企業版ふるさと納税の4つのメリットとは? 計算方法と改正内容を紹介

企業版ふるさと納税の4つのメリットとは? 計算方法と改正内容を紹介

「ふるさと納税」は2008年に始まった制度で、個人が指定する自治体に「寄附」という形で納税し、自治体を支援するものです。寄附金のお礼として、自治体の特産物などが贈られるなど寄附者にもメリットがあり、今ではすっかり定着しています。ふるさと納税は個人を対象としているイメージがありますが、実は「企業版ふるさと納税」も制度として実施されており、節税対策のひとつとして注目されているのです。
今回は、企業版ふるさと納税の概要やメリットなどについてご紹介していきます。

企業版ふるさと納税のあらまし

企業版ふるさと納税は、正式名称を「地方創生応援税制」といいます。地方創生のために、企業としても支援できるというものですが、企業版ふるさと納税は、個人を対象とするふるさと納税とは、少し仕組みが違います。

企業の場合は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対し寄附をしたときに、法人税などから税額控除が受けられます。また、「人材派遣型」として、地方公共団体に人材を派遣し専門的なノウハウを提供できることは、企業型ふるさと納税の特徴のひとつです。

企業版ふるさと納税の仕組みについて

では、具体的に企業版ふるさと納税はどのような仕組みとなっているのでしょうか。自治体などへの支援から税額控除までのポイントを解説します。

地方創生事業への支援

地方公共団体が人口減少克服などのために行う地方創生事業に対し、寄附を行ったり、人材を派遣したりすることで支援します。

寄附額は税額控除分が上乗せ

企業の通常の寄附額に対する損金算入(国税+地方税)は約3割ですが、令和2年度からは税額控除分がさらに拡充され、税額控除(法人住民税+法人税)が最大4割上乗せされます。また、法人事業税は2割上乗せになります。そのため、これらを合計すると約9割となり、企業負担は約1割となる計算です。

寄附額の下限は10万円から

寄附額の下限は10万円からと、企業の寄附額としては低めに設定されています。そのため、中小企業でも活用しやすく、堅実に税額控除の恩恵を受けることができます。

寄附を行った企業への経済的な見返りは禁止

寄附をした企業が経済的な見返りを受け取ることは禁止されています。個人のふるさと納税とは異なる点です。

本社が所在する地方公共団体への寄付は対象外

主たる事業所または事務所など、いわゆる本社と位置付けられる事業所がある地方公共団体への寄付は対象になりません。

寄附額は事業費の範囲内

多額の寄付をしたい場合であっても、寄附額の上限は事業費の範囲内とされています。節税目的として、必要以上の寄付はできない仕組みです。

経理プラス:企業版ふるさと納税の概要と活用方法

企業版ふるさと納税の4つのメリットとは

個人のような返礼品は設けられていませんが、企業版ふるさと納税では次のようなメリットが考えられます。

1つ目:企業のイメージアップ(CSR活動)が期待できる

地方創生事業に寄付をすることで、企業のイメージアップにつながります。事業を支援することは、社会貢献の活動に積極的である印象を持たれるでしょう。企業にとってはPRできる場として、大きな広告活動にもなる可能性もあります。また、企業のイメージアップは、優秀な人材確保にも有効な手段といえるでしょう。

2つ目:人材派遣型で地方貢献やパイプも持つことができる

人材派遣型の寄附活動では、人材育成をしながら地方に貢献し、事業を通して地方とのパイプを持つことにもつながり、将来のパートナーシップ構築にも役立ちます。

3つ目:新事業への展開

企業版ふるさと納税は、企業の活躍の場が広がることにもなります。新たな環境の中でまったく新しいニーズが生まれるかもしれません。新事業展開など後のビジネスチャンスとなる可能性もあります。

4つ目:寄附額が税額控除の対象になる

従来の寄附額の損金算入に税額控除が上乗せされ、実質の企業負担は約1割になります。単に寄附するものとは仕組みが違い、節税効果が期待できます。10万円から寄附が可能であるため参加しやすいという点も、メリットのひとつとなるでしょう。

参考:内閣府地方創生推進事務局 企業版ふるさと納税ポータルサイト

まとめ

今回は、企業版ふるさと納税について、その概要や仕組み、寄附をすることのメリットなどについてご紹介しました。個人のふるさと納税とは、活用方法も寄附額の相場も異なりますが、社会貢献としてのイメージアップを図りながら節税効果も期待できる制度です。

また、地方への新規事業などを模索している企業にとっては、人材派遣などを通してつながりを活かすこともできるかもしれません。税額控除は以前より拡充され、より活用しやすい内容になっています。将来的な販路拡充も視野に入れながら、企業版ふるさと納税をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

経理プラス:寄附金で法人税が安くなる?寄附金による損金算入と税額控除

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

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大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。