予算策定のポイントとCFOの役割 -CFOを目指す経理担当者のためのスキルアップ講座-

予算策定のポイントとCFOの役割 -CFOを目指す経理担当者のためのスキルアップ講座

予算策定に当たっては、CFOが責任者、経理部門が予算統括部門として、プロジェクトを指揮することが一般的です。経理部門の方々は、予算策定の全体像と、責任者であるCFOがどういう役割を担っているのかについて理解しておく必要があると思います。
本記事では、予算策定のポイントと、その過程でCFOがすべきことについてご紹介いたします。

予算策定のフロー

まず、予算策定のフロー(一般的な例)について見ていきましょう。

1.来期経営方針および経営戦略の決定(年度末日-3ヶ月前頃)

社長は、外部環境分析および内部環境分析等をした上で、来期の経営方針と経営戦略を決定します。

2.予算編成方針の立案(年度末日-2.5ヶ月前頃)

予算統括部門は、来期の予算策定方針、予算管理の単位、予算策定スケジュール(ターゲット目標数値)等を決定の上、予算策定キックオフミーティングを開催する等により関係者へ周知します。ここで関係者とは、社長、各部門責任者、予算統括部門メンバーを指すことが一般的です。

その際、あらかじめ予算統括部門にて部門別予算の提出用フォーマットを作成しておき、部門別予算の策定依頼と一緒に各部門責任者に渡しましょう。

3.部門別予算の策定(年度末日-2ヶ月前~1.5ヶ月前頃)

各部門責任者は、自らが管轄する部門の予算を策定し、予算統括部門から受け取ったフォーマットに数値や定性情報を埋め、予算統括部門へ提出します。

4.全社総合予算の調整(年度末日-1ヶ月前~0.5ヶ月前頃)

予算統括部門は、各部門責任者から提出された予算数値を積み上げ方式により統合し、全社総合予算案を作成します。同時に、目標数値との差異調整、部門間の予算の調整(重複、不足等)、数値の妥当性検証等の上、最終予算案を仕上げます。

5.取締役会による承認(年度末日-10日前頃)

予算統括部門担当役員は、最終予算案を取締役会に提出します。取締役の過半数の賛成をもって、年度予算は承認されます。

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予算策定上の注意点とCFOがチェックすべきポイント

予算を策定するに当たり、CFOが果たすべき役割は非常に大きいです。予算策定のあるべき姿を理解するとともに、次の点について十分に確認をしましょう。

1.経営方針および経営戦略との整合性

予算は、経営方針および経営戦略に基づくアクションプランを数値に落とし込むことにより策定していきます。そのため、経営方針および経営戦略と予算数値が整合していることを確認する必要があります。

2.合理的な根拠の積み上げにより策定されているか?

株主へ合理的な説明をするため、また予算実績差異分析の精度を上げるため、予算は合理的な根拠の積み上げにより策定しなければなりません。
たとえば、売上は単なる目標数値ではなく「過去実績とアクションプランによる売上成長の積み上げ」、「得意先別フォーキャストの積み上げ」等により策定されていなければなりません。

3.売上達成に必要な費用がモレなくダブりなく計上されているか

たとえば、売上成長に必要な広告宣伝費やシステム開発費の計上漏れがあったり、部門をまたぐプロジェクトに必要な費用がダブって計上されていることは珍しくありません。部門別予算が提出された時にチェックし調整しておく必要があります。

4.現実的に達成可能な数値か?

予算数値は、株主への達成コミットメントとなるため、現実的に達成可能なものでなくてはなりません。そのために、各部門責任者へのヒアリング、詳細な根拠元データの確認等により、「本当に達成可能な予算なのか?」についてCFO自らが厳しく確認する必要があります。

5.アクションプラン実行に必要な資金の調達は可能か?

予算に織り込まれているアクションプラン実行に必要な資金が、手許資金、銀行借入、株式発行等により調達可能でなければなりません。そのために、予算策定と同時に資金繰り計画を作成し、資金調達を実施すべき時期と金額を確認の上、資金調達計画の検討をしておく必要があります。

6.数字は絶対に間違えない

当たり前のことではありますが、決算や開示資料の作成業務を統括する立場として、CFOは絶対に数字を間違えてはいけません。取締役会の前日まで、プライドをかけて徹底した数値確認をしましょう。

社長まかせではなく、CFOが責任もって作る

CFOは利益予算達成に関して直接的に責任を負うわけではないので、社長や部門責任者から言われるがままに数値を積み上げてしまっていることが珍しくありません。しかし、それではIRや予算管理を統括するCFOの責任を果たしているとはいえません。

CFOは、あるべき予算の姿を明確に定義・共有し、それに向かって正しく予算を策定するために、社長や部門責任者を積極的に動かしていきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 堀 直之

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2007年4月、大和証券SMBC株式会社(現 大和証券株式会社)に入社し、IPO・M&A等のアドバイザリーを担当する投資銀行部門にて、主に製造業セクターの事業法人への財務アドバイザリー業務に携わる。 2012年3月、株式会社アイスタイルに入社し、経理業務のほか、海外子会社の設立・管理、M&Aその他投資業務、マザーズから東証一部への市場変更等の幅広い業務に携わる。2013年7月、株式会社もしもに入社し、取締役として主に経営企画・管理部門を統括。