繰越欠損金の税効果会計とは 上限額や仕訳方法を紹介します

繰越欠損金の税効果会計とは 上限額や仕訳方法を紹介します

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2022年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/)より

繰越欠損金とは

「欠損金」とは、税務上の赤字です。会社の益金から損金を差し引いた所得が、マイナスになったときの金額です。そして、欠損金が生じた事業年度に青色申告書である確定申告書を提出している場合、その欠損金は翌事業年度以降に繰り越すことが可能。これが「繰越欠損金」です。

繰越欠損金は、後に黒字となった事業年度で確定申告を行うことにより、その事業年度の損金に算入することができます。つまり、将来の黒字(課税所得)と相殺することができるのです。つまり繰越欠損金には将来の税金を安くする効果があります。
このことから、繰越欠損金は会計上の「税効果会計」の対象となり、発生した事業年度に適正な法人税額を配分することができるのです。税効果会計は上場会社や会計監査人を設置する会社で必須となります。

繰越欠損金の適用について

繰越欠損金を損金に算入できる期間とその額には、上限があります。

繰越欠損金を損金に算入できる期間

繰越欠損金を控除できる期間は、事業年度開始の日前10年(平成30年3月31日以前に開始する各事業年度に生じた欠損金額については9年)以内に開始した事業年度において生じた欠損金です。複数の事業年度で繰越欠損金が生じている場合は、古い事業年度のものから順次、損金に算入されます。

繰越欠損金を損金に算入できる控除限度額

中小法人(※1)以外の法人には、繰越欠損金を損金に算入できる額に上限があります。中小法人の場合はその事業年度の課税所得が控除限度額となります。しかしそれ以外の法人では、一定の場合を除きその事業年度の所得金額に100分の50を乗じた金額が控除限度額となります。
(※1)中小法人・・・資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下である法人等(100%子法人を除く)

参考:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

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繰越欠損金の税効果会計とは

それでは、繰越欠損金の税効果会計をどのように行うかを解説します。まずは税効果会計の要点をおさらいし、その後に繰越欠損金の仕訳を見ていきましょう。

税効果会計とは

税効果会計の目的は、将来の課税所得を減算・加算させる金額に対応する税額を当期の会計に正しく反映させることにあります。
会計上の費用と収益の額や資産と負債の額は、税務上のものとは必ずしも一致しません。しかしながら、その差が「一時的な差異」である場合、将来その差異が解消されたときに課税所得が減算・加算され、会計と税務の差異がなくなります。

税効果会計では、会計上の利益(税引前当期純利益)と、税務上の課税所得から計算された法人税の額(法人税等)を正しく対応させるために行われます。たとえば、収益と益金がともに1,000で会計上の費用が800、そのうち減価償却費の償却限度超過額が200あって、税務上の損金が600となった場合。税引前当期純利益200に対する法人税等は、140(法定実効税率35%で計算)になります。

【会計】

 収益費用税引前当期純利益法人税等当期純利益
1,00080020014060

【税務】

 益金損金所得法人税等
1,000600400140(※)

(※)法定実効税率35%で計算

損金不算入となった200により、税引前当期純利益200に対して法人税等の金額が140と税額が大きくなってしまいました。しかし減価償却費の償却限度超過額は、将来の減価償却や資産の除却などで解消されるため、一時的な差異にあたります。したがって、損金不算入の200により一時的に大きくなった税額を、税効果会計を使って正しく当期の会計に反映させることが可能です。法人税等の金額を当期の会計から減少させるよう、上記のケースでは、次のような仕訳を行います。

 借方金額貸方金額
繰延税金資産70※ 法人税等調整額70

※200×35%=70

将来、減算一時差異の税効果を計上するには、まずその差異に対する法人税等を計算します。借方で「繰延税金資産」(B/S)を計上、貸方に「法人税等調整額」(P/L)を計上して差異に対する法人税等を調整。繰延税金資産は、税金の前払いのイメージで捉えるとよいでしょう。
上記のケースでは、法人税等140が法人税等調整額70によって調整されることで、当期純利益が130(※)になります。その後、差異が解消したときは逆仕訳を行って処理します。

(※)税引前当期純利益200-法人税等140+法人税等調整額70=当期純利益130

経理プラス:税効果会計とは?目的と手順を仕訳方法と合わせて紹介

繰越欠損金の税効果会計

繰越欠損金は会計上の数字ではないため、税引前当期純利益と法人税等の間にアンバランスを生じさせるものではありません。しかし将来の課税所得と相殺できるため、将来の税額を減少させる「将来減算一時差異」と同様の効果があります。このことから、繰越欠損金も税効果会計の対象です。それでは、具体的な処理を見ていきましょう。

繰越欠損金の税効果会計の仕訳例

【例】

  • 中小法人A社が、X1年度に繰越欠損金300を計上した。
  • • X2年度に税引前当期純利益が100出たため繰越欠損金を100、X3年度に税引前当期純利益が300出たため残りの200を損金に算入した。
  • • 繰越欠損金の控除限度額がないものとしております。

X2年度

  
税引前当期純利益100
法人税等調整額100(損金算入繰越欠損金)×35%=35
仕訳法人税等調整額 35 / 繰延税金資産 35

損益計算書末尾

X1年度

税引前当期純損失△300
法人税等0
法人税等調整額△105
法人税等合計△105
当期純損失△195

(※1)会計上の利益と課税所得が一致していると仮定
(※2)法定実効税率35%で計算

税引前当期純損失△300
法人税等0
法人税等調整額△105
法人税等合計△105
当期純損失△195

損益計算書末尾

税引前当期純損失100
法人税等0
法人税等調整額35
法人税等合計35
当期純利益65

X3年度

  
税引前当期純利益300
法人税等300‐200(損金算入繰越欠損金)=100
100×35%=35
法人税等調整額200(損金算入繰越欠損金)×35%=70
仕訳法人税等調整額 70 / 繰延税金資産 70

なお、繰越欠損金に控除限度額があれば、X2年度・X3年度の逆仕訳の繰延税金資産、法人税等調整額の金額も調整が必要です。

損益計算書末尾

税引前当期純損失300
法人税等35
法人税等調整額70
法人税等合計105
当期純利益195

繰越欠損金の税効果を計上するための「回収可能性」とは

繰越欠損金の税効果を計上するには、「回収可能性適用指針に従って、その回収可能性を判断し計上する」という決まりがあります。

参考:税効果会計に係る会計基準の適用指針

繰越欠損金は、黒字にならなければ将来の減税効果を生じることはなく、期間を過ぎれば効果そのものを失います。そのため、繰越欠損金の税効果を計上する際は、過去の課税所得などからその「回収可能性」を見積って計上するのです。
なお、経常利益が安定しない会社では、回収可能として見積られた繰越欠損金に応じた額しか計上できません。見積りの方法は、回収可能性適用指針に従って行うことになります。ここでは、回収可能性を見積もった結果、税効果会計の計上額に制限が加わることがある点を押さえておきましょう。

まとめ

繰越欠損金の税効果会計とは、繰越欠損金によって将来の税金を減少させる効果を会計上に正しく反映させるためのものです。計上額は過去の課税所得の状況などから回収可能性を判断して、合理的な金額で見積もる必要があります。繰越欠損金が発生した際には、回収可能性を慎重に判断しつつ、適用ルールに則って正しく処理をしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

経費精算システム「楽楽精算」

監修 税理士 山中 宏

税理士、中小企業診断士、ウェブ解析士。 小規模企業から大手自動車メーカーまで様々な業種の会計・税務の実務経験を有する。 売上拡大をお手伝いする伴走者として企業支援に取り組む。

山中宏税理士診断士事務所