給与支払報告書のQ&A ー経理担当者が知りたいちょっと深いところー

今回の記事では、「給与支払報告書」について、あまり知られていない素朴な疑問、実務で知っておきたい特例、失敗が多い事項などを、Q&A形式で説明します。
今年もあと2週間ちょっととなりました。忙しい時期かとは思いますが、張り切って参りましょう。
 

給与支払報告書のあまり知られていない素朴な疑問

質問:どうして給与支払報告書は1人2枚提出なのですか?

回答:1枚ずつ別の管轄で管理し、個人や企業からの問い合わせにスムーズに対応するため2枚必要です

2枚提出するのは面倒ですが、合理的な理由があります。

  • 通常手続きの場合
  • 市区町村に2枚送られた個別明細書は、1枚は会社ごとに管理し、もう1枚は世帯ごとに管理されています。会社から問い合わせた際にスムーズに対応してもらうことができ、さらに従業員個人から世帯に関する質問をした場合にも迅速に対応してもらえるというメリットがあります。

  • 他の市区町村から引っ越しをした場合
  • 引っ越した場合にはさらに別の使われ方をされます。1枚は転出元の市区町村で保存し、もう1枚は転入先の市区町村で保存して管理するという方法で、過去分の問い合わせが発生した場合も対応してもらえるよう保管されています。

    経理担当者からすると、印刷コストや事務負担が単純に考えれば倍になるため「なぜ2枚出さなければならないのか」という疑問が出てしまうかもしれませんが、会社も従業員も大いに助けられています!
    ご納得いただけましたか?意味が無いことと思わずに手続きに臨んでくださいね。
     

    知っておきたい給与支払報告書に関する特例

    質問:住所不明で、確認が取れない退職者分はどうすれば良いのでしょうか?

    回答:原則提出が必要ですが、給与などの支払いが30万円以内の方については退職者に関する特例があります

    原則は、給与支払報告書を提出する年の1月1日時点に在職していない従業員であっても、前年中に給与の支払いがあった人については提出しなければなりません。
    退職者に関する手続きの特例として、前年中に退職した方のうち、前年中の給与等の支払金額が30万円以内の方については個人別明細書の提出義務が免除されるという規定があります。
    例えば、出勤はしたが住所などを確認する前にすぐ退職してしまった人がいる場合には、この特例を活用することでその人の個人別明細書の作成をボトルネックとすることなく、手続きを進めることができるため、実務で知っておきたい項目のひとつです。

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    住民税の徴収方法:特別徴収と普通徴収について

    質問:特別徴収と普通徴収はどちらを適用するべきですか?

    回答:特別徴収が原則です

    住民税の納付の仕方には、給与から住民税を天引きし会社がまとめて納付する「特別徴収」と、地方自治体から個人に対して納付書が送付され個人が直接納付する「普通徴収」というふたつの方法があります。
    回答の通り、原則的には特別徴収での納付となります。

  • 特別徴収と普通徴収の具体的な影響について
  • ふたつの違いは、従業員の負担にあります。
    特別徴収は通知された1年分の住民税を毎年6月から翌年5月まで12回に分けて徴収し会社がまとめて納付するため、従業員からすると1回の支払い金額負担が軽い上に会社が納付事務を行ってくれるため負担が小さくなります。普通徴収の場合は住民税の年額を4分割で納付書に記載されて納付期限までに自分で支払いを行わなければなりません。

  • 近年の傾向 ―特別徴収への切り替えの要請が強まっている―
  • 規模の小さい会社では、会社側の事務負担を減らすために普通徴収を適用している会社もありますが、地方自治体としては住民税の納付率は特別徴収の方が高い(特別徴収:99.7%>普通徴収:90.9%)ため、近年は年を経るごとに特別徴収への切り替えの要請が強まっています。

    参考:埼玉県ホームページ
     

    給与支払報告書で失敗しやすい注意点

    質問:給与支払報告書の作成で失敗しやすい点があれば教えて下さい

    回答:平成24年度より加わった「16歳未満の扶養親族欄」の記入漏れに注意しましょう

    平成24年度より、子ども手当や高等学校授業料の実質無料化が導入されたことに伴い、16歳未満の扶養親族については、所得から差し引けないこととなりました。
    「扶養親族からは除かれる」こととなったため「記載も不要になった」という誤解を招きやすいこと、経理担当者からすると新しくお子様が増えたことなどは把握しきれないことなどから、記入漏れが多い項目となっています。

  • 記入が漏れた場合はどうなるの?
  • 記載があってもなくても所得控除の金額は変わらないですが、16歳未満の親族の人数は「住民税の非課税限度額」に影響があるため、今まで住民税がかかっていなかった方や定額分のみを負担していた方の住民税に影響が出ます。
    税額以外でも、源泉徴収票における家族構成を示す部分でもあるので、記入漏れがないように注意して下さい。
     

    給与支払報告書は、基本さえ押さえてしまえば毎年同じような事務作業をこなしていくだけなので、Q&Aの他にも給与支払報告書の概要もチェックしておいて下さい。
    経理プラス:「給与支払報告書」とは?ちゃんと提出していますか?

    法定調書の作成は、給与支払報告書のあとにも合計表の作成が続きます。こちらもスムーズに進めて頂けるよう、下の記事もチェックして頂ければと思います。
    経理プラス:法定調書合計表作成の業務概要
     

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    ● 著者
    服部 峻介(セブンリッチ会計事務所)

    服部 峻介(セブンリッチ会計事務所)

    北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている

    セブンリッチ会計事務所

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