知らないと損する監査対応の基本(前篇)

本稿では現在監査を受けている、もしくはこれから監査を受ける予定の会社において、最前線で監査対応が求められるであろう経理部責任者の方に向けて、知らないと損する監査対応の基本を前編・後編と2回に渡ってご説明したいと思います。
スムーズに監査を受け、監査対応コストを下げるためには、監査の目的を理解し、監査人と呼ばれる公認会計士や監査法人がどのようにその目的を達成しようとしているのかについての理解が欠かせません。
是非本稿で無駄な監査コストを発生させない監査対応の基本を身につけてください。

 

そもそも監査ってなんだ?

監査と一言に言っても、いくつかの種類があります。
一般的に単に監査と言う場合、監査人によって行われる公認会計士監査を指しますが、その他にも会社の内部機関である監査役による監査役監査、社内の監査部門などによって行われる内部監査などがあります。

監査役や監査部門によって行われる監査は、主として業務の適法性や効率性などをチェックするのに対し、外部監査である公認会計士監査は企業の財務情報の信頼性を保証することを目的として行われます。
さらに、本稿で取り扱う公認会計士監査は大きく財務諸表監査と内部統制監査に分けられます。
財務諸表監査では、財務諸表が会計基準に準拠しており、重要な誤りや偽りがないかどうかがチェックされます。

一方、内部統制監査では、経営者自身が内部統制が有効に機能しているかどうかを評価した報告書(内部統制報告書)の適正性がチェックされます。
本稿では公認会計士監査における財務諸表監査にフォーカスして上手な監査対応についてご説明いたします(そのため、以下において単に監査といった場合には、この財務諸表監査を指します)。

 

なんで、うちの会社は監査を受けるのか?

監査はどのような会社が受けても良いものですが、法律によって必ず監査を受けなければならない会社も定められています。
例えば、会社法では、会計監査人設置会社や委員会設置会社のほか、大会社(資本金の額が5億円以上または負債の額が200億円以上の株式会社)も監査を受けなければならないとされています。
金融商品取引法においても、証券取引所に株式を上場している会社や有価証券報告書・有価証券届出書を提出しようとしている会社は監査を受けなければなりません。多くの上場会社は会社法上の大会社の要件を満たしているため、その場合には金融商品取引法監査と会社法監査の2つの監査を受けることとなります。
また、上場準備中の会社も、証券取引所により金融商品取引法監査に準ずる監査を2年分の財務諸表について受けることが求められます。

 

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監査の目的がわかれば、対応が見えてくる

公認会計士が行う全ての監査に適用される監査基準では、

財務諸表監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。

とあります。

特に太字の部分に着目してもらいたいのですが、結局は「財務諸表の重要な点が適正に作成されているかどうかについて意見表明をする」というのが財務諸表監査の目的です。
最終的に監査結果として表明される意見には、無限定適正意見、限定付適正意見、不適正意見および意見付表明という4つのパターンがあります。
監査を受ける会社は、無限定適正意見をもらうことを目標にするわけですが、監査人(監査をする公認会計士や監査法人のことです)の判断基準は「財務諸表のすべての点が適正か否か」ではなく、「財務諸表のすべての重要な点が適正か否か」であることに注意してください。

すなわち、定量的・定性的に重要でない些末な点についてまで意見表明するわけではないということです。「定量的・定性的に」という言葉がわかりにくければ、「金額的・質的に」と言っても良いでしょう。
誤解を恐れず言えば、例えば未払費用の残高と取引先からの請求額が数万円一致しないということは、社内の管理体制という点では重要かもしれませんが、それが財務諸表全体から見て金額的にも僅少であるなら、監査上はそれが意見に影響を与えることはないと言えます(もちろん、その原因次第では、定性的な理由から監査意見に影響を与えることもありますが)。

 

監査対応のキモは監査人が何を確かめたいかを理解することにある

監査人が監査を行うに当たっては、財務諸表全体レベルでの評価も行いますが、監査の対応にあたる担当者にとって重要となるのは、財務諸表全体レベルより一段低い財務諸表の項目レベルにおいて、監査人が何を確かめようとしているのかを理解することです。
監査人は財務諸表の項目レベルでの評価のため、財務諸表を勘定科目などの構成要素に分解し、その中から定量的・定性的に重要な勘定科目を選定します。

 

最後に

いかがでしたでしょうか。
後編では、それぞれの勘定科目に設定する確かめるべき目標「監査要点」について説明し、監査人の上手な利用法についてもご紹介いたします。ぜひご覧ください。

 

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経費精算システム「楽楽精算」導入事例

● 著者

大野 修平

大野 修平

公認会計士・税理士 前職の有限責任監査法人トーマツでは銀行、証券会社、保険会社など金融機関向けの監査、デューデリジェンス、コンサルティング業務などに従事。 トーマツ退所後はOneWorld税理士法人にて「ビズバ!」(http://biz-ba.com/)というオウンドメディアの企画、編集を担う。また、会計や税金を身近に感じてもらえる様々なイベントを運営している。 無類の読書好きで、蔵書が3,000冊を超えないようコントロールすることに頭を悩ませる日々。

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