュレス決済は今までも利用していましたが、増税後はコーポレートカードで支払いをすると、国が最大5%のポイント還元をする「キャッシュレスポイント還元事業(キャッシュレス消費者還元事業)」制度の対象になります。

消費者還元期間は、2019年10月~2020年6月までの間で、ポイント還元の「対象店舗」で、「対象キャッシュレス手段」で支払うことが必要です。注意する点は、対象キャッシュレス手段が対象店舗によって違う点です。クレジットカードやデビットカードだけをキャッシュレス手段としている店舗もあれば、電子マネーやQRコードなどをキャッシュレス手段に加えている店舗もあります。

法人の場合、キャッシュレス手段は一般的にはコーポレートカード決済となるわけですが、還元されたポイントが貯まっていけばギフトカードや電子マネーに変えて、また別の使途に利用できます。また、マイルに変えて旅費交通費として利用することも可能でしょう。

コーポレートカードの種類によっては、今までもポイント還元のサービスが付加されていたものもあります。しかし、キャッシュレスポイント還元事業制度の最大5%のポイント還元はかなり有利な条件になります。利用する金額が大きいコーポレートカードなら、還元される金額も貯まりやすくて法人にとってもメリットになります。

キャッシュレス決済のポイント還元事業の仕組みとは

キャッシュレス決済によるポイント還元事業の仕組みを、もう少し詳しく解説していきましょう。

この事業の目的は消費増税後の需要平準化対策、消費者の利便性向上と、中小・小規模のポイント還元支援です。そのため、「ポイント還元事業の対象店」は主に中小・小規模事業者になっています。

「キャッシュレス決済」であれば、どこでも最大5%ポイント還元になるわけではなく、大手百貨店、大手スーパーなどは対象店に含まれません。また、大手フランチャイズ(FC)加盟店の還元率は2%です。

今回の事業は、増税に関連しているため9ケ月間だけと限定されているものですが、各コーポレートカード会社では以前から、独自にポイント還元サービスを行っているところがあります。今後キャッシュレス決済はますます身近になっていく傾向がありますので、経理担当者は、ポイント還元の会計処理について理解を深めておきましょう。

コーポレートカードのポイント還元の会計処理について

還元されたポイントは大小にかかわらず、付与されたときから利用できる「疑似通貨」と捉えられます。そのため本来の意味では「雑収入」ともいえますが、実務では明確な基準がないため、よほど高額なポイントでなければ、付与されているだけで仕訳が発生することはないのが現状です。また、ポイント付与と利用のタイミングで仕訳が変わるとも考えられています。
ポイントが付与されても一定期間が経過すると自然消失する性質のものもあります。
たとえば、コーポレートカード利用で文房具を購入し、ポイントが付与された際の仕訳は次のとおりです。

借方 金額貸方金額
事務用品費3,000円未払金3,000円

ただし、付与されたポイントを利用した際には仕訳が発生します。ポイント分を収入と捉えるか、値引きと捉えるかで仕訳方法が変わるのです。

コーポレートカードのポイント1,000円分を利用して5,000円の文房具を購入した際の、それぞれの仕訳は次のとおりです。

<収入とする場合>

借方 金額貸方金額
事務用品費5,000円未払金4,000円
雑収入1,000円

<値引きとする場合>

借方 金額貸方金額
事務用品費4,000円未払金4,000円

どちらも選択できる仕訳方法ですが、どちらを基準とするかは税理士などと相談しながら社内で統一させましょう。

コーポレートカードのポイント還元で経理が注意すべきこと

ポイント利用時の仕訳方法には二通りがありますが、どちらも混在しないようにしなければなりません。どちらかの仕訳を継続的に選択する必要がある点に注意してください。

消費税の取り扱いについては、ポイントが付与されたときは不課税ですが、一部にポイントを利用したときのポイント分は不課税となりますので、課税と不課税が混在する点に気をつけましょう。

また、減価償却が必要な高額な固定資産を購入する場合、仕訳の仕方によって減価償却の金額に違いが生まれます。仕訳の選択は、さまざまなケースを想定して決めるようにしましょう。

コーポレートカードの利用は、後から請求一覧で確認することになるため、ひとつひとつ明細を確認しながら進める必要があります。ポイント還元もですが、利用明細には軽減税率適用のものも混在していることがあります。

チェック漏れがないことはもちろん、会計処理の仕方を社内で統一するために業務フローなどを作成し、ダブルチェックができるようにしておくことも大切です。

まとめ

今回は、コーポレートカードを導入した企業がポイントを会計処理する際の注意点についてご紹介しました。
仕訳方法には二通りあるため、先々のことを想定して選択しなければいけません。また、利用した明細はしっかり把握しておくことが大切です。
今回のポイント還元事業をきっかけに、ポイント付与、ポイント利用の会計処理についてしっかりと理解し、社内で統一した業務ができるようにしておきたいですね。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

渡部さんお写真w240h240

大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。