補助科目を有効活用することで経理業務は効率化できる
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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より
補助科目について考える前に、勘定科目について再度確認してみましょう。 日々の仕訳で当たり前に使っている勘定科目ですが、現在利用している勘定科目はどのように決めたか理解していますか?
利用している会計ソフトにあらかじめ設定されている勘定科目を、そのまま利用している会社がほとんどではないでしょうか。では用意されている勘定科目を使わなければならないかというと、そのような法律や会計原則があるわけではありません。
しかし勘定科目は決算書に表示される名称になります。利害関係者が分かる決算書でなくてはなりませんので、一般的に利用されている勘定科目を使うのが望ましいです。
勘定科目を細かく設定している場合、決算書に表示される勘定科目名も多くなり見づらくなります。 そのような観点から会計ソフトに初期設定されている勘定科目名を利用するがベターであると言えます。
以上を踏まえて、補助科目でどのように活用するのか考えてみます。
補助科目の良さは「自由度」です。
ただ自由すぎるため、どのように活用するといいのか迷ってしまう不便さもあります。 私の場合も明確なルールがあるわけではなく、いくつかの考え方を軸にして、どのような補助科目にするかを決めています。
誰でも分かる名称で設定する
私の会社では経費精算システム「楽楽精算」を利用しています。
申請者に利用した費用を「楽楽精算」に登録して申請させていますが、費用を「勘定科目」から選ばせるのは簿記の知識がないと判断が難しい場合があります。 そこで「勘定科目」がわからない人でも分かる「名称」から選んで登録をさせます。
たとえば「切手」を使った場合、勘定科目は何を選べばいいでしょうか。経理担当者であれば「通信費」とわかりますが、簿記の知識がない人にとっては迷います。
「旅費交通費」の場合はどうでしょう。 交通手段には「電車」「バス」「飛行機」「タクシー」などがあります。 「電車」であれば「旅費交通費」と思いつくのですが、「タクシー」となると何を選択すればいいか思いつかない人も少なくありません。
そこで「切手」を選べば「通信費」、「タクシー」を選べば「旅費交通費」とマスターで設定することで、申請者も迷わず精算ができます。このように精算のために設定した「名称」を「補助科目」としてそのまま利用することで、経理もそのまま会計ソフトに取り込むだけですので効率的です。
税金計算のために設定する
費用は同じもので発生した場合でも、利用用途によって勘定科目が異なるものがあります。 特に「交際費」は税金計算上の費用(以下損金)として認められるかどうかに関わってきますので、注意が必要となります。
1人5,000円以下の飲食代
勘定科目…雑費or会議費
損金の判定…損金
1人5,000円超える飲食代
勘定科目…交際費
損金の判定…事業規模により一部損金
会社関係者のみでの飲食代
勘定科目…交際費
損金の判定…損金と認められない
「1人5,000円超える飲食代」は同じ交際費ですが一部損金に認められますので、補助科目で分けておけば税金計算時に楽に処理をすることができます。
時間外手当を詳細に管理するために設定する
時間外勤務については労務管理の問題ですが、仕訳でも給与を細かく管理することで、時間外に増減している理由を分析の手助けになります。
時間外勤務時間だけで見たら、なぜ増えているかを見ることができません。売上が増えているのであれば、業務量が増えているから時間外勤務が増えているからと売上との関係性から推測することもできます。
また時間外手当の中には色々な要素が含まれています。時間外にも「60時間内残業」「60時間超残業」「深夜残業」「休日出勤」と種類があります。これを補助科目として設定します。
未払費用を管理するために設定する
勘定科目「賞与」を例に説明します。 「賞与」は法的に必ず支出しなければならないものではありませんが、多くの会社で支給しています。 会社により支給条件や支給日などに差がありますので、以下の諸条件で説明します。
- 会計期間:4月~3月
- 支給額:原則は年に2回、2ヶ月分支給
算定期間と支給条件
- 4月~9月の上期の業績により12月に支給
- 10月~3月の下期の業績により翌年度6月に支給
月次損益集計を行っている会社では、賞与支給予定額の月額概算金額を計算して毎月計上します。 概算計上額は支給金額の1/6で処理しますが、実際支給額は業績により変動しますので、実際支払額と概算計上額とに差異が発生する可能性があります。
また支給日が来る前に、次の支給のための概算費用計上を発生します。 つまり概算計上する費用を上期支払予定分と下期支払予定分が混じることになります。 補助科目で「上期支払分」「下期支払分」にわけて、実際の支給時に概算計上額を取り崩せば差異を把握することができます。
予算作成、予算管理のために分類する
予実管理は予算と実際の売上や費用が適切かどうかを確認するものです。 予算作成で悩むのは、予算値の設定をどこまで細かく行うのかです。 予算と一言で言っても様々な費用があり、予算の見通しが立てやすい費用としにくい費用があります。
「租税公課」を例に考えてみましょう。 収入印紙を利用した場合、自動車税を支払った場合、固定資産税を支払った場合、どれも「租税公課」を使います。
収入印紙は紙による契約締結時に書面に貼るために発生する費用です。 工事事業を行っている企業であれば、工事ごとに注文請書に印紙を貼りますので、売上が増えるほど費用は増えます。
それに対して自動車税や固定資産税は、ある時点で所有する自動車や固定資産に対して発生する費用で、いくら発生するか見通しが立つ費用です。
同じ租税公課でも予算管理のために補助科目で分けておくことで、差異の原因を把握しやすくなります。
取引先で分類する
会計ソフトによっては取引先登録ができないものもありますので、この分類方法もあるという提案です。
まとめ
経営分析においては過去との比較がとても重要な分析方法になります。 補助科目を変えたことによって分析がやりにくくなってしまっては問題です。 どのような影響があるかを見極めた上で変更するようにしましょう。
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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。
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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より