固定資産税はどうやって計算する?企業の軽減措置の対象を解説

固定資産税はどうやって計算する?企業の軽減措置の対象を解説

土地や家屋、機械装置などの有形固定資産を所有していると、毎年かかるのが固定資産税です。固定資産税は固定資産評価額に税率をかけて計算しますが、評価額の下限は取得額の5%までといった独自のルールがあります。ここでは、固定資産税の課税主体や課税根拠といった基本的な知識から、納付するときの注意点など経理担当者に役に立つ情報を解説します。

固定資産税とは

固定資産税とは、毎年1月1日に保有する固定資産の所有者に対して、その資産の所在する市町村(東京都23区内は東京都)が課税する地方税のことです。課税の対象となる固定資産は、土地や建物、構築物、機械装置、工具器具備品などが該当します。これらの有形固定資産への課税を総称して固定資産税と言いますが、実務上は土地と建物への課税を固定資産税、それ以外の償却資産に対する課税を償却資産税と区分します。

固定資産固定資産税の種類
土地工場・事務所・社宅等の敷地、運動場、農園など固定資産税
建物工場、営業所、倉庫など
償却資産機械装置、工具器具備品など償却資産税

課税されるそれぞれの対象の合計が、土地30万円、建物20万円、償却資産150万円未満であれば課税されません。

ところで、なぜ固定資産税の課税主体は市町村(東京都23区内は東京都)なのでしょうか?理由の1つが、固定資産の所有は「市町村(東京都23区内は東京都)が提供する行政サービスとの間に、何らかの利益を受けている」という受益に応じた負担を求めるといった考え方からです。

固定資産税評価額はどのように決まるのか

固定資産税は、それぞれの課税標準額(固定資産税評価額、資産価値)に1.4%の税率を乗じて計算します。土地と建物の課税標準は、総務大臣が定める「固定資産評価基準」による評価額をベースに各市町村(東京都23区内は東京都)が算出。土地の場合、地価公示価格等の7割を目途に評価額が計算されます。建物の評価は再建築価格を基準とし、経過年数による価値の減少を加味して計算。そして建物には、電気設備や給排水設備、冷暖房設備といった建物付属設備も含めて評価されます。土地や建物は時価によって変動するため、3年ごとに見直される仕組みです。

機械装置などの償却資産については、所有者からの申告に基づいて、各資産の取得時期、取得価額、耐用年数により償却計算を行って算出します。法人税法上、中小企業者に認められる30万円未満の少額減価償却資産についても課税対象です。一方で、ソフトウエアや特許権といった無形固定資産、繰延資産、一括償却資産などは対象外となります。

固定資産税の計算方法

固定資産税の計算方法は以下の通りです。

固定資産税の金額=固定資産評価額(課税標準額)×標準税率1.4%

土地、建物は上述の通り地価公示価格や再取得価額などを基準に計算されます。償却資産の固定資産評価額計算は、申告された取得時期や取得価額、耐用年数から定率法によって各資産の評価額を計算します。

  • 前年中に取得した償却資産の評価額
    取得価額×(1-耐用年数に応ずる減価率/2)
  • 前年前に取得した償却資産の評価額
    前年度の評価額×(1-耐用年数に応ずる減価率)

前年中に取得した資産は、取得月にかかわらず半年分を償却して評価します。また、評価額の下限は、取得価額の5%までと定められています。このように、減価償却の計算について会計や法人税法とは異なる点がありますので注意が必要です。

企業の固定資産税の負担を軽減する措置

固定資産税は、さまざまな理由から非課税や減免の措置が設けられています。例えば、学校法人が設置する保育や教育施設、社会福祉法人の保護施設、障がい者支援施設などは、その目的から課税することが適当ではないとして非課税としています。

また、公害防止設備や震災などの災害にあった場合は減免の対象となることがあります。最近では、コロナウイルス感染症の影響により事業収入が減少している中小企業者へ、特例減免措置といったものがありました。気になるケースがあれば、所在地の市町村(東京都23区内は東京都)の窓口で確認すると良いでしょう。

経理プラス: 固定資産税はいくら?地方税の仕組みと一緒に解説

納付するときの注意点

固定資産税の納付書は、毎年4月上旬に送付されます。納付書は複数枚が切り取りできるようになっていますが、1枚は1年分を一括で支払う形式です。その他に第1期から第4期までの4分割した納付書があり、納付期限は第1期が4月末、第2期が7月末、第3期が12月末、第4期が翌年2月末となっています。一括払いでもかまいませんし、分割のどちらを選択してもかまいません。支払いは金融機関、郵便局、コンビニエンスストアで行うことができ、口座振替も可能です。

注意点としては、納付をうっかり忘れてしまうと延滞金が発生してしまうことです。現時点での延滞金は、納付期限翌日から1か月の期間は年率2.4%、1か月経過後は8.7%となります。延滞金の年率は年度によって変動します。

固定資産税は法律で定められた税金ですので、支払いを行う義務があります。延滞が続くと督促状が送付され、最悪は預金などが差し押さえられる場合があるので注意してください。納付期限が過ぎた納付書でも支払いが可能な場合が多いようですが、期限を過ぎた時はすみやかに市町村(東京都23区内は東京都)の窓口へ相談しましょう。

納付期限を忘れてしまわないよう、マニュアルや年間スケジュールに組み込んでおくと良いでしょう。市町村(東京都23区内は東京都)の広報などでも記載されることが多いので注意して見てみてください。

まとめ

固定資産税とその評価額の決め方を中心に解説しました。固定資産税は、その時々によってさまざまな軽減措置や特例が設けられることがあります。適用を受けるには基本的に申請が必要です。市町村(東京都23区内は東京都)のホームページや広報、市町村(東京都23区内は東京都)の資産税課や税務課に問い合わせるなどして、制度を有効に活用しましょう。

固定資産税の納付は一括または4回に分割して支払うことができますが、キャッシュの有効活用の点から4期に分けて支払う企業も多いでしょう。納付期限を過ぎると延滞税が発生しますので、忘れないような業務設計を構築してください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。