切手の勘定科目とは?購入時と使用時の仕訳方法を解説
切手はハガキや郵便物を送付する際に使用しますが、ある程度のストックを持っている会社も多いでしょう。切手の会計処理には、原則的な処理と例外的な処理の2パターンがあります。また、消費税の取り扱いについても原則は使用時に計上しますが、購入時に一括計上することも容認しています。ここでは切手の勘定科目や仕訳の方法、消費税の取り扱いなどについて詳しく解説します。
切手の勘定科目とは
切手の会計処理には「通信費」の勘定科目を使用します。これは、電話やファックスと同様に通信手段にかかる費用と区分されるためです。
間違いやすい勘定科目としては、消耗品費や雑費などがあります。消耗品費は文房具などの事務用品、軍手などの作業用品の購入に使用するもの。また、雑費は各種の手数料や会費、少額で他に適当な勘定科目がない場合などに使います。用途が通信手段である切手は、「通信費」を使いますので注意しましょう。
収入印紙との違い
収入印紙と切手は形がよく似ていますが、使用方法はまったく異なります。収入印紙は印紙税が課税される経済的な取引を行う文書、いわゆる課税文書に貼り付けて使用するもの。課税文書とは、5万円を超える領収書や契約書などのことです。収入印紙は国に支払う税金になりますので、勘定科目は「租税公課」に計上します。
収入印紙の詳しい説明は下記記事を参照ください。
経理プラス:収入印紙はどこで買える?印紙税額一覧と貼り方を解説
通信費に分類される代表例
勘定科目の通信費に分類される例としては、電話代やファックス代、インターネット関連の費用、郵便物の送料などがあります。通信と送料を合わせて、勘定科目を「通信運搬費」とする場合もあるでしょう。
近年普及しているテレワークでは、社員個人が所有するスマートフォンやインターネットを利用することが少なくありません。この料金についても、事業を行うために使用した部分は通信費として処理することができます。
切手や郵便配送料のように物品の輸送に係る費用も通信費として処理しますが、宣伝効果を目的としてダイレクトメールや試供品を送付する際は「宣伝広告費」、顧客へ商品や製品を発送する際は「荷造運賃費」になりますので使い分けに注意してください。
切手の仕訳は2つのパターン
切手の仕訳には、「原則的な処理」と「例外的な処理」という2つパターンがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
原則的な処理
切手は購入時には「貯蔵品」で資産計上し、使用した時に「通信費」として費用化することが原則的な処理です。購入時に貯蔵品とするのは、使用するまでは金銭と同等の価値があると考えるためです。
(購入)84円切手を10枚購入した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貯蔵品 | 840 | 現金 | 840 |
(使用)10枚の内、2枚を使用した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
通信費 | 154 | 貯蔵品 | 168 | |
仮払消費税 | 14 |
84円切手の消費税は7円(内税)です。消費税の取り扱いについては後ほど詳しく記載します。
例外的な処理
実務の煩雑さを考慮し、購入時点に一括して「通信費」計上することも容認されています。ただし、期末に未使用分を把握し貯蔵品計上することが求められます。
(購入)84円切手を10枚購入した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
通信費 | 770 | 現金 | 840 | |
仮払消費税 | 70 |
(使用)10枚の内、2枚を使用した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
仕訳なし |
(期末)期末時点で未使用の切手8枚がある
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貯蔵品 | 672 | 通信費 | 616 | |
仮払消費税 | 56 |
例外的な処理は、購入した郵便切手は自らの事業のみで使用すること、継続的に同じ経理処理を行うことが前提となります。実務的には、使用の都度に費用化する原則処理は手間がかかるので、期末に未使用分をカウントする例外処理を選択することが多いでしょう。
切手の消費税の取り扱い
切手の購入については非課税扱いとなります。郵便局で切手を購入する場合、レシートには非課税と記載されているでしょう。一方、郵便料金自体は課税取引なので、切手を使用した場合は消費税が課税されます。そのため、消費税の原則的な処理について切手の購入時には消費税を計上せず、使用時に計上することになるのです。このような仕組みになっているのは、切手の金額には消費税が内税として含まれており、購入時にも消費税を課すと二重課税になってしまうのが理由です。
だだし、消費税についても自らの事業でのみ使用し、継続して同じ処理をすることを条件に購入時に一括で消費税を計上することも容認しています。消費税の処理は上述した仕訳方法が一般的ですが、会計の「例外的な処理」と税務の「一括計上」を組み合わせた場合、期末の振替は通信費のみとなります。
(期末)期末時点で未使用の切手8枚がある
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貯蔵品 | 616 | 通信費 | 616 |
期末に切手が残っていた時の対応方法
例外的な処理では、期末に未使用の切手がある場合は貯蔵品として振り替える必要があります。未使用分を把握する具体的な手順としては、以下のような流れです。
- 経理より各部門へ未使用切手の残高報告を依頼
- 残高表を各部門の担当者が作成、部門の上位者が押印等で承認し経理へ提出
- 経理で貯蔵品への振替仕訳を実施
- 必要に応じて経理にて現物と残高の一致を確認
残高表は未使用の合計金額だけではなく、切手の単価と枚数が記載されている方が良いでしょう。残高表の提出後、決算日を過ぎるまでは未使用切手を使わないよう注意してください。
横領などの不正使用防止の観点から、経理は提出された残高表と現物が一致しているか監査することが望ましいです。切手だけではなく、収入印紙、商品券、プリペイドカードといった現金同等物については、いつ何に使ったかの管理簿をつけるようにしましょう。
まとめ
切手の勘定科目や会計処理、消費税の取り扱いなどについて解説しました。原則的な処理、例外的な処理のいずれであっても、期末の未使用分は貯蔵品に計上することが必要です。税務調査でもチェックされますので注意しましょう。
一方、切手の消費税について購入時は非課税扱いし、使用時に仮払消費税を計上することが原則です。ただし、実務の煩雑さを考慮して、購入時に一括して仮払消費税を計上することも容認されています。
どの処理を行うにしても、継続して同じ処理を行うことが前提です。また、一定額の購入は良いのですが、期末に大量に購入すると税務調査で理由を問われる可能性があるので避けることが無難でしょう。会計と消費税の取り扱いについて正しく理解し、適切な処理が行えるようにしてください。
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