会計帳簿とは?主要簿と補助簿の種類、書き方のルール、作成手順

会計帳簿とは?主要簿と補助簿の種類、書き方のルール、作成手順

会計帳簿とは、貸借対照表や損益計算書を作成するために必要不可欠なものです。

会計帳簿には、企業が行う経済活動が取引として漏れなく記録される必要があります。会計帳簿の記録に基づいて、法人税、住民税のような税金も計算されるため、正確な記録が求められます。会計帳簿のなかには、会社法において作成が義務付けられているものもあるため、これらについては必ず対応しなければなりません。実際、会社法では、会計帳簿を少なくとも10年間保存することが義務付けられています。

本記事では、会計帳簿について知っておきたい基礎事項からよくある質問まで丁寧に解説していきます。本記事を読むことで、会計帳簿の必要性を理解し、法律で求められている適切な対応ができるようになります。

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目次

会計帳簿に関する基礎知識

会計帳簿は、貸借対照表や損益計算書といった決算書を作成するために欠かせないものです。

以下では、会計帳簿に関する基礎知識を学んでいきます。

会計帳簿とは?

会計帳簿とは企業の経済活動における全ての取引を記録するための重要な文書で、会計に関連するさまざまな帳簿を総称したものです。

日々の財務取引を詳細に記録する仕訳帳や、各勘定科目ごとの取引の合計と残高を記載する総勘定元帳、さらに現金出納帳や売掛金帳など、特定の財務活動に特化した帳簿が含まれます。

会計帳簿は、会社の資産や負債、収益や費用の変動を体系的に追跡し、その結果として貸借対照表や損益計算書などの決算書類を作成する基礎となるものです。

会計帳簿の記録は、企業が透明かつ責任ある経営を行うために不可欠であり、株式会社は会社法第432条により、仕訳帳と総勘定元帳の作成が義務付けられています。

参照:会社法第432条

会計帳簿の保存期間は?

会計帳簿の保存期間は企業が取引の記録を残し、必要に応じてこれらの記録に基づく責任を問うことができるよう、会社法を含む関連法規で厳格に定められています。具体的には決算期末日を基準にして、最低でも10年間は保存することが求められています。これは税務調査や法的紛争など、過去の取引に関する質問や調査が可能となるようにするための措置です。

参照:会社法第432条

会計帳簿を作成しないとどうなる?

万が一、会計帳簿を作成しなかった場合や、意図的に不正な記録を作成した場合、会社法第976条に基づき100万円以下の過料が科されるリスクがあります。

このような罰則は、企業が財務報告における透明性と正確性を保つことを奨励し、悪質な財務隠蔽や不正経理を抑止するために設けられています。

さらに、法人税の申告においても、適正な会計帳簿の提出は必須であり、その不備は追徴課税の対象となり得ます。

会計帳簿が正確に作成されていないと、税務当局から不正経理の疑いを持たれ、それによって企業の信頼性や社会的評価に重大な影響を及ぼす可能性があるのです。

したがって、会計帳簿は単なる財務記録以上のものであり、企業が法的義務を果たす上での基本であり、経営の健全性と透明性を保証するための根幹的なツールです。

適切な会計帳簿の維持は、投資家、債権者、その他のステークホルダーへの信頼を確立し、正確な情報に基づく意思決定を可能にするため、企業にとって絶対に欠かせない業務プロセスと言えるでしょう。

参照:会社法第976条

会計帳簿の主な種類

企業が経済活動を行うと、さまざまな取引が発生し、取引は会計帳簿に詳細に記録されます。

会計帳簿の種類は記載する内容に応じて大きく2つに分けられることが一般的です。

一つは、企業の財務状況を総合的に捉えるための「主要簿」、もう一つは特定の詳細な情報を深堀りする「補助簿」です。これらは各々細かく分類され、企業の会計プロセスにおいて独自の役割を担います。

ここでは、それぞれの主要簿と補助簿について、その種類と特徴に焦点を当ててご説明します。

主要簿

主要簿とは、発生するすべての取引を正確に記録するための基本的な帳簿です。すべての金銭の動きはここに記載され、企業の財務状況を表す試算表の作成に不可欠です。試算表は決算書の作成に用いられるため、主要簿の正確性は企業会計の基礎になるものと言えます。主要簿は、主に日記帳、仕訳帳、総勘定元帳の3種類に分けることが可能です。

日記帳

日記帳は、日々発生する取引を時系列に記載する帳簿で、実質的な取引記録の最初のステップとして機能します。正式な会計記録に移す前の、予備的なメモ書きや事前の取引記録に用いられることが多く、法的な作成義務はありません。そのため、形式や書き方に特別な決まりはなく、企業のニーズに応じて柔軟に管理されます。

仕訳帳

仕訳帳は、すべての取引を正規の簿記の原則に従って分類し、記録する帳簿です。取引が発生するごとに「借方」と「貸方」に振り分けられ、複式簿記の原則に基づいて記入されます。仕訳情報は、総勘定元帳への記録の基礎となり、取引の正確性を確保するために重要です。

総勘定元帳

総勘定元帳は、仕訳帳に記載された取引を各勘定科目ごとにまとめた帳簿です。企業のすべての財務活動を反映し、それぞれの勘定科目の残高を追跡します。総勘定元帳によって各勘定の発生額と残高が明らかになり、貸借対照表や損益計算書といった決算書の作成に直結します。

補助簿

補助簿は、主要簿に記録された情報の補足としての役割を持ち、特定の財務項目に関する詳細な記録を提供します。主要簿とは違い、会社法においては作成義務はないものの、補助簿を適切に管理することで、取引の詳細を明確にし、会計監査や経営戦略の立案の際に役立つ情報を提供できます。

得意先元帳(売掛帳)

得意先元帳、または売掛帳は、個々の得意先ごとの売上や回収状況を記録する帳簿です。得意先ごとの取引内容や取引金額、未回収の売掛金の残高などを詳細に追跡することで、顧客との取引関係を管理し、債権の状況を確認できます。

現金出納帳

現金出納帳は、企業の現金の入金と出金を記録する帳簿です。現金取引の日々の動きを詳細に追跡し、現金の流れを管理する上で重要な役割を果たします。現金の不正な流出を防ぐためにも、正確な現金出納帳の維持は不可欠です。

預金出納帳

預金出納帳は、企業の銀行口座を通じた入金と出金を記録する帳簿です。銀行取引の明細が正確に記録され、企業の流動性管理において重要な情報源となります。

仕入先元帳(買掛帳)

仕入先元帳、または買掛帳は、仕入先ごとの購入履歴と支払状況を管理する帳簿です。企業が支払うべき買掛金の残高を確認できるため、支払管理と財務計画に不可欠です。

固定資産台帳

固定資産台帳は、企業の所有する不動産や機械設備などの固定資産の情報を詳細に記録する帳簿です。資産の取得コスト(取得原価)や減価償却、残存価額などが管理され、財務状態の正確な把握に役立ちます。

受取手形記入帳

受取手形記入帳は、受け取った手形の金額、振出人、支払期日などを記録する帳簿です。手形取引による企業の債権状況を管理し、財務計画における重要な指標を提供します。

会計帳簿の書き方のルールと作成手順

会計帳簿の正確な記録は企業の財務健全性の証明であり、適切な税務申告を行うためにも必要不可欠なものです。

適切な会計帳簿の書き方を理解し、正確な手順で作成することは、適切に企業を運営していくうえで重要な手続きとなります。

以下では、会計帳簿を作成する際に遵守すべきルールと、効率的な作成手順について詳しく解説します。

会計帳簿の書き方のルール

会計帳簿を記載する際には、以下のルールを厳守する必要があります。これらは会計の世界で共通の規則とされており、手書きの帳簿にせよ、エクセルなどの表計算ソフトを使った帳簿にせよ、これらのルールを遵守することが求められます。

数字はアラビア数字を使用する

会計帳簿における数字の記載は、明確さを保つためにアラビア数字を用いることが一般的です。これは国際的な理解を促進し、誤解を避けるためにも重要です。漢数字は使用せず、「1」「2」といったアラビア数字で記載します。

略字は決められた表記で記載する

略字の使用は、帳簿を簡潔にし、迅速なデータの読み取りを可能にするために採用されます。例えば、「円」は「¥」または「\」として、「単価」は「@」といった形で記載します。これらは業界標準の略記法であり、一貫性を保つために使われます。

訂正する際は2本線を引き、訂正印を押印する

万が一記載ミスがあった場合は、その部分を修正ペンで塗りつぶすのではなく、明確に2本線で取り消し線を引き、その上で正しい情報を記入します。さらに、訂正印(または署名)を押印して訂正したことを明示します。このプロセスは、訂正の透明性を確保し、会計監査時に追跡可能な記録を残すために不可欠です。

会計帳簿の作成手順

会計帳簿の作成は、以下に示すステップに従って行うことで、正確かつ効率的な記録が可能になります。

Step1.売上を確認して売上帳に記載する

最初のステップとして、請求書や領収書など売上に関するすべての書類を確認します。これらの売上明細を基に、売上帳に正確に記載していきます。掛売上や手形売上など、特定の取引に関しては、得意先元帳や受取手形記入帳を参照しながら、それぞれの帳簿に適切に反映させます。

Step2.仕入れや経費などを出納帳に記載する

次に、仕入れや経費に関する取引を出納帳に記載します。これには、日々発生する現金の流れ、領収証に基づく支出、銀行取引などが含まれます。このステップは、現金の流れの精密な追跡と管理を助けることになります。

Step3.日々の取引内容を仕訳帳に記載する

すべての財務取引は仕訳帳にも記入されます。これは、取引が発生した日付、関連する勘定科目、金額、取引の説明など、詳細な情報を含みます。仕訳帳は、後の分析や報告の基盤となります。

Step4.仕訳帳から総勘定元帳へ転記する

仕訳帳に記載された取引は総勘定元帳に転記されます。総勘定元帳では、各勘定科目ごとに取引を整理し、貸借対照表を作成します。これにより、会社の財務状態をより明確に把握することができます。

Step5.決算に必要な会計帳簿を準備する

期末には損益計算書やバランスシートの作成に必要な情報を集め、会計帳簿を最終的に整理します。これには、固定資産台帳の更新、買掛金や売掛金の状況の確認、そして必要に応じて各帳簿の調整が含まれます。正確な決算作業は、適切に維持された会計帳簿から始まるのです。

会計帳簿の作成方法のメリット・デメリット比較

企業の経営状態を正確に把握し、適切に管理するためには会計帳簿の維持が欠かせません。その作成方法には手書き、表計算ソフト、会計ソフトの利用という複数の選択肢が存在します。それぞれの方法は特有の利点と欠点を有しており、どの手法を選択するかは、それぞれのビジネスの規模や複雑性などに大きく依存します。このセクションでは、これらの作成方法を比較し、それぞれのメリットとデメリットを検討していきます。

手書きで作成する方法の比較

手書きで会計帳簿を作成する方法は、デジタル化が進む現代でも基本的な会計教育のツールとして用いられています。

メリット

手書きでの作成は、簿記の基礎から学びたいという個人にとっては、会計のプロセスを深く理解する絶好の機会となります。また、帳簿の各項目の関連性を手作業でつなぐことにより、会計の流れを体系的に把握することができます。

デメリット

手書きには、確かな書き方の習得が必要であり、会計の基礎知識がなければ正確な帳簿の作成が難しくなります。加えて、手書きは他の方法に比べて時間がかかる傾向があり、会計ソフトのように自動で転記や集計を行う機能がないため、人的ミスによる書き間違いや計算間違い、そして計上内容の誤りが起きやすくなるリスクがあります。

表計算ソフトで作成する方法の比較

Excelなどの表計算ソフトを利用して会計帳簿を作成する方法は、その柔軟性から中小企業や個人事業主に採用されることがあります。

メリット

表計算ソフトを使用する最大の利点は、初期コストが低く設定でき、また既存のソフトウェアのスキルを生かして簡単に帳簿を作成できる点です。自分のニーズに合わせてシートをカスタマイズできるため、特定の業務に特化した帳簿を作ることができます。さらに、自動計算機能を駆使すれば、計算ミスを減らすことも可能です。

デメリット

表計算ソフトは会計専門のソフトウェアと異なり、集計や報告のための特化した機能は備わっていません。そのため、ユーザーは独自の計算式やフォーマットを作成する必要があります。また、データ入力は手動であるため、時間がかかる可能性があり、データのセキュリティやバックアップについても自己責任で対応する必要があります。

会計ソフトで作成する方法の比較

会計ソフトを利用して帳簿を作成する方法は、特に複雑な会計作業や多量の取引がある場合に適しています。

メリット

会計ソフトの最も大きな利点は、会計作業の自動化と効率化です。複雑な計算をソフトウェアが自動で行い、誤りのリスクを軽減します。また、多くのソフトウェアは税法の変更に応じてアップデートされるため、法令遵守も容易になります。バックアップやデータ保護機能も充実しているため、データの安全性も高まります。

デメリット

会計ソフトの導入にはしばしば高いコストがかかります。また、ソフトウェアの使い方を学ぶための時間や労力が必要であり、複雑な機能が初心者にとっては扱いにくいことがあります。さらに、会計ソフトは時に非常に複雑で、設定ミスが会計データに重大な影響を及ぼすこともあるため、慎重な操作が求められます。

会計帳簿は適切な財務管理の根幹

会計帳簿は、企業経営において、適切な財務管理の根幹を担うものです。

会計帳簿がなければ、会社の財務の状態を把握できなくなってしまいます。

たとえば、売掛帳を整備することで、各取引先に対して、どれくらいの金額の未回収の債権があるのかがわかりますし、買掛帳を整備することで、各取引に対して、どれくらいの金額の未払いの債務があるかを把握できるようになります。

未回収の債権があれば回収しなければなりませんし、未払いの債務があれば、資金を用意して支払いを済ませなければなりません。

このように、会計帳簿の整備は、会社の財務管理をするために欠かせないであると言えるでしょう。

会計帳簿を整備し運用するのは手間がかかるということであれば、会計ソフトの利用がおすすめです。手書きの会計帳簿と比較して、会計ソフトを通じて作成した会計帳簿であれば、入力ミスがない限り、適切な転記や試算表の作成を迅速に行うことが可能です。

企業規模が大きくなればなるほど、取引も複雑化する傾向にあるので、自社の取引規模に応じて、適切な方法で会計帳簿を整理するようにしましょう。

会計帳簿についてのQ&A

会計帳簿は、企業や個人事業主が経営状態を正確に把握し、税務申告の根拠となる重要な文書です。ここでは、会計帳簿の作成や管理に関してよくある質問とその回答をQ&A形式で提供します。これらの情報は、会計帳簿の基本的な理解を深め、正確な財務管理を行うための参考となるでしょう。

Q1.個人事業主にも会計帳簿は必要?

会計帳簿は、個人事業主にとっても非常に重要です。すべての事業者は税法に基づいて帳簿を記録する義務があり、これには個人事業主も含まれます。

Q2.会計帳簿閲覧請求とは?

会計帳簿閲覧請求は、特定の事業体に対してその会計帳簿の閲覧またはコピーを求めることができる権利です。これは、主に株式会社における株主の権利として知られており、株主は一定の条件の下で会社の会計帳簿や関連文書の閲覧を請求することができます。この目的は、透明性を確保し、株主が会社の財務状況を理解するためです。

Q3.会計帳簿と決算書(財務諸表)の違いは?

会計帳簿と決算書(財務諸表)は、会計情報を記録する文書である点では共通していますが、目的と内容には明確な違いがあります。会計帳簿は、日々の経済取引を記録するためのもので、取引の正確性と完全性を保つための詳細な記録です。一方で、決算書はその期間の財務状態を要約し、外部の利害関係者に報告する目的の文書であり、貸借対照表や損益計算書などから構成されます。

Q4.帳簿に記載する価格は消費税込みの価格にすべき?

会計帳簿に記載する価格は、一般に取引価格の実態を反映するべきですが、消費税の取り扱いは税務上の適用方法によって異なります。消費税を別途計上する方式を採用している場合は、税抜き価格で取引を記録し、消費税額は別の勘定科目に計上します。ただし、簡易課税制度を適用している場合などは、税込み価格で記録することが一般的です。したがって、記載する価格はその事業の消費税の計算方法に準じる必要があります。

Q5.帳簿の月締めの書き方に決まりはある?

帳簿の月締めに特定の形式はありませんが、一般的な会計原則に従い、その月に発生したすべての取引が正確に記録され、集計される必要があります。月の最終日には、すべての未決勘定を処理し、収益と費用を適切な会計期間に配分することで、正確な月次の財務状態を反映させることが重要です。また、月締めの際には、銀行の残高と帳簿上の現金残高を照合する銀行勘定調整も一般的に行われます。

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 宮川 真一

税理士 宮川 真一さま

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表 岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。 現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。 また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。 【保有資格】 税理士、CFP®

税理士法人みらいサクセスパートナーズ