【無料テンプレートあり】決算報告書の書き方や種類、よくある質問を解説

決算報告書(決算書)の種類や見方とは?テンプレートも紹介

決算報告書(決算書)は、企業の財務状況を把握する重要な書類です。本記事では、無料でダウンロードできるテンプレートを提供し、書き方や作成方法、よくある質問について具体例を交えて解説します。財務諸表や記載項目の基礎知識も網羅し、初心者にもわかりやすくまとめました。ぜひ参考にしてください。

決算報告書(決算書)とは

決算報告書(決算書)は、企業の財務状況や経営成績を把握するために作成される重要な書類です。多くの企業は事業年度終了後にこの書類を作成し、株主や金融機関、税務署などの関係者に提供します。決算報告書の正確な記載は、企業の信頼性を高め、財務の健全性を示すために不可欠です。

決算報告書の開示義務

企業には、一定の条件を満たす場合に決算報告書を開示する義務があります。特に、会社法や金融商品取引法に基づいて設立された企業は、株主や取引先、金融機関などのステークホルダーに対して財務情報を提供する必要があります。たとえば、上場企業等に対しては半期報告書の提出が義務付けられており、四半期ごとの報告は決算短信で行う必要があります。また、中小企業や非上場企業であっても、金融機関からの借入れがある場合や法人税の申告の際に決算報告書を提出することが求められます。

このように、決算報告書の開示義務は企業の規模や形態、取引関係によって異なりますが、適切な開示を行うことで企業の透明性を高め、信頼性を確保することができます。企業は決算報告書を通じて、収支や財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を行うための基盤を築くことが重要です。

決算報告書の目的

決算報告書の主な目的は、企業の財務状況や経営成績を明確に示すことです。これにより、株主や債権者、金融機関などのステークホルダーが企業の現状を正確に把握し、適切な意思決定を行えるようになります。

また、決算報告書は内部管理のツールとしても重要です。経営陣は、収支報告や財務諸表を通じて、収入や支出、資産や負債の状況を詳細に把握し、事業年度ごとの経営成績を評価することができます。これにより、経営戦略の見直しや改善点の特定が可能となります。

さらに、決算報告書は法令遵守の観点からも必要不可欠です。税務署への提出書類、さらには業界によっては自治体などへの提出が義務付けられている場合もあるでしょう。それだけに、正確な決算報告書の作成が求められるのです。また、仕訳帳、勘定元帳などの記録を基に、詳細な収支決算や財務状況を明確にすることで、企業の透明性を確保し、信頼性を高めることができます。

このように、決算報告書は企業の健全な経営と透明性を支える重要な書類であり、その作成と活用は経理業務の基本となります。

決算報告書(決算書)の種類

決算報告書と聞いて、貸借対照表や損益計算書のような代表的な書類をイメージされる方は多いでしょう。実際には会社法等で定められた複数の書類が存在します。以下が決算報告書の代表的な書類となります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

特に貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は「財務三表」と呼ばれており、重要な書類として位置付けられます。

上場企業では有価証券報告書も提出します。

貸借対照表

貸借対照表はB/S(バランスシート)とも呼ばれ、企業の資産、負債、純資産を記載した重要な財務諸表です。資産には、現金・預金などの流動資産や不動産などの固定資産が含まれます。負債には、返済期限が1年以内の流動負債と1年以上の固定負債が記載され、純資産には資本が含まれます。

貸借対照表を通じて、企業がどのように資金を調達し、どのように運用しているかを把握することができます。これは、企業の財務状況を読み取り、経営成績を評価する上で非常に重要な書類です。中小企業や経理初心者でも、この報告書を正しく理解することで、資産や負債の状況を把握し、適切な経営判断が可能となります。

また、貸借対照表のフォーマットや書き方を理解するためには、具体例を参照することが有効です。無料で利用できるテンプレートをダウンロードし、自社の財務状況に合わせて記載項目を確認することをおすすめします。

損益計算書

損益計算書はP/Lとも呼ばれ、企業の1年間の経営成績を詳細に記載した重要な財務諸表です。第三者でも損益計算書を見ればその法人の経営状況が読み取れます。この報告書には、売上、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益などの項目が含まれています。具体的には、売上高から売上原価と販売費および一般管理費を引いたものが営業利益です。

営業利益から受取利息や支払利息などの営業外収益・費用を加減したものが経常利益となり、これに固定資産の売却損益などの特別損益を加減したものが税引前当期純利益となります。さらに税引前当期純利益から法人税、住民税および事業税などを引いたものが当期純利益として記載されます。

損益計算書は、企業の収益と費用、損益の詳細を把握するために不可欠なものです。損益計算書はいくつかの「利益」項目があり、混同しがちですが、それぞれの利益項目を正確に読み取ることが重要です。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書はC/Fとも呼ばれ、企業の1年間の現金の流れを表しており、手元にどれくらいの現金が残されているかを把握できる重要な書類です。上場企業は決算時の作成が義務付けられていますが、非上場企業や中小企業では任意となっています。

企業の1年間の収支という観点から損益計算書も似ていると考えるかもしれませんが、帳簿上の結果と実際のお金の流れは一致しないこともあります。それは現金以外の勘定科目を使って収益や費用の仕訳をしているケースがあるためです。キャッシュフロー計算書は、単純にお金の流れにフォーカスして計算されたものであるため、損益計算書だけでは判断できない部分を補足する役割もあります。

キャッシュフロー計算書は、企業の収支や財務状況を詳細に把握し、資金繰りや財務戦略の適切な判断をサポートします。この書類は収支報告や財務諸表の一部として非常に重要です。無料で利用できるテンプレートをダウンロードし、具体例を参照しながら記載項目を確認することをおすすめします。

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株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、貸借対照表のうち純資産の主に株主に帰属する部分である株主資本の項目が変動した理由を記載する書類です。平成18年の新会社法の施行によって剰余金の配当がいつでもできるようになりましたが、剰余金の配当の流れは貸借対照表や損益計算書では把握が難しいため作成されるようになったものです。

個別注記表

個別注記表とは、会計方針に関する注記、貸借対照表や損益計算書に関する注記、およびその他の財務諸表に記載されている注記を一覧でまとめて記載しているものです。これには、各種引当金の計算方法など重要な会計方針やその変更、表示方法の変更、誤謬があった場合の訂正など、決算書の内容を補足する情報が入ります。

主な決算報告書(決算書)のテンプレート

ここでは、主要な決算報告書(決算書)のテンプレートをご紹介します。これらのテンプレートは、無料でエクセル形式にてダウンロードでき、企業の財務状況を正確に把握するために役立ちます。貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書など、各種決算報告書の作成に必要な記載項目と具体的な書き方をわかりやすく解説します。初心者でも簡単に利用できるこれらのテンプレートを活用し、正確な決算報告書を作成しましょう。

貸借対照表のテンプレート

貸借対照表には、企業の資産、負債、純資産を記載します。月末日や決算日など、ある時点での資産や負債、純資産の金額と内訳を示す表です。企業における財務状況、資金調達の方法などがわかり、健全性を評価できるものになります。

流動資産(現金、預金など)、固定資産(不動産、機械設備など)、流動負債(短期借入金、買掛金など)、固定負債(長期借入金、社債など)、純資産(資本金、利益剰余金など)が記載されます。このテンプレートは無料でダウンロードできますので、利用してください。

経理プラス:ビジネス書式テンプレート ダウンロード【貸借対照表】

損益計算書のテンプレート

損益計算書は、企業の一定期間の経営成績を記載する表です。収益と費用を記載して利益がどれくらい出ているかを表示します。売上高、売上原価、販売費および一般管理費、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益などが記載されて、企業の最終的な利益を把握することができます。このテンプレートは無料でダウンロードできますので、利用してください。

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株主資本等変動計算書のテンプレート

株主資本等変動計算は、企業の純資産の変動を記載するものです。株主資本、評価、換算差額、新株予約権等が表示され、純資産の変動が表されます。このテンプレートは無料でダウンロードできますので利用してください。

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【種類別】決算報告書(決算書)の作成方法

会計ソフトを利用していると、ある程度は決算報告書が自動作成される機能がありますが、あらためて決算報告書の作成方法を確認していきましょう。

決算報告書は、日々の取引を1年間で集計したものです。そのため、毎日の取引を記帳していることが、正確な決算報告書の作成につながっていきます。

仕訳帳 → 総勘定元帳 → 決算整理前試算表 → 決算仕訳 → 決算報告書

会計ソフトでは、仕訳帳に入力することで、自動的に総勘定元帳にも反映されます。手作業で元帳に転記する必要がないため、人的ミスを防ぐことが可能です。

自社で決算報告書まで作成しているケースもありますが、決算仕訳では減価償却費の計算や振替なども発生するため、税理士に依頼して作成してもらうことがあるでしょう。

貸借対照表の作成方法

会計ソフトを使用せずに貸借対照表を作成する場合、手作業で試算表から各項目を転記する必要があります。以下は、その手順です。

1. 資産の転記

最初に、試算表から流動資産と固定資産を貸借対照表に転記します。流動資産には、現金、預金、売掛金、在庫などが含まれます。これらは試算表の該当項目をそのまま貸借対照表の「資産」の欄に書き写します。

次に、固定資産を転記します。不動産や機械設備など、長期的に使用する資産が該当します。これも試算表の金額を貸借対照表の固定資産欄に記載します。

2. 負債の転記

次に、負債を転記します。まずは流動負債から転記します。流動負債には、短期借入金、買掛金、未払費用などが含まれます。これらの金額を試算表から貸借対照表の流動負債欄に転記します。

その後、固定負債を転記します。長期借入金や社債など、返済期間が1年以上の負債が該当します。これらを固定負債欄に記載します。

3. 純資産の転記

転記作業の最後に、純資産項目を転記します。純資産には、資本金や利益剰余金が含まれます。試算表の該当項目から金額を転記し、貸借対照表の純資産欄に記載します。

4. バランスの確認

貸借対照表は、資産の合計額と負債・純資産の合計額が一致することが基本です。転記後、両者の合計額が一致するかを確認します。一致しない場合は、試算表の記載や転記の過程で誤りがないかを再確認してください。

5. 記載項目の確認

最後に、全ての項目が正確に記載されているかを確認します。特に、金額の桁や記載位置に誤りがないかを細かくチェックすることが重要です。

会計ソフトを使用しない場合でも、試算表から丁寧に項目を転記していくことで、貸借対照表を作成することができます。無料のテンプレートを活用すれば、さらに作業がスムーズに進むでしょう。

経理プラス:ビジネス書式テンプレート ダウンロード【貸借対照表】

損益計算書の作成方法

会計ソフトを使用せずに損益計算書を作成する場合、手作業で試算表から必要な項目を転記する必要があります。以下は、その手順です。

1. 売上高の転記

損益計算書の作成は、売上高の転記から始まります。試算表から売上高の項目を確認し、その金額を損益計算書の「売上高」欄に転記します。売上高は、企業が提供する商品やサービスから得た総収入を示します。

2. 売上原価の転記

次に、売上原価を転記します。売上原価は、商品やサービスを提供するために直接かかる費用を指します。期中に実施した商品や原材料の仕入高、在庫がある業種では決算日に棚卸を実施し期末(商品・原材料)棚卸高としてその残高を記載します。期首棚卸高(前期末に実施した棚卸高)、期中の仕入高、期末棚卸高の3つから当期の売上原価が計算されます。試算表の売上原価の項目を確認し、その金額を損益計算書の「売上原価」欄に記載します。

3.売上総利益の計算

売上高から売上原価を減じたものが通称「粗利」とも言われる売上総利益です。これを計算して記入します。

4. 販売費および一般管理費の転記

次に、販売費および一般管理費を損益計算書に転記します。これらの費用には、広告宣伝費や従業員の給与、オフィスの維持費用、水道光熱費や交通費などが含まれます。試算表から該当する金額を確認し、損益計算書の「販売費および一般管理費」欄に記載します。

5. 営業利益の計算と記載

営業利益は、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いた金額です。計算結果を損益計算書の「営業利益」欄に記載します。営業利益は、企業の主たる事業活動から得られる利益を示します。

6. 営業外収益・費用の転記

次に、営業外収益と営業外費用を転記します。営業外収益には、受取利息や社有地の賃貸料収入など、通常の営業によらない収益があたります。また、営業外費用には支払利息などが含まれます。試算表の該当項目を確認し、損益計算書の「営業外収益」および「営業外費用」欄に転記します。

7. 経常利益の計算と記載

経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた金額です。この金額を損益計算書の「経常利益」欄に記載します。経常利益は、企業の通常の業務活動全体から得られる利益を示します。

8. 特別利益・損失の転記

特別利益や損失には、固定資産の売却益や災害による損失など、一時的な要因による収益や費用が含まれます。試算表からこれらの項目を確認し、損益計算書の「特別利益」および「特別損失」欄に転記します。

9. 税引前当期純利益の計算と記載

税引前当期純利益は、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いた金額です。この金額を損益計算書の「税引前当期純利益」欄に記載します。

10. 法人税等の転記と当期純利益の計算

法人税、住民税および事業税に法人税等調整額を加減した金額を税引前当期純利益から差し引きます。試算表からこれらの金額を確認し、損益計算書の「法人税等」欄に記載します。最後に、残った金額を「当期純利益」として損益計算書に記載します。

この手順に従い、試算表から正確に項目を転記することで、損益計算書を作成することができます。無料のテンプレートを利用しながら作業を進めると、初心者でもスムーズに作成が可能です。

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キャッシュフロー計算書の作成方法

キャッシュフロー計算書は、企業の現金の流れを把握するための重要な財務諸表です。会計ソフトを使用せずに、貸借対照表と損益計算書を基に手作業で作成する場合は間接法を用います。ここでは、間接法による作成手順を解説します。

1. 準備する資料

まず、当期と前期の貸借対照表と損益計算書を用意します。これらの資料は、キャッシュフロー計算書を作成するための基本データとなります。

2. 営業活動によるキャッシュフローの作成(間接法)

間接法では、損益計算書の当期純利益を基に調整を行い、営業活動によるキャッシュフローを算出します。

  • 純利益の確認:損益計算書から税引前当期純利益を確認し、キャッシュフロー計算書の出発点とします。
  • 非現金項目の調整:減価償却費や引当金繰入額など、現金の流出入を伴わない項目を加減します。これらの情報は損益計算書や補足資料から得られます。
  • 運転資本の変動:貸借対照表から売掛金、在庫、買掛金などの運転資本の増減を確認し、キャッシュフローに反映します。運転資本の増加はキャッシュの減少を意味し、減少はキャッシュの増加を意味します。

3. 投資活動によるキャッシュフローの作成

次に、投資活動によるキャッシュフローを作成します。

  • 固定資産の購入および売却:貸借対照表から固定資産の増減を確認し、キャッシュの流出入を計算します。新たに購入した設備や売却した不動産などが該当します。
  • その他の投資活動:有価証券の購入や売却など、その他の投資活動に関するキャッシュフローを反映します。

4. 財務活動によるキャッシュフローの作成

最後に、財務活動によるキャッシュフローを作成します。

  • 借入金の増減:貸借対照表から短期借入金や長期借入金の増減を確認し、キャッシュの流入出を計算します。新たな借入や返済がこれに含まれます。
  • 株主資本の変動:株式の発行や配当金の支払いなど、株主資本の増減を確認します。

5. キャッシュフロー計算書の完成

営業活動、投資活動、財務活動の各キャッシュフローを合計し、期首の現金残高に加算して期末の現金残高を算出します。これにより、キャッシュフロー計算書が完成します。

6. 記載内容の確認

最後に、記載内容に誤りがないかを確認します。特に、貸借対照表や損益計算書との整合性が取れているか、現金の流れが正確に反映されているかをチェックします。

この手順に従い、間接法を用いて貸借対照表と損益計算書を基に正確にキャッシュフロー計算書を作成することができます。

株主資本等変動計算書の作成方法

株主資本等変動計算書は、企業の純資産の変動を詳細に記録する財務諸表であり、特に株主資本に関連する変動を把握するために重要です。会計ソフトを使用しない場合でも、手作業でこの計算書を作成することができます。以下は、その手順です。

1. 準備する資料

まず、当期と前期の貸借対照表と損益計算書を準備します。

2. 株主資本の構成要素の確認

株主資本等変動計算書は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、その他の包括利益累計額など、株主資本に関連する項目ごとに作成されます。これらの各項目について、期首の残高、期中の変動、期末の残高を記載します。

3. 期首残高の記載

まず、貸借対照表の前期末の純資産項目から、期首残高を転記します。資本金、資本剰余金、利益剰余金などの各項目について、前期末の数値をそのまま期首残高として記載します。

4. 期中の変動の記載

次に、期中の変動を記載します。これには、以下のような項目が含まれます。

  • 資本金の増減:新株発行などによる資本金の増加や、減資などによる減少。
  • 資本剰余金の変動:自己株式の取得や処分、株式交付などによる変動。
  • 利益剰余金の変動:当期純利益の計上や配当金の支払い、剰余金の処分など。
  • その他の包括利益の変動:外国通貨換算調整差額や評価換算差額などの変動。

これらの変動項目は、損益計算書や補足資料、企業の取引記録を基に手作業で集計し、記載します。

5. 期末残高の計算と記載

期首残高に期中の変動を加減し、各項目の期末残高を計算します。この期末残高が貸借対照表の期末純資産項目に対応することを確認し、計算書に記載します。

6. 記載内容の確認

最後に、株主資本等変動計算書の記載内容に誤りがないかを確認します。特に、貸借対照表との整合性が取れているか、各項目の期末残高が正確に計算されているかをチェックします。

個別注記表の作成方法

個別注記表は、財務諸表の補足資料として、企業の財務状況や経営成績に関する詳細な情報を記載する重要な書類です。会計ソフトを使用しない場合でも、手作業で個別注記表を作成することができます。以下は、その手順です。

1. 準備する資料

まず、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書など、主要な財務諸表を準備します。また、企業の会計方針や特定の取引に関する補足資料も参考にします。

2. 会計方針に関する注記の作成

個別注記表の作成は、企業の会計方針に関する注記から始めます。ここでは、減価償却の方法や資産の評価基準、収益認識の基準など、企業が採用している会計処理の基準や方法を記載します。これらの情報は、企業の会計マニュアルや過去の財務諸表から抽出します。

3. 貸借対照表に関する注記の作成

次に、貸借対照表に関する注記を作成します。ここでは、各資産や負債の内訳、主要な取引の内容、期末時点の評価方法などを詳述します。たとえば、流動資産や固定資産の内訳、借入金の返済スケジュールなどが含まれます。貸借対照表の各項目を詳しく解説する形で記載します。

4. 損益計算書に関する注記の作成

損益計算書に関する注記では、売上高の内訳、特定の費用や収益の詳細、例外的な損益の発生状況などを記載します。たとえば、売上高が特定の顧客や製品に集中している場合、その詳細を記載します。また、特別損益の内容や、法人税の計算方法についてもここで説明します。

5. キャッシュフロー計算書に関する注記の作成

キャッシュフロー計算書に関する注記では、現金の流入出に関する詳細を記載します。たとえば、営業活動、投資活動、財務活動ごとのキャッシュフローの内訳や、特定の取引によるキャッシュの影響を説明します。これにより、現金の流れがどのように企業の財務状況に影響を与えたかを詳述します。

6. その他の注記の作成

最後に、その他の財務諸表に関連する注記を作成します。ここには、連結財務諸表を作成している場合の子会社に関する情報や、関連当事者取引、リース契約など、財務諸表に直接記載されていないが、重要な情報を含めます。

7. 記載内容の確認と整合性のチェック

全ての注記を作成した後、記載内容に誤りがないか、各財務諸表との整合性が取れているかを確認します。特に、数字の一致や注記内容が財務諸表を補足する形になっているかを丁寧にチェックします。

決算報告書(決算書)の作成期限

決算報告書(決算書)の作成期限は、株主総会の開催および法人税に直結しています。通常、法人は事業年度の終了後2カ月以内に確定申告を行う義務があります。そのため、決算報告書はこの確定申告書を提出するまでに作成を完了しなければなりません。このほか、業界によってはそれぞれの自治体などに提出する期限が定められているので、その期限までに提出する必要があります。

具体的には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、上場企業の場合はキャッシュフロー計算書といった主要な決算報告書は、全てこの期限内に完成させる必要があります。

なお、特別なこと情がある場合には、申告期限の延長を申請することが可能です。特に株主総会は3カ月以内開催がルールとなっているので、期間内の1カ月延長の実施はそれほど珍しくありません。また、法人税の申告期限を1カ月延長する特例が存在し、災害に遭いやむを得ない場合など一定の条件を満たすことでこの延長が認められます。申告期限の延長を行う場合でも、決算報告書の作成は早めに準備を進め、期限内に余裕を持って提出できるよう計画することが重要です。

以上のように、各決算報告書の作成期限は、株主総会の開催時期や法人税の確定申告期限と密接に関係しており、適切に対応することが求められます。

まとめ

決算報告書(決算書)は、企業の財務状況や経営成績を明確に示すための重要な書類です。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表といった各種報告書は、それぞれ異なる側面から企業の状態を把握するために必要不可欠です。

さらに作成には期限があり、これを守ることが求められます。期限を守るためには、日々の取引を正確に記帳し、試算表を基に各決算報告書を適切に作成するようにしましょう。

決算報告書(決算書)に関するQ&A

決算報告書(決算書)の作成や提出に関して、経理担当者や企業経営者は多少なりとも疑問や不安があることでしょう。ここでは、決算報告書に関するよくある質問とその回答をまとめました。これらのQ&Aを通じて、決算報告書の基礎知識から実務上のポイントまで、重要な情報をわかりやすく解説します。

Q1. 決算報告書を作成しないとどうなる?

決算報告書は、本来は株主総会に必要な書類として会社法が求めています。加えて、法人税の確定申告時に必要な書類であるため、作成を怠ると申告ができず、無申告加算税や延滞税といったペナルティを課される可能性があります。無申告加算税は、本来納めるべき税額に対して加算される罰金で、さらに申告が遅れると、加算される税額も増加します。また、悪質と判断される場合には、重加算税が課されることもあります。このようなペナルティを避けるためにも、決算報告書は必ず期限内に作成し、適切に申告することが重要です。

Q2. 決算報告書の作成が遅れた場合はどうすれば良い?

やむを得ない事情で決算報告書の作成が遅れる場合、法人税の申告期限の延長を申請することができます。申請が認められれば、株主総会が3カ月以内であれば申告期限を1カ月延長することが可能です。また、事前に所定の手続きを行い、税務署の承認を得ることで延長が認められる場合があります延長が認められるのは、災害ややむを得ない事由がある場合など、限られたケースに限られるため、通常は決算報告書の作成を計画的に進め、期限内に提出することが求められます。

Q3. 決算報告書に保存の義務はある?

決算報告書には保存義務があり、法人税法に基づき、決算報告書を含む会計帳簿や財務諸表は原則として7年間保存しなければなりません。保存期間中は、税務調査などで過去の財務状況を確認するために必要とされる場合があります。また、電子帳簿保存法に基づいて、電子データで保存する場合もあります。適切に保存しておくことで、後のトラブルを避けることができますので、書面やデータの管理を徹底しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 宮川 真一

税理士 宮川 真一さま

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表 岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。 現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。 また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。 【保有資格】 税理士、CFP®

税理士法人みらいサクセスパートナーズ