間違いやすい法人事業税の分割基準をおさらいしよう!

間違いやすい法人事業税の分割基準をおさらいしよう!

法人が納めるべき税金には、法人税や法人住民税の他に、法人事業税というものがあります。
今回はこの法人事業税の説明と、複数の都道府県などにまたがって事業をしている場合に使用される税金の分割基準について解説してみたいと思います。

法人事業税とは

法人事業税とは、法人が行う事業に対して課される税金です。
法人の種類や業種によって計算方法が違いますが、一般的な事業会社であれば、所得金額に税率を乗じることで税額が算定され、事務所や事業所(以下、「事務所等」)が所在する都道府県に納めます。

複数の都道府県・市町村で事業をしている場合は?

東京都なら東京都だけ、大阪府なら大阪府だけに事務所を設けて事業を行っている場合は良いのですが、東京都と大阪府のどちらにも事務所がある場合、どこにいくら納めれば良いのか疑問がわくかと思います。
実は、このように複数の都道府県に事務所等を有する場合には、所得などの課税標準の総額を一定の基準で分割し、各都道府県の分割課税標準額を算定し、それに税率を乗じることで各都道府県に納めるべき税額を算定するのです。
この場合の一定の基準のことを分割基準と呼びます。

法人事業税の分割基準とは

では、分割基準はどのように定められているのでしょうか?
法人事業税の分割基準は、以下の表のように法人の業種によって定められています。

業種分割基準
ア 非製造業
(下記イ~オ以外)
事務所等の数と従業者の数
イ 製造業従業者の数
ウ 倉庫業・ガス供給業有形固定資産の価額
エ 電気供給業有形固定資産の価額と発電に使用するものの価額
オ 鉄道事業・軌道事業軌道のキロメートル数

場合によっては、非製造業と製造業など、分割基準にまたがる複数の業種をしていることもあると思いますが、その場合には主たる事業についての分割基準を使用することとなっています。

それでは、各分割基準に使用される「事務所等の数」「従業者の数」「有形固定資産の価額」「軌道のキロメートル数」について、どのように算定するのかを見ていきましょう。

事務所等の数の算定方法

事務所等とは、自己所有かどうかに関わらず、事業の必要性から設けられた、継続して事業が行われる場所のことを言います。
「継続して」とあるとおり、2~3ヶ月程度の一時的に利用する場所は事務所等に含まれません。

そして、分割基準である事務所等の数は、原則として、事業年度の各月末日の数を合計したものになります。
したがって、期首から期末まで継続してA県に事務所が1つ、B県にも事務所が1つある場合には、事務所等の数はA県が12、B県が12で、合計24が分割基準の事務所等の数となります。

従業者の数の算定方法

従業者とは、俸給、給料、賃金、手当、賞与などの給与の支払を受けるべき者を言います。
「受けるべき者」とあるとおり、経営者やその親族、非常勤役員などで、実際には給与の支払いを受けていない場合であっても、従業者に含まれます。そしてその数は、事業年度末日の従業者の人数によって算定しますが、事業年度の途中に、事務所等を新設または廃止した場合には、その事務所等の存在した月数で按分することになります。

たとえばA県の事務所は期首から期末まで存在し期末の従業者が3人、B県の事務所は期中(期末までは6ヶ月)に新設し、期末の従業者が2人であった場合を考えて見ましょう。
A県の事務所は期首からずっと存在していますので、分割基準となる従業者の数は3です。一方、B県の事務所は期末の従業者2名を月数で按分し、分割基準となる従業員の数は1(=2名×6ヶ月/12ヶ月)となります。

有形固定資産の価額の算定方法

有形固定資産の価額は、事業年度末日に貸借対照表に記載されている有形固定資産の価額です。
したがって、貸借対照表に記載されていない賃貸物件や、無形固定資産については分割基準に含みません。

軌道のキロメートル数の算定方法

軌道のキロメートル数は事業年度末日における、単線換算キロメートル数のことを言います。

間違いやすい例

基本的な分割基準の考え方を確認しましたので、ここでは間違えやすい例を説明したいと思います。

業種判定について

下請工場などに材料を支給し製品を作らせ、これを自社名で販売している場合には、卸売業・小売業に該当し、製造業ではありません。

事務所の数について

同一構内・区画に複数の建物がある場合、それらは一つの事務所等として扱われます。
また、社員の慰安の目的のためだけに設置された保養所は事務所等の数に含めませんが、寮等に該当し、法人住民税の均等割の申告が必要となります。

従業者の数について

研修施設において、研修を受ける者は従業者の数には含めません。
一方、派遣会社からの派遣労働者は従業者の数に含めます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
分割基準についての基本的な考え方を解説してきましたが、実は、事務所の建物が複数の都道府県区域にまたがる場合や従業者の数が著しく変動した場合、従業者が複数の事務所等に勤務している場合、電気供給業の場合、鉄道事業と百貨店業を行っている場合など、分割基準については細かな例外が定められています。
分割基準に迷った場合は、管轄の都道府県か税理士に相談するなどして、正しく法人事業税の計算を行いましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 大野 修平

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公認会計士・税理士 前職の有限責任監査法人トーマツでは銀行、証券会社、保険会社など金融機関向けの監査、デューデリジェンス、コンサルティング業務などに従事。 現在は、会計や税金を身近に感じてもらえる様々なイベントを運営している。 無類の読書好きで、蔵書が3,000冊を超えないようコントロールすることに頭を悩ませる日々。