給与支払報告書とは?内容や書き方、令和4年度の提出期限について解説

給与支払報告書とは?内容や書き方、令和4年度の提出期限について解説

年末調整が完了したあとも、経理関係者の忙しさは続きます。
年明けからも忙しいのが「法定調書の作成業務」です。今回は、その業務の中でも事務的な作業の割合が大きい「給与支払報告書」の基本についてお伝えします。

「給与支払報告書」とは何なのか?

給与支払報告書とは、従業員や役員など(以下、「従業員等」といいます)に支払った前年の給与額を事業主が市町村へ報告する書類のことをいいます。事業主(個人事業主・法人)は、その年1月1日時点における従業員等の居住地がある市区町村に対して給与支払報告書を提出する義務を負っています。

給与支払報告書は、個人別明細表と総括表の2つで構成されています。

個人別明細書とは

個人別明細書とは、従業員等一人ごとに作成する明細書のことをいいます。個人別明細書には、給与を受ける者の氏名、住所、生年月日、給与の金額、保険料控除の金額などが記載されています。個人別明細書に記載されている内容は源泉徴収票とほぼ同じです。

総括表とは

総括表とは、個人別明細書を提出すべき市区町村ごとに作成する書類のことをいいます。総括表には、給与の支払者の名称、給与の受給者の人数、個人別明細書を作成した従業員の人数などが記載されています。総括表は「個人別明細表の表紙」としてお考えいただくと理解がスムーズです。

源泉徴収票との違い

源泉徴収票と給与支払報告書(個人別明細書)の違いについて、記載されている内容は両者ほぼ同じですが、提出先と提出すべき対象者が異なります。

提出先について、源泉徴収票の提出先は事業主の本店所在地を所轄する税務署で、給与支払報告書の提出先は従業員等の住所地の市区町村役場です。

提出すべき対象者について、源泉徴収票は年末調整の有無や支払額によって提出すべき対象者が絞られる一方、給与支払報告書はその年の1月1日時点におけるすべての従業員等の分を作成して提出する必要があります。
以上紹介した内容を表にまとめました。

提出先提出対象者
源泉徴収票事業主の本店所在地を所轄する税務署従業員等全員ではない(対象ではない従業員等もいる)
給与支払報告書従業員等の住所地の市区町村役場従業員等全員

いつまでに提出しなければならないのか?

給与支払報告書は毎年決まった期限までに提出しなければならず、期限までに提出できなかった場合は従業員等に不利益が生じる可能性もあります。以下、給与支払報告書の提出期限と期限までに提出できなかった場合の影響について解説します。

給与支払報告書の提出期限

給与支払報告書は毎年決まった期限までに提出しなければならず、期限までに提出できなかった場合は従業員等に不利益が生じる可能性もあります。以下、給与支払報告書の提出期限と期限までに提出できなかった場合の影響について解説します。

給与支払報告書の提出期限

給与支払報告書の提出期限は毎年1月31日です(31日が土日と重なる場合には2月の第1月曜日となります)。たとえば、2021年に支払った給与にかかる給与支払報告書は、2022年1月31日(月曜日)が提出期限です。

実務の肌感覚としては、年末調整が予定していたスケジュール通り終わっているのであれば、給与支払報告書を提出期限までに提出するということは、そこまで負担が大きい作業ではありません。

ただし、たとえば再年末調整などが発生してしまった場合には1月末の提出は忙しくなることが予想されます。再年末調整が発生した場合に必要な手続きについては下の記事で確認してください。
経理プラス:年末調整の失敗事例集―押さえておきたい重要ポイント―

提出が遅れるとどうなるのか?ペナルティは?

給与支払報告書の提出が遅れたとしても、事業主にペナルティは課されません。ただ、提出が遅れてしまい6月の住民税の賦課作業に間に合わなかった場合には、本来は1年分の住民税を12ヶ月に分けて納付するところが11ヶ月、10ヶ月となってしまうため、1ヶ月辺りの住民税の金額が高くなってしまいます。従業員の心理的負担が増えてしまうことを考えても、期限内に提出することが望ましいです。

なお、給与支払報告書を提出しない場合、あるいは虚偽の記載をした給与支払報告書を提出した場合は、その事務処理者と会社にペナルティが課される可能性があるのでご注意ください(ペナルティは1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。地方税法317条の7)。

給与支払報告書の提出対象者

「給与支払報告書」の提出対象となる従業員等は、前年1年間のうちに給与を支払った全員です。1月1日現在時点で在職している人はもちろんのこと、年の途中で退職した人や1回でも給与を支払った人も該当します。
特例で、年の途中で退職した人は支払額が少額だった場合には提出義務が免除される規定など、知っておくと実務で有利となる規定があります。

給与支払報告書の書き方と注意点

最後に、給与支払報告書の書き方と注意点について簡単に解説します。

給与支払報告書の書き方

給与支払報告書の書き方について、個人別明細書の記載内容は全国共通で、かつ源泉徴収票とほぼ同じなので、書き方に悩む場面は多くないと思われます(異なるのは、16歳未満の扶養親族の個人番号を記載するか否かくらいです)。

一方、総括表の記載内容は市区町村ごとで独自フォーマットを使っているため、提出先である市区町村のホームページを見て書き方を確認する必要があります。

給与支払報告書の注意点

給与支払報告書を作成するにあたって注意したいのは、提出年における最新の様式を使う点です。個人別明細書の様式も総括表の様式も頻繁に改正されているため、去年の様式をそのまま流用するのではなく、最新の様式を確認する必要があります。最新の様式は、提出先の市区町村のホームページで公開されています。

また、給与支払報告書の提出方法にも注意が必要です。2021年1月以降に提出する給与支払報告書について、提出年の前々年における給与所得の源泉徴収票の枚数が100枚以上である場合、給与支払報告書を紙で提出することができなくなりました。この場合、給与支払報告書はeLTAX(エルタックス)、もしくは事前の承認を得た上でDVD等にて提出する必要があります。

なお、実際の事務作業を進める上で疑問点や失敗しやすい点は別にQ&Aの記事でお伝えさせていただきます。
こちらも続けてチェックしてみてください。
経理プラス:給与支払報告書のQ&A ー経理担当者が知りたいちょっと深いところー

まとめ

以上、給与支払報告書の書き方、対象、提出方法を解説しました。
給与支払報告書の作成業務にミスがあると従業員等に迷惑をかける可能性もあるので、この記事で解説した内容を踏まえて確実に処理するようにしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 川口 拓哉

著者

税理士(近畿税理士会)。2017年の税理士試験で官報合格。個人の税金から法人の税金までの幅広い税目について知識と実務経験を有する。川口拓哉税理士事務所所属。

川口拓哉税理士事務所