法定調書合計表のQ&A
年末調整に関する最後の手続きが法定調書合計表の提出です。ひとつ前の記事では、法定調書合計表の全体像についてお伝えし、その背景やちょっとした裏話を紹介させて頂きました。
経理プラス:法定調書合計表作成の業務概要
今回の記事では、実際の作業において判断に迷うポイント、消費税の税込み税抜き表示に関する知っていると得する特例、今年から変更となる事項、もしも間違ってしまった時の手続きについてお伝え致します。
給与等の源泉徴収票に関する実務で役立つテクニック
質問:給与の源泉徴収票の提出範囲について分かりやすい覚え方を教えてください
回答:提出範囲が一覧となった表を用いて提出範囲を意識するようにしましょう
- 効率的な作業方法:給与の源泉徴収票の提出範囲
法定調書合計表に添付する法定調書全6種類のうち、大多数の枚数を占めるのは「給与所得の源泉徴収票」です。税務署から送られてくる「法定調書の作成と提出の手引き」が一番詳しくて良いと前回の記事でお伝えしましたが、細か過ぎる部分もあるため、実際に作業を行う際にかえって迷ってしまいかねません。
「税務署に出す人」と「出さない人」を仕分ける際、まずは下の表金額を超えるならば出すという観点で作業してみてください。
年末調整をしたか | 種別(役員or従業員) | 支払金額(額面のこと) |
---|---|---|
年末調整をした | 役員 | 150万円超 |
従業員 | 500万円超 | |
年調未済 | 役員 | 50万円超 |
従業員 | 250万円超 |
※その他の人:仕分け作業を進める中で、次に該当する人が出た場合のみ別途判断してください。
- 弁護士、税理士などの専門家に対して給与を支払っている場合
- 扶養控除申告書の提出のない人(いわゆる乙欄課税、丙欄課税の人です)
- 作業後のチェック方法
作業が終わり、「税務署に提出する人」と「税務署に提出しない人」の源泉徴収票の束それぞれ出来上がりましたら次のフローでチェックしてみてください。
【税務署に提出する人の束】
- 種別が「役員」
- 種別が「従業員」
【税務署に提出しない人の束】
- 種別が「役員」
- 種別が「従業員」
以上の仕分けと、チェックを行った上で問題ないようでしたら、そのまま提出頂いて構わない状況となっておりますので、上のフローに従って効率的に源泉徴収票の仕分けを行って頂ければと思います。
報酬の支払い調書に関する疑問:実務で知っておきたい特例について
質問:支払調書に書く金額は税込みと税抜きどちらですか?
回答:原則は税込みですが、例外で税抜きも認められております
- 記載方法
支払調書に記載いただく金額は、原則として消費税等の額を含めることとなっているため税込み表示することになります。
例外は、消費税等の額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで記載しても構わないことになっており税抜き表示も認められています。その場合には、「(摘要)」欄にその消費税等の額を記載します。
- 提出義務の判断
税抜き表示にした場合には税抜き表示の金額で判断することになっています。そのため、税抜き表示にした方が提出枚数が減る可能性や、手続きの都合上、提出しない形で進めたいものについては特例を適用することで、法人に有利な選択をすることができます。
近年の改正について ー光ディスクの提出義務についてー
質問:光ディスク等による支払調書の提出義務について教えてください
回答:平成26年1月1日以降、前々年の支払調書の枚数が1,000枚だった支払調書については光ディスク等でe-Taxによる提出が義務付けられました
近年の合計表の改正内容をお伝えします。概要は上の回答の通りで、前々年に提出した支払調書が1,000枚以上であった場合には、e-Taxによる提出が義務付けられました。背景としては、税務署側の事務負担軽減がありますが、会社側としても支店や工場等の提出分も含め本店等の所轄税務署長に一括提出できるなど大量の調書を1枚のCD等で提出することができるメリットがあります。
- 光ディスク等とは?
CD・DVDの他、フロッピーやMOも認められています。
- 提出義務の判断
支払調書ごとに判断するため、給与の源泉徴収票は1,000枚以上かどうかという形で報酬の支払調書などとは合算しない枚数で判断します。
なお、令和3年(2021年)1月1日以降に提出する法定調書に関しては、提出義務が「100枚以上」に引き下げられる予定ですので、覚えておきましょう。
- 該当することとなった場合の必要手続き
光ディスクにより提出する日の2ヶ月前までに、所轄の税務署に申請書を提出しなければなりません。
直面する前に知っておきたい、間違った際の対応方法
質問:提出後に、源泉徴収票の変更や、記載の誤りに気付いてしまいました、どうすれば良いでしょうか?
回答:まずは間違って提出した書類を再作成し、その後正しい記載の書類をご用意ください
次のステップに従って書類を作成し、作成後すみやかに税務署に提出してください。
- 誤って提出した法定調書を再度作成する
・法定調書(源泉徴収票or支払調書のことです)
①先に提出した法定調書と同じものを作成します
②その法定調書の右上の余白に「無効」と赤い字で記載してください。
・合計表の作成
①無効にした法定調書の支払金額を記載した合計表を作成します
②合計表の「調書の提出区分欄(法人住所に右隣の欄です)」に「4(無効)」と記入します
- 正しい法定調書を作成する
・法定調書
①正しい内容の法定調書を作成します
②その法定調書の右上余白に「訂正分」と赤い字で記載してください。
・合計表
①訂正分とした法定調書の支払金額を記載した合計表を作成します
②合計表の「調書の提出区分欄」に「3(訂正)」と記入します
- 提出する
以上の書類を所轄税務署に郵送すれば訂正の手続きは完了です。もしも間違ってしまったとしても簡単な手続きで済むため、不要にあせらず、上のステップに従って手続きを進めてください。
いかがでしたでしょうか。法定調書合計表の作成は判断しなければならない項目が多いため、手を動かしている時間よりも内容を調べたりすることに時間が取られてしまいがちです。
スムーズに終わらせる方法としては、年内から「法定調書の作成と提出の手引き」にざっと目を通してどこに何が書いてあるのかを何となく頭に入れておき、実際の作業で不明点が出る都度内容を確認しながら進めるのが、スムーズに正確な合計表を作成するためのコツです。
その他の部分は「法定調書合計表作成の業務概要」と本記事で補足しておりますので、こちらも作成前、作成後それぞれチェックしてみてください。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。