法人税は経費にできる?経費として計上できる主な税金と費用のまとめ
法人は事業を行っていく中で、法人税をはじめとするさまざまな税金を支払う必要があります。経理業務において、法人税が経費になるのかどうかは重要です。なぜなら、経費計上や損金算入の可否は、経理処理や課税所得・納税額の計算に影響を及ぼすからです。また、正しい節税対策のためにも、経費にできるかどうかは大きな問題です。
実は、税金には必要経費にできるものとできないものがあります。ここでは、経費として計上できる主な税金と費用について詳しく解説します。
また、租税公課の詳細については以下の記事をご参照ください。
経理プラス:租税公課とは何?販管費科目との関係や経費計上について解説
法人税は経費になる?
法人税とは、法人の事業所得などに対して課される税金のことです。法人の基本的な税金ともいえるもので、いわば個人事業主の所得税と同じような考え方の税金です。
黒字となっている会社の多くは、法人税を支払う必要があります。赤字の会社であっても、法人地方税の均等割などの税金が発生します。ここでは、法人税やその他の税金が経費になるかどうかについて解説します。
法人の支払う税金には、経費になるものとならないものがある
法人が支払う税金には、経費になるものと経費にならないものがあります。さらに経営における会計上は経費であっても、企業が納める税金の額を計算するための「税務」のうえでは「損金」にならないケースもあるので注意が必要です。以上を念頭において、経費になるものと経費にならないものの特徴を以下で確認してみましょう。
経費になる税金
経費になる税金とは、おもに事業用資産の保有や取得に関わるものです。例えば、機械などの固定資産を保有している場合の固定資産税や、不動産を購入・取得した場合の不動産取得税などは経費にできます。
経費になる税金を支払った場合の勘定科目は、原則「租税公課」として処理します。租税公課は租税と公課を合わせた勘定科目で、租税は国や地方団体へ納める税金を、公課は租税以外に国や地方公共団体に納める手数料や会費などを指します。
経費にならない税金
経費にならない税金とは原則、損益計算上の税引前利益や課税所得をもとに支払われるものです。例えば、法人税、地方法人税、法人住民税(法人都道府県民税、法人市町村民税)などがあります。
また、罰則の性格をもつ税金も、経費にはできません。例えば、延滞税、延滞金、不納付加算税、過少申告加算税、過怠税、交通反則金などです。
その他、役員報酬や従業員の給与などから源泉徴収された源泉所得税も経費にできません。源泉所得税は役員や従業員の給与から天引きした所得税を前払いした税金のことで、預り金となります。
法人税が経費にならない理由
法人税が経費にならない理由は、法人税は法人の所得に対して課税される税金であるからです。法人税は利益から支払うように定められたもので、売上を得るためや事業を行うために必要な支出ではないため、経費にすることができません。
法人税が経費にならない理由として「利益処分説」と「所得波動説」の2つの説が挙げられます。
利益処分説とは、法人税は利益から支払われるものであり、利益の処分であって経費ではないという考え方のことです。
所得波動説とは、法人税を経費として認めると、その分税引き前の利益が減少し、再び法人税の計算をしなければならず、これが波動のように循環するので経費にふさわしくないという考え方です。いずれにしても、法人税は経費として認められません。
法人税の勘定科目は?
法人税の勘定科目は「法人税等」で仕訳をします。住民税なども含まれるため、法人税ではなく「法人税等」となっています。
厳密には法人税、法人住民税、法人事業税から成り立っているため「法人税、住民税及び事業税」という勘定科目で処理することも多いです。どちらの勘定科目で処理しても、問題ありません。
法人税は納付時ではなく、発生した事業年度(当期)の決算で計上する必要があります。そのため、会計上、法人税が発生した年度(当期)の決算時と翌年の納付時の2つの仕訳が必要です。
法人税が発生した年度(当期)の決算では、借方勘定科目に「法人税等」または「法人税、住民税及び事業税」を用い、貸方勘定科目に「未払法人税等」を用いる会計処理を行います。決算書の損益計算書では「売上総利益」からではなく、「税引前当期純利益」から差し引かれます。
納付時には、未払法人税等を支払った会計処理を行います。
【決算期】
決算にあたり、法人税等を計算したところ納付すべき金額は、100万円であった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 500,000 | 未払法人税等 | 500,000 |
【納付時】
上記税金を、現金で納付した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
未払法人税等 | 500,000 | 現金 | 500,000 |
法人が経費として計上できる主な税金
法人が支払う税金には、経費に計上できるものと経費に計上できないものがあります。そのため、経理担当者は、それぞれについて把握しておく必要があります。
ここでは、具体的にどのような税金が経費になるのか見ていきましょう。
法人が支払う税金で経費になるものは、大きく次の5つに分かれます。
申告した事業年度に損金算入できるもの
当該事業年度に経費(損金算入)にできる税金です。例えば、2023年度の申告(翌年度2024年度に申告書提出)であれば、2024年度に経費にできる税金です。例として、事業税、事業所税、酒税、印紙税が挙げられます。
賦課決定のあった事業年度に損金算入するもの
賦課決定とは、納税者が自ら税金を計算するのではなく、都道府県などが納める税金の金額を決定するものです。例として、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、自動車税、軽自動車税などが挙げられます。
事業者を経由して特別徴収されるもの
納税者本人ではなく、事業者に税金を支払い、事業者が税務署や地方自治体などに納める税金のことです。例として、軽油引取税、ゴルフ場利用税、入湯税などがあります。
消費税
消費税には、税込経理方式と税抜経理方式の2つの会計処理方法があります。
税込経理方式とは、売上や経費の金額を消費税込みの金額で計上する方法のことです。一方、税抜経理方式は、本体価格と消費税の金額を分けて計上し、売上や経費の金額を消費税抜きの金額で計上する方法のことです。
このうち、消費税を経費計上できるのは、税込経理方式で処理した場合です。
消費税法上は翌事業年度が原則であり、未払計上すれば当該事業年度への経費計上が認められます。
税金(租税)ではなく公課にあたるもの
例えば、商工会や商工会議所への会費や印鑑証明書の発行手数料などの公共サービスの手数料が挙げられます。
<経費に計上できる主な租税公課>
租税公課の種類 | 内容 |
---|---|
印紙税 | 契約書や領収書など特定の文書に課される税金で、印紙を貼り付けて納付する |
登録免許税 | 不動産や法人などの登記や登録をする際に課される税金 |
法人事業税 | 法人が事業を行う上で、利用している公的サービスなどに対して、その経費の一部を負担することを目的とした税金。個人事業主の場合は個人事業税が課される |
事業所税 | 一定規模以上の事業を行っている事業者に課される税金。事業所の床面積を対象とする資産割と、従業員の給与を対象とする従業者割がある |
固定資産税 | 固定資産を所有していることに対して課される税金 |
都市計画税 | 都市計画区域内にある土地や家屋に対して課される税金。都市計画税が課税されるかどうかは地域によって異なる |
不動産取得税 | 不動産を取得した場合に課される税金。課税対象が住宅の場合は、軽減措置が適用される |
自動車税、軽自動車税 | 所有している自動車や軽自動車に課される税金 |
軽油引取税 | 地方の道路を整備する費用をまかなうために、軽油の取引に対して課される税金 |
ゴルフ場利用税 | ゴルフ場の利用者に対して課される税金 |
消費税 | 商品の販売やサービスの提供などに対して課される税金。国に対する消費税と地方公共団体に対する地方消費税の2つを合わせて消費税等とよぶ |
法人の経費として認められる費用・認められない費用のまとめ
ここまでは、税金について経費として認められるかどうかについて見てきましたが、費用においても、経費として認められるものと認められないものがあります。
一般的に、事業を行うために必要で妥当な支出は、事業に関連する費用として経費に認められます。一方で、事業に関係ない支出やペナルティに関する支出は経費として認められません。法人の経費として認められる費用・認められない費用には、次のようなものがあります。
<法人の経費として認められる費用・認められない費用>
経費にできる主な費用 | 経費にできない主な費用 | |
---|---|---|
仕入原価・消耗品費 | 法人税 | |
人件費 | 住民税 | |
通信費 | 罰金 | |
地代・家賃 | 延滞金 | |
水道光熱費 | 未使用の事務用品・余剰在庫 | |
修繕費 | 一定の役員報酬や役員賞与 | |
広告宣伝費 | ||
旅費交通費 | ||
保険料 | ||
福利厚生費 | ||
減価償却費 |
法人の経費になる支出は、一般的に事業を行うために必要で妥当な支出です。罰金、私的な支出などは経費にはなりませんが、そのほかの事業に関係する支出は、基本的に経費になります。経費になる支出は、水道光熱費や保険料、福利厚生費などの経費の勘定科目で経理処理します。
また税務上、法人税額の計算において、損金に算入できないものもあります。例えば、役員賞与や固定資産の減価償却費で限度額を超えている部分などは原則、損金不算入になります。
経理プラス:経費にならないものとなるものの違いとは?具体的な事例を紹介
法人税と経費の関係性を正しく理解しましょう
法人の支払う支出には、経費になるものとならないものがあります。基本的には、事業に関する支出は経費になりますが、法人税など法人が支払う税金には、経費になるものもならないものもあります。
経費にならない支出を経費にしてしまうと、後に税務署の税務調査で指摘を受けることになります。経費として計上可能かどうかをしっかり理解し、記帳業務を行いましょう。
法人税と経費についてのQ&A
法人税と経費についてのよくある質問をQ&Aでご紹介します。
Q1.法人税と租税公課の違いを教えてください
法人税は、法人が利益に対して支払う税金のことで、経費にはできません。一方、租税公課は法人や個人が国や地方自治体に支払う税金やサービスなどの料金の総称で、経費にすることができます。
法人税も租税公課に含まれますが、会計上は「租税公課」ではなく「法人税等」などの勘定科目で処理します。
Q2.法人税の申告期限はいつですか?
法人税の申告期限は、原則、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。申告期限が土日や祝日の場合は、その翌日が申告期限になります。法人税の納付期限も、申告期限と同じです。
Q3.法人税の計算方法は?
法人税は、次の計算式で求めます。
法人税の納税額=課税所得 × 税率 - 税額控除額
法人税の計算において、重要となるのが会計と税務で考え方に違いがあることです。会計上は収益にならなくても、税務上では収益になるものや、逆に会計上は収益になるが、税務上では収益にならないものがあります。経費も同様です。
課税所得とは、収益から費用を差し引いた税引前当期純利益に、税務上の益金や損金を調整した後の所得です。課税所得に法人税率を乗じ、税額控除額があればそれを差し引いて、納める法人税額を求めます。
法人税の税率は、会社の規模や組織形態などで異なります。
参考:国税庁 法人税の税率
Q4.法人が計上できる経費の種類はどのようなものがありますか?
法人の経費になる支出は、一般的に事業を行うために必要で妥当な支出です。税金や罰金、私的な支出などは経費にはなりませんが、そのほかの事業に関係する支出は、基本的に経費になります。経費になる支出として、通信費や水道光熱費、地代家賃や保険料、福利厚生費などがあります。
Q5法人が経費を計上する際の注意点は?
会計上は経費になるものでも、税法上は損金にできないものもあります。税法上損金にできないものを把握しておかなければ、申告時期に思った以上の法人税を納めることになりかねないため、注意しましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。