会計基準はどう変わる!?2021年度の「会計上の見積り開示」

会計基準はどう変わる!?2021年度の「会計上の見積り開示」

2018年11月、公益財団法人財務会計基準機構(FASF)内での諮問会議において、「見積りの不確実性の発生要因」にかかわる注記情報等について検討され、2020年3月31日に見積り開示会計基準が公表されました。

企業であれば、財務諸表の項目の金額を算出する上で、会計上の見積りを行う機会も多いでしょう。そこで今回は、会計上の見積りの概要について、表示方法の変更ポイント、開示例などについてご紹介していきます。

「会計上の見積り」とは?

会計上の見積りとは、将来的に不確実性と考えられる項目において見積りを行うことです。その定義として、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第4項(3)では、以下のように示されています。

″「会計上の見積り」とは、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合に
おいて、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出すること
をいう。″

(引用:企業会計基準委員会「企業会計基準第 24 号」

不確実性がある場合、考えられる結果にある程度の幅があることが予想されます。その予想幅の範囲において、さまざまな情報を総合的に判断し、見積りをするというものです。どの程度の可能性で見積るかは、企業が判断しなくてはなりません。

(参考:日本公認会計士協会「(一般の方向け)本部主催研修会「2021年3月期決算直前セミナー ~会計上の見積りの開示~(その1)」の動画配信を開始」

「会計上の見積り開示に関する会計基準」とは?

上述で触れた「会計上の見積り」に関する会計基準が、企業会計基準第31号として公表されています。この会計基準は、2021年3月期の期末から適用されます。

従来の会計上の見積りは、企業経営者の判断が大きく影響する傾向があり、会計上の見積りを算出する上で必要になる情報も明確な基準がなく、企業によりその内容がまちまちです。
そのため、財務諸表に計上される金額の不確実性の程度についても、統一されているわけではありません。

不確実性のまま財務諸表に計上された金額のみでは、どのような影響がある内容なのか、財務諸表を利用するものが判断するのは難しくなります。そこで、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目について、会計上の見積りを開示するということが設けられました。

関連記事:「必見!21年4月強制適用の収益認識基準の注意点と影響が大きい業界」も併せてご覧ください。

見積もりの不確実性はなぜ発生するのか

上述で触れた通り、会計上の見積りは将来的に考えられる結果の幅の中で行われることになります。入手した情報をもとにどの程度に算出するかは、経営者が判断しなければなりません。情報をどこからどの程度入手するかなど、明確な基準が定められているわけでもないため、見積りの不確実性が指摘されています。

たとえば、見積り手法の選択について決まりがないこと、どのようなデータを情報元とするか統一されていないこと、また、見積り手法が準備されていなかったり、データ類の情報が入手できなかったりする場合は、あくまで経営者の「仮定」としての見積りになります。このような点が、会計上の見積りにおいて不確実性を生んでしまう要因と考えられるわけです。

会計上の見積もり開示に関する会計基準の表示方法変更ポイント

会計基準の表示方法変更のポイントと、適用時期などについて確認していきましょう。

適用時期について

  • 原則適用期間は、2021年3月31日以降終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から
  • 早期適用としては、2020年3月31日以降終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から

変更点について

  • 開示は翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目
  • 翌年度の財務諸表の対象項目のうち、影響の金額的な大きさやリスクの発生可能性の大きさなどを総合的に勘案する
  • 注記すべき事項
    1. 項目
    2. 財務諸表上の金額
    3. 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に関するようなその他の情報
      (その他の情報とは「金額の算出方法」「算出に用いた主要な仮定」「財務諸表に与える影響」など)

新型コロナウイルス感染症の影響について

2020年以降は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も考慮する必要があるでしょう。見積り方法においては、影響を将来キャッシュフローに反映させる必要があります。仮定においては、売上、利益の減少などを考慮する必要があるでしょう。また、全体の影響については、収束時期が延びていったときの影響などを考慮しなくてはなりません。

「会計上の見積もり開示に関する会計基準」の開示例

ここからは、実際の企業の開示例をご紹介してきます。

国内大手の飲料メーカーでは「無形資産及びのれんの減損」の次のような開示がありました。

見積り方法は、「のれんおよび耐用年数を確定できない無形資産が配分された資金生成単位または資金生成単位グループの回収可能価額は使用価値に基づいて計算」「使用価値は見積
キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより評価」「見積キャッシュ・フローは、
中期計画および計画で示された期間後については継続価値を算定し市場の長期平均成長率を加味したキャッシュ・フローを使用」などと公開しています。

仮定は、「回収可能価額の見積りに使用された主な仮定は割引率と成長率であり、これらの仮定に基づく数値は、関連する業種の将来の趨勢に関する経営者の評価を反映し、外部情報および内部情報の両方から得られた過去のデータを基礎とする」などの内容で、下記のような税引前割引率、成長率を公開しています。

資金生成単位
または資金生成
単位グループ
前連結会計年度 2018年12月末当連結会計年度 2019年12月末
割引率成長率割引率成長率
飲料7.3%0.5%5.1%0.5%
健康食品12.2%0.5%9.8%0.5%

上記の企業の場合、見積り方法と仮定、仮定の内容の決定方法などについて説明されており、表でわかりやすく開示されています。

まとめ

今回は、会計上の見積り開示に関する会計基準について、その概要や表示方法のポイント、開示例などについてご紹介しました。判断する項目のヒントを参考にしながら、想定される影響をきちんと分析して注記事項などを確認し、わかりやすい財務諸表の作成に取り組んでみてはいかがでしょうか。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

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● 著者

渡部 彩子

渡部 彩子

自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門を経験。この経験を活かし、経理・総務・人事をテ
ーマとしたコンテンツ制作を幅広く執筆。