費用収益用対応の原則とは?例外はある?

費用収益用対応の原則とは?例外はある?

企業会計原則とは?

会社が自社の会計処理を行うにあたっては、公正な会計慣行を斟酌しなければならない、とされています。これは会社法や金融商品取引法といった法律でも定められています。公正な会計慣行によらず、会社が独自の考え方で会計処理をしてしまうと会社間で処理が統一されず、利害関係者が混乱してしまうためです。この公正な会計慣行を構成する会計ルールの一つが企業会計原則です。

企業会計原則とは、企業会計制度対策調査会が1949年に公表した会計ルールです。その後、改訂は行われていますが、企業会計における大原則、いわば普遍的なルールとして設けられています。この企業会計原則は、一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則、注解から構成されています。公正な会計慣行を構成する会計ルールにはこの企業会計原則の他にも、様々な会計基準が設けられています。

費用収益対応の原則とは何か?

企業会計原則の損益計算書原則の一つに費用収益対応の原則というものがあります。

費用収益対応の原則
『費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。』(企業会計原則より引用)

これは、たとえば、売上高と売上原価のように、企業の経営活動の成果と成果を得るための努力が対応関係のあるものについては、その対応させて損益計算書に計上しなければならないということを定めています。また、表示上の区分も対応させておかなければなりません。

費用収益対応の原則はなぜ必要なの?

たとえば、小売業の場合、商品の仕入代金は、売上という成果を得るために生じたものです。そのため、売上という収益が計上されたときに仕入代金を費用化することで、損益計算書において費用と収益が対応表示されることになります。
もし費用と収益が対応表示されていないとすると、ある期においては、先行して仕入(費用)が計上され、その後の期において売上(収益)が計上されることとなります。これでは、成果と成果を得るための努力が分かれて計上されていることとなり、会社の経営成績を適正に表示しているとは言い難いものとなってしまいます。会社の経営成績を適正に示し、利害関係者が正しい判断できるようにするためにも費用収益対応の原則は必須の原則であると言えます。

費用収益対応の原則に例外はある?

費用収益対応の原則は、会社の経営成績を正しく示し、利害関係者が正しい判断をするための必須の原則ではありますが、その例外となる場面もあります。それは、重要性が乏しいときです。企業会計原則の中に重要性の原則というものがあります。

重要性の原則
『企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。』(企業会計原則より引用)

これは重要性の乏しいものについては、原則的な会計処理によらず他の方法によることを容認しています。たとえば、次のようなケースで重要性の原則により、費用収益対応の原則の例外的な処理を行うことが考えられます。

貯蔵品や消耗品について

貯蔵品や消耗品は、本来であれば、費消した期に費用化することにより、収益との対応が図られるものです。ただし、重要性がない場合は、費消した期ではなく、購入した期に費用化することが認められます。この場合、収益との対応が図られないこととなりますので、費用収益対応の原則の例外となります。

前払費用、未払費用などの経過勘定項目について

前払費用や未払費用などとなるようなものについても重要性がない場合は、経過勘定項目として処理しないことが認められています。たとえば、利息なども、本来であれば日割計算を行い、経過勘定項目として処理するのが収益や費用との対応関係、期間帰属の観点から正しい処理となりますが、日割計算をしても金額的には影響が少なくなるようなケースも多くあります。そのようなときまで、厳密な処理を行うことは求められていません。

会計上、費用収益対応の原則の例外となるものは、原則として重要性が乏しい場合に限られます。一方、税務上も費用収益対応の原則の例外となるものとして「短期前払費用の特例」があります。これは契約等に基づいて継続的に役務の提供を受けるために支出したものについて、本来は役務の提供に応じた費用化が求められますが、例外として支出後一年以内に費用化されるものについては、支出時に費用処理(損金算入)を容認するというものです。
これは税務上の費用収益対応の原則の例外と言えるでしょう。

まとめ

売上と売上原価がバラバラの期に計上されているよう損益計算書は、もはや使い物にはなりません。そういう意味では、企業会計原則の中でも、この費用収益対応の原則は特に大事な原則と言えます。しかし、企業会計原則はその他にも大切な原則がたくさんありますので、経理に携わる方はその他の企業会計原則についてもしっかりと理解しておきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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