まだまだ間に合うマイナンバーの対応

まだまだ間に合うマイナンバーの対応

平成27年10月5日より「マイナンバー制度」が開始されています。
これを受けて、住民票を有する一人1つ、一法人1つの番号の通知が始まりました。
この番号が「マイナンバー」です。
すでに運用に向けて社内での体制作りなど行っている会社も多いと思いますが、この記事では「まだまだ間に合う」という内容で、これから対応を行う企業向けに、どのようにマイナンバーの対応をすすめていけばいいかを紹介したいと思います。

マイナンバーとは

平成27年10月から住民票を有する一人1つ、一法人1つ通知される番号です。
個人に付される番号を「個人番号(12桁)」、法人に付される番号を「法人番号(13桁)」といいます。

何に利用するのか

マイナンバーが利用されるのは「社会保障」「税」「災害対策」の行政の3分野です。
マイナンバー制度は「番号法(いわゆるマイナンバー法)」が根拠となっており、正式名称を『行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律』といいます。
つまり、現時点ではマイナンバーは「行政手続き」のために利用するもので、それ以外の利用はできません。

いつから利用するのか

通知開始は平成27年10月5日からですが、実際に税や社会保障等の書類へ記載して利用するのは、早いものだと平成28年1月1日以降提出分から徐々に対応されています。
ただし、早々にマイナンバーが必要となる手続きは、そう多いわけではありませんので、必ず全従業員のマイナンバーを集め終えていないといけないわけではありません。

以下のものが早期に番号が必要となる例として掲げられています。

  • 年始に雇う短期アルバイトへの報酬
  • 講演、原稿作成等での外部有識者等への報酬
  • 3月の退職
  • 4月の新規採用
  • 中途退職

ちなみに従業員から、扶養控除等申告書を受け取る場合、申告書に給与所得者本人等のマイナンバーを記載する必要があります。ただし、会社側が既に従業員からマイナンバーを集め終えて、帳簿を備えている場合、その帳簿に記載されている従業員のマイナンバーは扶養控除等申告書に記載しなくてもよいとされています。
(参照:国税庁「源泉所得税関係に関するFAQ」

マイナンバー運用に向けての「安全管理措置」

平成27年10月より通知開始となったマイナンバーですが、その重要性は高く、取扱いには十分な注意が必要となります。

運用フローとしては「取得」→「利用・提供」→「保管」→「廃棄・削除」となります。
ただ準備なくいきなり「取得」するのではなく、「漏えい」や「不正利用」が生じないような仕組みが大切です。

そのためにガイドライン等では、次の「安全管理措置」が講じられるべきと提示しています。

基本方針の策定

特定個人情報の保護に関する基本理念を明確にしたうえで以下の点を盛り込みましょう。

  • 事業者の名称
  • 法令遵守
  • 安全管理措置
  • 問い合わせや苦情相談等に関する窓口

取扱規定等の策定

マイナンバー等を扱う書類の作成について、業務フローやマニュアルなど具体的な取扱い方法を定めたものを策定します。
「取得」・「利用・提供」・「保管」・「廃棄・削除」それぞれでの取り扱い方法を定めたものが必要となります。

組織的安全管理措置

取扱責任者や事務取扱担当者を明確にして、担当者以外がマイナンバー等を取り扱うことがないような体制作りを行う。
漏えいが生じた場合、漏えいの疑いがある場合に、迅速に対応できる体制の整備を行う。

人的安全管理措置

事務取扱担当者の監督や教育を行う。

物理的安全管理措置

マイナンバー等を担当者以外が触れないようにすることが大切です。
廃棄の際はシュレッダーを利用する。
保管する棚には鍵をつける。
パーテーションや座席の工夫をする。
ワイヤーロック等でパソコンを持ち出せないようにする。

技術的安全管理措置

担当者以外マイナンバー等を利用できないようにアクセス制限を行う。
外部からの不正アクセスや不正ソフトウェアから保護するために、ウイルス対策ソフトウェアを導入やアクセスパスワードの設定を行う。

マイナンバー運用に向けての準備

安全管理措置を念頭に準備を行っていきましょう。

  1. 対象業務の洗い出し
    マイナンバーを記載する書類を洗い出します。(引用:いよいよマイナンバー制度が始まります)
    分野書類名
    税分野給与所得の源泉徴収票
    退職所得の源泉徴収票
    給与支払報告書
    報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
    配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書
    不動産の使用料等の支払調書
    不動産等の譲受けの対価の支払調書
    不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
    社会保険分野雇用保険被保険者資格取得(喪失)届
    健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得(喪失)届
    健康保険被扶養者(異動)届
    国民年金第3号被保険者関係届
    健康保険・厚生年金保険産前産後休業/育児休業等取得者申出書・終了届 など

  2. 書類ごとの業務フローを整理
    1.で洗い出した書類ごとでの業務フロー(「取得」→「利用・提供」→「保管」→「廃棄・削除」)を整理しましょう。
例:源泉徴収票等作成の業務フロー(引用:特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン)

 

  1. 従業員等から提出された書類等を取りまとめる方法
  2. 取りまとめた書類等の源泉徴収票等の作成部署への移動方法
  3. 情報システムへの個人番号を含むデータ入力方法
  4. 源泉徴収票等の作成方法
  5. 源泉徴収票等の行政機関等への提出方法
  6. 源泉徴収票等の控え、従業員等から提出された書類及び情報システムで取り扱うファイル等の保存方法
  7. 法定保存期間を経過した源泉徴収票等の控え等の廃棄・削除方法 等

このように業務フローを整理することで、「誰が」「いつ」「どのように」処理するかが明確になります。
明確になれば、体制の見直しやシステム導入の検討など、それぞれでのやるべきことが洗い出されます。

これをたたき台にして取扱規定の策定や安全管理措置を講じましょう。

マイナンバー「取得」で押さえておくべきこと

社内の体制が整ったら、「取得」です。
「取得」するにあたり、どのように受け取るのが、何を受け取るのか、誰から受け取るのかなど、おさえておくべき点があります。

誰から取得するのか

取得対象者…従業員(パート・アルバイトを含む)やその家族、講師や原稿の執筆者など支払調書の当事者となる外部の個人支払先

何を取得するのか

「身元確認」と「番号確認」ができるものが必要となります。

番号確認身元確認
個人番号カード
通知カード
住民票(マイナンバー付)
運転免許証
パスポート

個人番号カード以外の場合は、それぞれの確認できるものが必要となります。

ただし、雇用関係等から個人番号の提供者と同一の者であると、個人番号利用事務実施者が認める場合には、身元確認を省くことも認められています。
※過去に身元確認等で本人確認を行っている場合

番号確認ができるものはいつから取得できるのか

通知カード…平成27年10月以降、住民票の住所に簡易書留で届いています。
ただし、令和2年5月25日に廃止され、再交付や住所等の券面記載事項変更の手続きが行えなくなりました。
住民票(マイナンバー付)…平成27年10月5日以降、希望をすれば付されたものが取得できます。

個人番号カード…「通知カード」が届いたら①郵送で申請もしくは②オンラインで申請し、平成28年1月以降に市町村窓口で取得できます。
ただし、平成28年1月以降であればいつでも受け取ることができるわけではなく、個人番号カードの準備ができたことを知らせる「交付通知書」が届いてからでないと取得できません。

どのように取得するのか

マイナンバーを取得する際は、利用目的を特定して明示する必要があります。

取得方法として考えられるのが、「対面」「郵送」「電子メール」「オンラインサービス」があります。
どれか1つの方法でなければならないわけではありませんので、いくつかの手段を組み合わせて検討するのがいいと思います。

対面で取得する場合、マイナンバーの取扱担当者と取得する者が同一であればいいですが、拠点が複数ある場合や、各所属長に取得を行ってもらう場合に、どこまでお願いするかを決めておく必要があります。

受け取って渡すだけの場合
書類の不備がないかだけ確認して、すみやかに取扱担当者に渡します。

本人確認も行ってもらう場合
その場で番号確認と身元確認を行い、取扱担当者にマイナンバーを報告。番号確認と身元確認をするものは、すぐに本人へ返却しましょう。

扶養家族からの取得
書類によっては、本人確認が必要となるものがあります。

書類例:扶養控除等(異動)申告書、健康保険被扶養(異動)届
扶養者である従業員が提出義務者ですので、被扶養者の本人確認は扶養者が行います。
本人確認は不要です。

書類例:国民年金第3号被保険者関係届
被扶養者本人が提出義務者ですので、本人確認が必要となります。

本人確認が必要となる場合は、「番号確認」「身元確認」に加え「委任状」を交付して取得するようにしましょう。

委託・再委託を行う場合に押さえておくべきこと

マイナンバーに絡む事務業務の全部又は一部の委託をする場合、委託先においても、委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

必要かつ適切な監督とは(引用:はじめてのマイナンバーガイドライン)

 

  1. 委託先の適切な選定
  2. 委託先に安全管理措置を遵守させるために必要な契約の締結
  3. 委託先における特定個人情報の取扱状況の把握
  • 委託者は、委託先の設備、技術水準、従業者に対する監督・教育の状況、その他委託先の経営環境等をあらかじめ確認しなければなりません。
  • 契約内容として、秘密保持義務、事業所内からの特定個人情報の持出しの禁止、特定個人情報の目的外利用の禁止、再委託における条件、漏えい事案等が発生した場合の委託先の責任、委託契約終了後の特定個人情報の返却又は廃棄、従業者に対する監督・教育、契約内容の遵守状況について報告を求める規定等を盛り込まなければなりません。
    委託先が再委託する場合は、最初の委託者の許諾を得た場合に限り、再委託をすることができます。
  • 委託者は、委託先だけではなく、再委託先・再々委託先に対しても間接的に監督義務を負います。

まとめ

マイナンバーとその内容に含む個人情報を「特定個人情報」といい、その利用範囲を限定するなどより厳格な保護措置を定めています。
法律で定められている以外の場合は、マイナンバーを取得・利用・提供・保管することはできません。
法律を遵守した上で円滑な業務運用ができるように、業務の見直しをしてみましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 小栗 勇人

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1980年生まれ。上場企業と上場企業子会社で経理を10年経験。ExcelやAccessの活用、クラウドサービスの導入、社内基幹システムの構築など、経理業務だけでなく、会社全体を効率化させることを日々実践中。運営ブログ「経理と事務の効率化」をきっかけにExcelの本『経理の仕事がサクサク進むExcel超活用術』を出版。

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