【平成30年度 税制改正】経理担当者必見!押さえておきたい3つのポイント

平成30年度の税制改正に関する報道が増えてきました。今回はその中でも経理担当者として押さえておきたいポイントに注目してみましょう。

 

基礎控除額の増額と給与所得控除額の削減

所得税においては、全ての人に対して適用される基礎控除があります。現状では38万円ですが、これを48万円に増額する方向で話が進んでいます。年収2,400万円を超えるような高額所得者については段階的に引き下げるようです。

そしてこれと併せて、給与収入を得ている人に対して適用する給与所得控除の削減が検討されています。それほど高額な給与収入でない(年収800万円程度まで)人については、差し引きゼロで負担が変わらないようです。それ以上の給与収入を得ている人については負担が増加することになりそうです。一方、給与をもらっていない自営業者らにとっては、基礎控除引き上げによる減税効果が発生します。

これらの改正には、

  • 比較的優遇されていると言われる高額な給与所得者に対する増税
  • 副業や兼業、小さな起業など多様化する働き方を支援する

といった狙いがあります。所得税制ではこれまで、一般的なイメージとは逆に自営業者以上に給与所得者に対して手厚く対応していた部分があります。「自営業者は何でも経費にできて良い」と言われがちですが、給与所得者には「何もしなくても経費として認められる部分がある程度ある」というのが事実です。今回の改正はそこに着手することで、働き方の多様化を促進すると同時に、高所得者に対して課税を強化するという格差解消の狙いがあるとみて良いでしょう。

経理担当者としては、毎月の源泉所得税計算について留意したいところです。給与所得控除が改正されれば、毎月の源泉所得税についても金額が変更します。平成30年1月から始まる新しい配偶者控除および配偶者特別控除の運用も含め、しばらくは毎月の源泉徴収や年末調整などで難しい対応を迫られることになります。

 

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所得拡大促進税制の拡充

上で紹介した改正とは逆の話として、給与の引き上げを意図する検討も進んでいます。所得拡大促進税制の拡充です。

所得拡大促進税制とは、社員に対する給与の支払額を引き上げた企業について、その引き上げ額に応じて法人税等を減税するという仕組みです。この制度自体は始まってから数年経過しており、経理担当者の中には集計作業などを担当されたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。

制度の意図は、賃金水準を引き上げることにより、いわゆる中流家庭を復活させて消費の底支えをすることにあります。上で紹介した「高額所得者への課税強化」と対比させると、格差を是正する方向で改正が検討されていることがわかります。

本制度について、継続および拡充が検討されているようです。制度がかなり長期間に渡ってきたため、企業としても情報の処理にそれなりの手間がかかるようになることが予想されます。経理担当者としては「過去データの整理整頓」「雇用保険加入の有無」「役員および役員関係者の該当有無」など、本制度を適用するに当たって必要な各種情報について、円滑に取り出せるようにしておく必要があります。

 

事業承継関係

経理そのものとは関係性が薄いですが、企業統治の観点から事業承継に関する改正も注意しておきましょう。

まず報道で出ているのが事業承継税制の拡充です。本制度は「一定の条件を満たしてその企業の株式を取得した後継者については、納税額の一部を猶予する」というものです。ポイントとなるのは免除ではなく猶予というところで、後継者は株式を取得した後、その事業をきちんと継続していかなければなりません。この事業承継税制について、拡充が図られる見込みです。

政府としては、中小企業経営者で急激に進行する高齢化問題については、早めに対応を進めたいようです。一部では「今後10年を目処に世代交代を進める」と断言している人もいます。中小企業の競争力低下は国家的な経済基盤の弱体化を意味します。上でも紹介した中流家庭の復活という観点からしても、これは見逃せない課題です。

事業承継税制に関しては、一部において世代交代の起爆剤として大きな期待を集めています。実際、最近の税務業界では事業承継が一大流行になっており、今回の改正検討もその流れを汲み取ったものといえるでしょう。本制度の活用が活発になってくる場合、日常的な経理について正確に処理をされていることが必要不可欠となります。現時点において企業価値がどれくらいであり、それが今後どのようになっていくのか?といった情報が読み取れない限り、事業承継税制を活用することは不可能だからです。

経理というとあくまでも企業活動の後方支援が主眼となっていますが、官民を併せた世代交代が進む中で、会計や経理の情報が最前面において議論されることが増えてくるかもしれません。

事業承継税制の拡充と相対する話として、一般社団法人を活用した租税回避の防止に関する改正も検討されています。こちらは一般社団法人を活用して相続税を回避するという仕組みについて防止をするためのものです。この一般社団法人を使用した仕組みは、高額所得者を中心に事業承継においても一部で活用をしている例がありましたが、あまりにも過剰な租税回避とも取れるような事例も多く、対応の必要性が指摘されていました。事業承継の側面からも、今回の改正検討が「格差解消」に主眼を置いていることが分かります。

 

まとめ

所得税における基礎控除が引き上げられ、一方で給与所得者に対する給与所得控除が引き下げられました。特に高額な給与所得者については大きく引き下げられます。
その一方、企業に対して給与水準引上げを支援する改正も進みます。事業承継についても中小企業における支援税制が拡充される一方、富裕層向けの特例的扱いを防止する改正が行われ、全体を通して「多様な働き方の支援」「格差の是正」など、社会的要請に応える形での改正と言えます。

 

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。