課税事業者に必要な届出書とは?消費税の納税に必須の手続きを解説

課税事業者に必要な届出書とは?消費税の納税に必須の手続きを解説

消費税の課税事業者とは消費税を納める義務がある事業者を指します。課税事業者になった場合、「消費税課税事業者届出書」を税務署に提出します。課税売上高が1,000万円以下の事業者の場合は納税義務を負うことはありません。一方でインボイス制度の導入により、免税事業者が課税事業者になるケースもあるでしょう。
今回は、「消費税課税事業者届出書」の提出時の注意点や手続き方法を紹介します。

課税事業者に必要な消費税届出書類を提出する際の注意点

消費税の課税事業者になる場合、前述の通り消費税届出書類を提出する必要があります。提出に際して3点注意をしましょう。

1.消費税の届け出に際しての必須検討事項を忘れず、書類の出し漏れをしない

消費税の届出書類は、会社の状況によって異なります。
状況によって提出すべき書類を知り、消費税の届出に際しての検討事項を知っておくことで、書類を出し漏らすという事態を防ぐことができます

2.適切なシミュレーションを行うこと

消費税の計算方法には例外が設けられていますが、1度選ぶと2年間は変えられません。適切に決定するために、先まで見通した精度の高い利益予想が必要となります。

3.提出期限に遅れないこと

決算日までの翌期の検討を完了させ、適用を受ける期の開始日の前日までに提出しなければいけません。

今回は、消費税の十数個の届出のうち、絶対に提出検討をしなければいけない届出書類を2つ、知っておいた方が良い届出書類についても2つお伝えします。

国税庁HP:消費税の各種届出書

課税事業者のなり方と消費税の納め方

消費税の課税事業者になる場合、絶対に検討しておきたいことがあります。1つ目は課税事業者になることでどのようなメリットがあるのか、2つ目は消費税の計算方法です。それぞれ見ていきましょう。

消費税課税事業者選択届出書とは

消費税課税事業者選択届出書とは免税事業者が課税事業者になるための書類です。消費税のかかる売上が1,000万円を超えるまでは消費税を納めなくても良いという優遇措置があることから、「どうしてわざわざ消費税を納める事業者を選ぶのか」という疑問が出るかもしれません。
その答えは、「仕入消費税>売上消費税、ならば、還付を受けられる」というルールがあるからです。

消費税の課税事業者を選択するかどうかは、「消費税を計算する精度」よりも「利益を予測する精度」が重要なので、先を見通した慎重な検討を行ってください。

課税事業者への変更を検討すべき事業者

消費税の納税義務がない事業者のうち、下記に該当する場合は、課税事業者を選択することで還付を受けられる可能性がありますので必ず検討しましょう。

  • 大きな設備投資を予定している場合(仕入消費税が大きい)
  • 輸出売上の割合が高い場合(売上消費税が小さい)

課税が適用される期間

消費税が課税される事業者を選択した場合には、2年間は継続して課税事業者が選択されることとなります。
1年目に還付を受けても、2年目は消費税を免除してもらうということはできません。

提出期限

・設立1期目
 1期目が「終わるまで」に提出
・2期目以降
 その期が「始まるまで」に提出

消費税簡易課税制度選択届出書とは

消費税簡易課税制度選択届出書とは、簡易課税制度を選択する際に提出する書類です。簡易課税制度とは、事業の種類によって消費税の売上に対して一定割合の仕入れがあったものと「みなして」、概算で消費税の計算を行うものです。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合に適用することができます。消費税を計算するための事務負担が減るなどのメリットがあります。

簡易課税制度を検討すべき事業者

売上消費税に対する仕入消費税の割合が低い事業者は必ず検討しましょう。

  • 「消費税のかかる」仕入や販管費が「低い」場合
  • 「消費税のかからない」人件費の割合が「高い」場合

簡易課税制度が適用される期間

簡易課税を選択した場合には、2年間は継続して簡易課税で計算することとなります。事業年度の途中で事業の状況が大きく変わる場合などは、結果として不利になる可能性があるので注意が必要です。

提出期限

・設立1期目
 1期目が「終わるまで」に提出
・2期目以降
 その期が「始まるまで」に提出

経理担当者ならば知っておきたい届出書類2つ

ここでは、「消費税課税事業者選択届出書」や「消費税簡易課税選択届出書」と比べ、検討すべき会社が少なかったりその影響が小さかったりする届出書類ではありますが、経理担当者ならば小さなアンテナでも張っておくのが望ましい届出書類を2つお伝えします。

消費税課税期間特例選択・変更届出書

消費税を計算する期間は、個人事業者は1月1日~12月31日、法人は事業年度と原則1年間です。課税期間特例選択変更届出書を提出すると、消費税の計算期間を3か月または1ヶ月ごとにすることができます。
本来は年1回で良い申告を、年4回や12回申告するのは、仕入れ税額の還付をすみやかに受けようとする目的があるからです。

検討すべき事業者

消費税が恒常的に還付になる場合は検討しましょう。
例)輸出取引がメインの会社など

課税期間

適用を受けた日から2年間は短縮した課税期間を続けなければなりません。また、申告が小まめになるだけで税額の年間合計額は同じです。
回数が増えることによる事務負担や支払う報酬などと比べて、本当に課税期間を短縮した方が得なのかという観点からも検討していただくことが大切です。

提出期限

適用を受けようとする課税期間開始の日の前日までに提出

消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書

この部分は対象になる人が少ないことに加え、やや専門的な内容になります。
本則課税を選択しており「個別対応方式」によって消費税額の計算をしている会社のみが対象になります。

個別対応方式により仕入れに係る消費税を計算している場合には、本来は共通して要する課税仕入れはその金額に課税売上割合を乗じて計算することになります。「課税売上割合に準ずる割合の適用」が承認された場合には、課税売上と非課税売上に対して、下のような割合で共通仕入れを按分することができます。

  • 床面積
  • 人件費
  • 機械の稼働時間など

検討すべき事業者

非課税の「売上は大きい」としても、「費用は小さい」場合は検討しましょう。
例)非課税売上は所有する土地を売った1件の取引だけだった

事前に準備すべきこと

精度の高い利益予想に加えて、その仕入税額控除上の区分まで検討しなければならないため、慎重な検討が必要です。

提出期限

適用を受けようとする課税期間が終わるまでに承認を受ければよい

最後に

いかがでしたでしょうか。
お読み頂いて「検討した方がよいかも」と思った方もそうでない方も、ここで紹介した届出は重要度の高いものばかりです。
決算前には毎期必ず、上の事項について一度立ち止まって検討頂き、「書類を1枚提出し忘れただけで、最悪の事態」になることを防いで頂ければと思います。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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