e-文書法と電子帳簿保存法 保存要件や対象文書から見る2つの違い
経理関係の文書を電子化しようとする場合、避けては通れないのが文書の電子化に関連する法律、「e-文書法」や「電子帳簿保存法」です。
「e-文書法」と「電子帳簿保存法」には、細かい規定を定める法律が異なる等の違いがあり、電子化を検討している文書が法律で保存を義務化されている場合、e-文書法と電子帳簿保存法、どちらの規定に沿う必要があるか、その規定を頭に入れておくことで、より具体的に計画をすすめることができます。
今回は、「e-文書法」と「電子帳簿保存法」を、それぞれの違いに触れながら紹介します。
また、電子帳簿保存法の基本や2020年度の最新改正内容についてはこちらの記事を併せてご覧ください。
経理プラス:【2020年度税制改正】電子帳簿保存法の見直し 進むペーパーレス化
無料ダウンロード:電子帳簿保存法とは?対象書類や遵守すべき保存要件を解説
2005年に誕生した法律「e-文書法」
会社では、法令によって保管が義務付けられている書類が多数存在します。それと共に、最近ではIT化が進むにともなって、電子データでの保存を望む機運が高まっていました。
そこで、2005年に「民間における文書の電子的保存を容認する」法律として誕生したのがe-文書法です。
e-文書法は、法人税法・保険業法・薬事法等の約250の法律等によって、紙媒体での保存が必要だった文書を、スキャナ保存した文書として保存することを認めた画期的な法律です。
このe-文書法により、電子データに電子署名やタイムスタンプを付与することで、複製や改ざんの容易さ等デジタルならではの課題があった電子文書に「原本性」が認められることになりました。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、「国税関係帳簿書類の全部または一部を電子データにて保存すること」を認めた法律です。1998年に制定されました。
2005年にe-文書法が制定されたことにともなって改正され、新たに「スキャナよる電子化保存」が認められ、新たに規定が追加されました。
(それ以前は、最初から一貫してITを使って作成したデータのみ、電子データとして保存することが容認されていました)
e-文書法と電子帳簿保存法の違いは?
e-文書法と電子帳簿保存法の大きな違いの1つは、電子化にあたって承認が必要か否かという点です。電子帳簿保存法に従い、国税関係書類を電子化したい場合は、税務署長などから承認を受ける必要があります。
文書の電子化に関する法律は「e-文書法」と、まとめて考えられがちです。
しかし、電子化したい文書によって、細かい規定を定める法律が異なるため、法律による保存義務がある書類を電子化する際は、e-文書法と電子帳簿保存法、どちらの規定に沿う必要があるかをあらかじめ確認しておきましょう。
e-文書法の基本要件は4つ
e-文書法の原本性を確実なものとするための基本要件には、次の4つがあります。
1.可視性
可視性とは、電子化されているデータがパソコン、プリンターなどを通して明瞭に確認できることを表します。このデータには必要があればすぐにモニター等での確認ができ、紙としても出力できることが求められます。
2.完全性
完全性は、保存された電子データが、消失・破損するリスクを防ぐ措置が講じられていることです。さらに元々のデータの改変を防ぐことも含まれます。もし、データの改変が行われたときは、その事実が明らかになる措置が必要となります。また、データ改変の事実があったかどうかは、電子署名、タイムスタンプを利用して改変が行われていないことを証明することが求められます。
3.機密性
電子データでは、常に機密性が求められますが、具体的には第三者が容易にアクセスできないものであることや、不正アクセスなどの危険性を防ぐことが重要となります。
4.検索性
必要なときにいつでも電子データを取り出せるように、わかりやすく体系的に保存されていることが求められます。
以上の通り、e-文書法では4つの基本要件が求められていますので、電子データの特性を理解した対策を講じることが必要となります。
スキャナ保存を活用するには社内規定を整備しよう
スキャナ保存を活用するときは、社内において共有できる規定を設け、確実に実行できることが大切です。国税庁では、社内規定のサンプルを出しており、これによると、「適正事務処理体制の整備」「事務分掌細則」「スキャナによる電子保存規定」を盛り込むのが望ましいとされます。
(参考)国税庁:「適正事務処理規程」
実際の取引の中で、どのように記録して保管するかフローが分かるように作成することや、その仕組みが適正に行われているかの定期的なチェックシステム、不備があった場合の再発防止の手続きなどを整備しておく必要があるでしょう。
e-文書法と電子帳簿保存法の対象文書
まず、e-文書法と電子帳簿保存法では規定されている文書が異なります。
e-文書法の対象文書
e-文書法では、原則として「保存が義務付けられているすべての文書」が対象です。
その中でも、
- 緊急時に即座に見読可能な状態で無くてはならない物(船舶に備える手引書など)
- 現物性が高いもの(免許証など)
- 条約による制限があるもの
はe-文書法の対象外とされています。
電子帳簿保存法の対象文書
電子帳簿保存法の対象文書は、「国税関係の書類」です。
その中でも、
- 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書などの決算関係書類
は対象外です。
以前は、契約金額・受取金額が3万円以上の契約書・領収書については対象外でしたが、2015年の改正により、これらも全て電子化が可能になりました。
e-文書法と電子帳簿保存法のスキャナ保存要件の違い
書類をスキャナ保存する場合の要件は、e-文書法と電子帳簿保存法の違いがあります。
e-文書法の場合
e-文書法においては、スキャナ保存する文書は「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つの条件が定められています。この4つがすべて求められるのではなく、対象となる文書によって、1~3つの要件が規定されます。対象文書の殆どは、「見読性」(必要に応じて表示できる、内容が明瞭に確認できる)が求められているに過ぎません。
電子帳簿保存法の場合
電子帳簿保存法においては、「真実性」(入力期間の制限やタイムスタンプの付与など)「可視性」(帳簿との関連性保持、検索機能の確保など)の要件を満たすスキャナ保存が求められており、より一層細かい検討が必要となります。
スキャナ保存の対象となる「国税関係書類」とは?
国税関係書類において、スキャナ保存の対象となる書類等は、次のとおりです。
重要度(高) | 重要度(中) | 重要度(低) | |
---|---|---|---|
・契約書 ・領収書 及び恒久的施設との間の内部取引に関して 外国法人等が作成する書類のうちこれらに 相当するもの | ・預り証 ・借用証書 ・預金通帳 ・小切手 ・約束手形 ・有価証券受渡計算書 ・社債申込書 ・契約の申込書 (定型的約款無し) ・請求書 ・納品書 ・送り状 ・輸出証明書 及び恒久的施設との間の内部取引に関して 外国法人等が作成する書類のうちこれらに 相当するもの | ・検収書 ・入庫報告書 ・貨物受領証 ・見積書 ・注文書 ・契約の申込書(定型的約款有り) |
なお、仕入帳、総勘定元帳等一定の取引に関して作成されたその他の帳簿や棚卸表等決算関係書類はスキャナ保存の対象外になっていますので、ご注意ください。
領収書・請求書を電子保存したいなら「電子帳簿保存法」への対応が必要
会社関係の書類をデータ保存できることで、紙保存の際のコスト削減や、業務効率の向上が期待できます。e-文書法と電子帳簿保存法の違いを頭に入れて、法律の規定に則った電子化の推進を検討してみてください。経理の方の多くが電子保存したいと考える領収書は「国税関連書類」に当たるため、電子帳簿保存法への対応が必要です。
電子帳簿保存法への対応や業務効率には経費精算システム「楽楽精算」がおすすめ
クラウド型システムの「楽楽精算」では、電子帳簿保存法の基本要件を満たすための機能が充実しています。たとえば、領収書や請求書にタイムスタンプを付与する機能や保存されたデータが改変されていないのかを一括で検証できる機能などを手軽に使うことができます。
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法律にて保存義務がない書類についてはデータ化するかは自由ですが、データ化による作業の効率化は大いに期待ができます。 また経費精算システムの導入はデータ化だけでなく、申請内容の自動チェックや仕訳、会計ソフトへの連携など、経費精算の面倒な作業を効率化する機能が揃っています。 ぜひこの機会に会社のスタイルに応じた電子帳簿保存法の対策と経費精算業務の効率化をご検討ください。
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まとめ
「e-文書法」の施工や「電子帳簿保存法」規制緩和により、一部を除きほとんどすべての文書は電子データでの保存が可能になりました。
企業活動で日々発生する書類のほとんどは破棄が可能になり、経団連の試算では、税務書類の紙による保存コストは年間3,000億円と言われています。
また、会社関係の書類をデータ保存できることで、付随する業務のIT化による業務効率の向上が期待できます。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。