雇用促進税制の活用はキャッシュへのインパクト大!概要を理解して、賢く活用しよう
皆さんは「雇用促進税制」をご存知でしょうか?
雇用促進税制は簡単に言うと、従業員などの雇用者を1人増やすごとに40万円の税額控除を受けられる制度です。40万円では少額だと思われるかもしれませんが、税額控除つまり、まるまるキャッシュの手残りが増えますのでインパクトは大きいものです。
なお、令和4年4月1日からは、地方拠点強化税制における雇用促進税制の制度内容が変更になりました。
是非、本稿を参考に、雇用促進税制を活用してください。
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雇用促進税制を適用する際の流れ
雇用促進税制は以下のような流れで適用されました。
- Step 1. 雇用促進計画書の作成・提出
雇用促進税制を適用しようとする事業年度の開始後2ヶ月以内に、「雇用促進計画」を作成し、納税地を管轄するハローワークに提出します。 - Step 2. 雇用促進計画の達成状況の確認
雇用促進税制を適用しようとする事業年度の終了後2か月以内に、ハローワークに雇用促進計画の達成状況の確認を求め、確認を受けます。
確認には2週間~1ヶ月程度要しますので、この後の確定申告期限に間に合うように確認依頼をします。 - Step 3. 確定申告する
ハローワークが雇用促進計画の達成状況を確認した旨の書類の写しを確定申告書に添付して申告します。
雇用促進税制の対象となる法人は?
雇用促進税制は、青色申告法人が、平成23年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において、以下の5つの要件を全て満たしている場合に適用することができます。
- 基準雇用者数が5人以上(中小企業者等については2人以上)であることにつき証明がされたこと
- 基準雇用者割合が10%以上であることにつき証明がされたこと
- 給与等支給額が比較給与等支給額以上であることにつき証明がされたこと
- 雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業(一定の事業を除きます。)を行っていること
- 前期及び当期に事業主都合による離職をした雇用者及び高年齢雇用者がいないことにつき証明がされたこと
以下、それぞれについて説明していきます。
基準雇用者数が5人以上(中小企業者等については2人以上)であることにつき証明がされたこと
「基準雇用者数」とは、当期末の雇用者の数から前期末の雇用者の数を引いた数です。
なお、「雇用者」とは、法人に雇用されている人のうち、雇用保険一般被保険者のことをいいます(役員の親族などの特殊関係者や使用人兼務役員は除く)。
また、「証明がされたこと」とありますが、確定申告書に以下の2つの書類を添付することで、証明がされたことになります。
- ハローワークが雇用促進計画の達成状況を確認した旨の書類の写し
- 控除の対象となる特定地域基準雇用者数、地方事業所基準雇用者数又は地方事業所特別基準雇用者数、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細を記載した書類
基準雇用者割合が10%以上であることにつき証明がされたこと
「基準雇用者割合」は以下のように計算します。
基準雇用者割合=基準雇用者数/前期末の雇用者の数
つまり、前期末の雇用者数を基準とした増加割合が10%以上であれば良いということです。
また、「証明がされたこと」とありますが、これは1.の条件と同じ書類を確定申告書に添付することで、証明されたことになります。
給与等支給額が比較給与等支給額以上であることにつき証明がされたこと
「比較給与等支給額」は以下のように計算します。
比較給与等支給額=前期の給与等の支給額+(前期の給与等の支給額×基準雇用者割合 30%)
なお、「給与等支給額」とは、雇用者に対して支給する、当期の損金に算入される給与等の支給額をいいます。
雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業を行っていること
基本的に雇用保険法が適用される事業は対象となります。ただし、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に定められている風俗営業および性風俗関連特殊営業(キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、麻雀店、パチンコ店など)は適用対象外となります。
前期及び当期に事業主都合による離職をした雇用者及び高年齢雇用者がいないことにつき証明がされたこと
「事業主都合による離職」とは、雇用保険被保険者資格喪失届の喪失原因において、「3 事業主の都合による離職」に該当するものを指します。具体的には、人員整理、事業の休廃止等による解雇や事業主の勧奨等による任意退職が該当します。
税額控除額と上限額
適切なステップを経て上記の条件を満たした場合、税額控除を適用することができます。
税額控除額は、「特定地域基準雇用者数に40万円を乗じた金額」とされています。
「特定地域基準雇用者数」とは、期首において地域雇用開発促進法第7条に規定する「同意雇用開発促進地域」内に所在する法人の事業所において、適用年度に新たに雇用され、期末においてもその事業所に勤務する雇用者の数として所定の証明がされたものをいいます。
その際、カウントする雇用者は、次の2つの要件を満たしておかなければなりません。
- 当該法人との間で労働契約法第17条第1項に規定する有期労働契約以外の労働契約を締結していること。
- 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条に規定する短時間労働者でないこと。
少し難しいですが、簡単に言えば、「同意雇用開発促進地域」と呼ばれる地域において、無期雇用かつフルタイムの雇用者数が増加するごとに1人あたり40万円の税額控除が受けられるということです。
「同意雇用開発促進地域」については、こちらから確認することができます。
逆に言えば、ここに記載されていない地域では、雇用促進税制を適用することはできないと言うことです。
また、雇用促進税制を適用できたとしても、税額控除額は法人税額の10%(中小企業者等は20%)以下という限度がありますので、この点も注意が必要です。
令和4年4月以降の適用要件は
地方拠点強化税制における雇用促進税制となります。東京23区から本社機能を地方に移転する事業(移転型事業)や地方において本社機能を拡充する事業(拡充型事業)について一定の要件を満たした場合に、法人税の税額控除が適用されます。
控除額は1人当たり最大90万円(拡充型事業では最大30万円)となっており、控除額が拡充されています。
税制の適用を受けるには、あらかじめハローワークに「雇用促進計画」を提出することが必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。少し要件が複雑で、対象地域も限られる税制ではありますが、キャッシュに与えるインパクトの大きな税制でもあります。
この機会に雇用促進税制の適用を検討してみてはいかがでしょうか。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。