営業外費用と特別損失 違いと適切な処理を確認しよう

営業外費用と特別損失 違いと適切な処理を確認しよう

経理をしていると、様々な費用科目が出てきます。今回は費用の分類について確認するとともに、その中でも「営業外費用」と「特別損失」についてみていきましょう。

損益計算書の区分を確認する

企業の期間損益を表示する損益計算書において、各費用はその種類に応じて次の区分で表示されます。

  • 売上原価:
     売上に直結する費用。商品の仕入や製造原価、建設業における賃金が該当
  • 販売費及び一般管理費:
     営業費用や事務経費、事務所家賃など、通常営業に必要な様々な費用が該当
  • 営業外費用:
     借入金に対する利息や手形の売却損など、主に金融取引に関する費用や株式の売買、繰延資産の償却に関する費用が該当
  • 特別損失:
     通常の企業活動の中では発生しないような特別な損失に関する費用が該当

まずはこの大枠について把握しておくことが必要です。
今回の主題である営業外費用と特別損失の違いに関していえば「経常的に発生するか否か?」という点が挙げられます。営業外費用で計上される支払利息や売上割引といった項目は、事業を継続していれば毎年のように計上される費用です。

その一方で、特別損失というのは通常では発生しないようなものです。たとえば「不動産をはじめとした固定資産の売却や除却により生じた損失」「子会社など関係会社の株式を売買したことで損失が発生」「火災により建物が燃えた」といった滅多に発生しない会計取引が該当します。

営業外収益と営業外費用までを集計して出された利益を経常利益(けいじょうりえき)と呼び、その企業の地力を示す利益として用いられています。一方、特別利益や特別損失にはその企業に関する特記事項が掲載されていると考えることもできるため、その内容に関する説明が十分にできていない場合、企業の信用力に関わる事態となります。

営業外費用の種類

営業外費用には、次のようなものが該当します。

支払利息、手形売却損、社債利息、売上割引など利息全般

金融機関への支払利息や、受取手形を期限より前に売却したときの売却損、発行した社債に関する利息などが該当します。売上割引に関しては少し分かりづらいですが、これは「期日よりも前に売上を入金してくれたことに対する利息相当の返金」と考えることができるため、利息と同じようなものとして営業外費用に該当します。

売買目的有価証券の売買損失

有価証券(株式など)に関しては、その保有目的によって表示区分が異なります。株式市場で流通している上場株式の場合、その多くは売買目的で保有しています。そのような株式の売買で生じた損失については、本業から生じたものではないものとして営業外費用に表示されます。
先ほど特別損失の項目でも少し紹介しましたが、子会社株式など特別な関係にある取引先の株式売買で損失が出たときは、特別損失に計上されます。

繰延資産の償却

繰延資産というのは、もともとは費用であったものが、税務上の要請や会計上の処理によって生じる資産です。繰延資産の詳細は本稿では省略をしますが、これらの償却(費用化)については営業外費用として処理をします。

その他、寄付金や雑損失と呼ばれる項目も営業外費用として処理されることがあります。

原因によって表示区分が変わるものもある

実は発生の原因によって掲載箇所が変わるものもあります。その典型例が貸倒損失です。

元となった債権が売掛金や受取手形の場合

元となった債権は本業から生じたものです。従って、その貸倒れにより生じた損失についても、本業に関わるものとして処理すべきです。この場合には販売費及び一般管理費として処理することになります。

元となった債権が本業と関係のない資産の場合

本業とは直接関係しない資産(貸付金など)が回収不能になったことにより貸倒れとなったときには、営業外費用として処理をします。

金額が臨時かつ巨額である場合

通常では考えられないような規模での貸倒れが生じた場合には、特別損失として処理をすることがあります。

本業に関係するか否かにより販売費及び一般管理費なのか営業外費用か区別され、経常的なのか臨時的なものなのかによって営業外費用なのか特別損失なのか判別される、という基本ルールをしっかりと覚えておくことが大切です。

いずれにしても費用であるため、税金の計算だけを考えれば表示区分がどこに該当しても関係はありません。しかし、金融機関の与信調査においては営業利益(本業からの利益)が用いられることもあります。その場合、本来であれば営業外費用として計上されているべき費用が誤って販売費及び一般管理費で処理されてしまっていると、それだけ与信力が低く算定されることとなります。このような違いは営業外費用と特別損失においてもありますので、やはり表示区分はしっかりと対応することが大切です。

まとめ

費用はその種類に応じて売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用および特別損失に分類されます。営業外費用には経常的に発生する金融取引による利息や株式売買による損失などが含まれ、特別損失には臨時的なものが該当します。貸倒損失のような項目は、その発生原因によって表示区分が変わってくるので注意が必要です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所