勘定科目とは?仕訳の分類で迷わない科目一覧表を紹介
帳簿を作成する上で理解しておきたいのが「勘定科目」です。分かりやすく、集計しやすい経理を進めるためには、勘定科目が重要になります。しかし、いざ取引の仕訳をしようとしても、どのような勘定科目を使えばよいか迷ってしまう方も少なくないでしょう。
この記事では、勘定科目の概要や種類などを区分ごとに詳しくご紹介します。
勘定科目とは
勘定科目とは、企業がどのような取引を行ったか、帳簿に記載する際に分かりやすく分類するために使うものです。複式簿記であれば、必ず取引を資産・負債・純資産・収益・費用に分類される勘定科目に置き換えて借方と貸方に仕訳します。基本的に勘定科目は、どの企業であっても共通したものを使います。
勘定科目が必要な理由
勘定科目は、簿記を進める上で欠かせません。取引を勘定科目で分類することで、誰が仕訳をしても決められた形式で帳簿を作成できるからです。どのような取引があったのか、客観的にも理解しやすくなるという特徴があります。
また、各勘定科目は日計、月計、年度計などで集計し、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成します。財務諸表にも勘定科目が記載されますので、最終的に決算書類や確定申告書類、消費税納税申告まで影響する重要なものといえるのです。
勘定科目は任意の科目を設定できる
基本的にはどの企業でも主な勘定科目は共通しています。しかし、勘定科目を自由に設定したり、新たに作成したりして使うことも可能です。自社の取引の特徴に合わせたり、科目をより詳細化したりすることもできます。そのため、同じような取引であっても自社と他社の勘定科目が違っているケースは少なくありません。
ただし、自由度があるとはいえ、財務諸表は外部に提示する機会もありますので一般的に使われている範囲内で利用することがよいでしょう。また、勘定科目を設定した後は「継続性の原則」として基本的に途中変更をしません。会社の業務形態が変わるなど一部例外はあるものの、一度決めた勘定科目はその先も使い続けることになります。
主要な勘定科目
勘定科目は「簿記の五要素」といわれる「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つグループに分けられます。「資産」「負債」「純資産」の3つは貸借対照表に関係するもので、「収益」「費用」は損益計算書に関係する科目です。具体的にどのようなものがあるか、よく使われている主要な科目についてご紹介します。
資産に分類される勘定科目
資産は、企業が所有する財産や将来的に財産、収益をもたらすと予想されるものです。「売掛金」は将来的に現金など対価が回収できるものですから、資産に該当します。
さらに、資産は「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに分けられます。区分としては次のとおりです。
- 流動資産・・・1年以内に現金として回収されるもの
- 固定資産・・・1年を超えて現金として回収されるものや長期間使用することを目的として保有するもの
- 繰延資産・・・一定の要件を満たした費用を資産化したもの
<資産となる勘定科目一覧>
区分 | 勘定科目(日本語) | 勘定科目(英語) | 内容 |
---|---|---|---|
流動資産 | 現金 | Cash | 会社で保管している現金 |
預金 | Deposit | 会社の普通預金、当座預金、定額預金など | |
売掛金 | Trade accounts receivable | 売上債権(後日回収予定のもの) | |
受取手形 | Trade notes receivable | 約束手形、為替手形など | |
商品 | Merchandise | 販売予定の商品 | |
固定資産 | 建物 | Buildings | 会社所有の事務所、店舗、倉庫、工場など |
土地 | Land | 会社所有の土地(取得原価) | |
工具器具備品 | Tools, furniture & fixtures | 事務机、椅子、書棚、パソコン工具など | |
機械装置 | Machinery and equipment | 工場設備、機械など | |
車両運搬具 | Vehicles | 会社所有の自動車、バス、二輪車など | |
ソフトウェア | Software | 自社開発または購入したソフトウェア | |
投資有価証券 | Investment securities | 長期間保有の他社株式や債券 | |
繰延資産 | 開業費 | Start-up costs | 起業のためにかかった費用 |
開発費 | Development expense | 技術開発にかかった費用 | |
株式交付費 | Stock issuance cost | 株式発行ためにかかった費用 |
負債に分類される勘定科目
負債は、企業が支払義務を負っているもの、将来的に費用や損失になると予想されるものです。「買掛金」は期日までに支払義務を負っているものであるため、負債に該当します。
さらに、負債は「流動負債」「固定負債」の2つに分けられます。区分としては次のとおりです。
- 流動負債・・・1年以内に支払い期限が到来するもの
- 固定負債・・・1年を超えて支払い期限が到来するもの
<負債となる勘定科目一覧>
区分 | 勘定科目(日本語) | 勘定科目(英語) | 内容 |
---|---|---|---|
流動資産 | 買掛金 | Accounts payable | 仕入れに対しての支払債務 |
支払手形 | Notes | 期日までの支払債務 | |
未払金 | Accounts payable – other | 対価やサービスへの未払い | |
未払費用 | Accrued expenses | 当期計上の費用に対して未払いのもの | |
短期借入金 | Short-term loans payable and long-term debt with current maturities | 返済期日が1年以内の借入金 | |
未払消費税 | Consumption tax payable | 確定消費税の未払い分 | |
未払法人税等 | Income taxes payable | 確定法人税の未払い分 | |
固定負債 | 長期借入金 | Long-term debt | 返済期限が1年超の借入金 |
退職給付引当金 | Employees’ pension and retirement benefits | 将来支払う退職金のうちすでに発生したもの | |
社債 | Bonds | 企業が発行した債券 |
純資産に分類される勘定科目
純資産は、企業の純粋な資産であり、返済する必要がないものです。資本金などが該当します。貸借対照表において、純資産は資産から負債を引いたものとなります。資本金など事業の元手になるものであるため、純資産が多いほど安定した企業であるといわれています。
資産 | 負債 | |
純資産 |
<純資産となる勘定科目一覧>
区分 | 勘定科目(日本語) | 勘定科目(英語) | 内容 |
---|---|---|---|
純資産 | 資本金 | Capital stock | 事業の出資金、増資など |
資本剰余金 | Capital surplus | 資本金にしていない出資金など | |
利益剰余金 | Retained earnings | 当期純利益の累積額 | |
自己株式 | Treasury stock | 株式発行後に自社で買い戻した株式 |
収益に分類される勘定科目
収益は、企業が得た収入のことです。事業によって得た収入はもちろん、事業以外の収入も含みます。それぞれ「売上高」「営業外収益」「特別利益」に分けられます。区分としては次のとおりです。
- 売上高・・・企業が本業の事業によって得た収入
- 営業外利益・・・本業以外で得た収入
- 特別利益・・・本業以外でスポット的に発生した収入
<収益となる勘定科目一覧>
区分 | 勘定科目(日本語) | 勘定科目(英語) | 内容 |
---|---|---|---|
売上 | 売上高 | Sales | 事業で得た売上 |
売上値引 | Sale returns and allowances | 売上の返品や値引 | |
営業外収益 | 受取利息 | Interest income | 預金等の利息 |
受取配当金 | Dividend income | 株式などの配当金 | |
貸倒引当金戻入額 | Reversal of allowance for doubtful accounts | 前期分の貸倒引当金の戻入 | |
雑収入 | Miscellaneous income | 手数料や補助金などの収入、還付金など | |
特別収益 | 固定資産売却益 | Gain on sale of property, plant and equipment and intangible assets | 売却額が帳簿価格を上回った差額 |
有価証券売却益 | Gain on sale of securities | 有価証券の売却益 |
費用に分類される勘定科目
費用は、事業を行うための支出です。交際費や地代家賃といった事業のための経費だけでなく、支払い利息や固定資産売却損といった事業以外で発生した費用(損失)も含まれます。
費用は「売上原価」「販売費および一般管理費」「営業外費用」「特別損失」の4つに分けられます。区分としては次のとおりです。
- 売上原価・・・売上の原価(仕入れ)
- 販売費及び一般管理費・・・一般的な経費
- 営業外費用・・・事業以外で支出した費用。支払利息など
- 特別損失・・・事業以外でスポット的に支出したもの
<費用となる勘定一覧>
区分 | 勘定科目(日本語) | 勘定科目(英語) | 内容 |
---|---|---|---|
売上原価 | 仕入高 | Purchases | 商品・製品などの仕入れ |
販売費及び一般管理費 | 給料 | Salaries expense | 従業員の給与 |
法定福利費 | Legal welfare expenses | 労働保険、社会保険負担金など | |
地代家賃 | Rent expenses | テナント・倉庫などの家賃 | |
広告宣伝費 | Advertising expense | 広告掲載、パンフレット、看板など | |
水道光熱費 | Utilities expense | 電気、ガス、水道など | |
交際費 | Entertainment expense | 事業のための接待飲食費、贈答品、慶弔など | |
車両費 | Vehicle expenses | 車両整備費など | |
旅費交通費 | Traveling expense | 出張時の交通費や宿泊費など | |
通信費 | Communication expenses | インターネット、切手、携帯電話料など | |
消耗品費 | supplies expenses | 固定資産以外の備品、文具など | |
諸会費 | Member dues | 年会費など | |
支払手数料 | Commission fee | 振込手数料、その他手数料 | |
租税公課 | Taxes and dues | 印紙税、固定資産税など | |
減価償却費 | Depreciation expense | 固定資産の年度算出分 | |
営業外費用 | 支払利息 | Interest expense | 借入金利息 |
雑損失 | Miscellaneous loss | 現金過不足など | |
特別損失 | 固定資産売却損 | Loss on sale of property, plant and equipment and intangible assets | 固定資産を帳簿価格よりも低く売却したときの差額 |
有価証券売却損 | Loss on sale of securities | 有価償却の売却損 |
勘定科目は仕訳から決算書に使われる
上記でご紹介した勘定科目以外にも、さまざまな科目があります。日々の仕訳を適切な勘定科目で処理することは、貸借対照表や損益計算書、消費税申告書などの決算書類を正しく作成することにつながります。そのため、日頃から正確な経理処理を行うことが大切です。
特に、複数の担当者が分業して仕訳を行うときは、別々の勘定科目を使うことがないように、明確にルールを決めて進めましょう。
まとめ
今回は勘定科目について、その必要性や種類などについてお伝えしました。経理担当者であれば、勘定科目の種類についてできるだけ幅広い知識を持つことが求められます。頻度が高いものはもちろん、頻度が低い科目もスムーズに対応できるように、しっかりと把握しておきましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。