損益分岐点分析とは?計算方法と活用方法をわかりやすく解説
損益分岐点分析は財務分析の指標の1つです。経営状況の把握や戦略を立てる際に活用される重要な指標です。今回は損益分岐点分析の基本から活用方法まで紹介します。
損益分岐点分析で何が分かる?
財務分析手法の1つに損益分岐点分析があります。
損益分岐点分析(CVP分析)は管理会計上の分析指標の1つです。CVPとは、「Cost(コスト)」、「Volume(ボリューム)」、「Profit(利益)」の頭文字を取ったものです。損益分岐点分析を知るには、まず、損益分岐点が何かを知らなければなりません。
損益分岐点とは、その名の通り、会社の損益がプラスでもなくマイナスでもなく、ゼロになる状態のことを意味します。会社の損益がゼロというのは、費用の合計と売上高の合計が同じ金額の状態です。損益分岐点売上高といって、損益分岐点の状態のときの売上高を主に用います。
後に説明しますが、費用は変動費と固定費に分けられます。そのため、損益分岐点売上高は次の計算式で計算されます。
さらにこの式を展開すると以下のようになります。
損益分岐点売上高=固定費 / (1-変動費)
たとえば、損益分岐点売上高6,000万円=変動費3,000万円(変動費率50%)+固定費3,000万円の状況があったとします。その状況で、売上高が20%増えると利益はどれくらい増えるでしょうか?
答えは、下記の通りです。
次に、損益分岐点売上高6,000万円=変動費4,500万円(変動費率75%)+固定費1,500万円というケースで600万円の利益を出そうとすると、いくらの売上高が必要となるでしょうか?
答えは、下記の通りです。
このように固定費や変動費の状況によっては、売上高を少し増やせば利益が大きく増えるようなこともあり、利益を大きく増やすには、売上高も相当増やさないといけないようなケースも考えられます。損益分岐点分析を行い、売上高、費用と利益の関係を理解することによって、さまざまなシミュレーションをすることができ、経営施策を講じることができます。このように経営を行う上で必ず必要となってくるのが損益分岐点分析なのです。
固定費・変動費とは?
損益分岐点分析を行うためには、まず、費用を固定費と変動費に分解する必要があります。
固定費とは売上や生産量に左右されず発生する費用、変動費とは売上や販売量、生産量に応じて発生する費用となります。固定費の主なものとしては、地代家賃や従業員の人件費などとなります。
たとえば、売上や生産量が減ったとしても、すぐに地代家賃や人件費を減らすことはできません。そのような費用が固定費です。変動費は材料費や加工の外注費などとなります。材料費や外注費は売上や生産量の増減に応じて変動させることができます。どちらとも区別できないようなものもありますが、そこは経費の発生態様を見て、どちらかに区分していきます。
損益分岐点比率、安全余裕率とは?
損益分岐点分析をするには、「損益分岐点比率」や「安全余裕率」を用います。
損益分岐点比率とは
損益分岐点比率は、ある期における実際の売上高と損益分岐点売上高との関係を測る指標で、下記の通り計算します。
たとえば、損益分岐点売上高が6,000万円で、実際の売上高が8,000万円だったとします。
このときの損益分岐点比率は75%となります。これは仮に実際の売上高が25%下回った売上高が損益分岐点売上高と同じであったということを示しています。これからすると、損益分岐点比率は低い方が良く、もし100%を超えていれば赤字であったということとなります。
安全余裕率とは
安全余裕率は、損益分岐点比率の裏返しで、下記の通り計算します。
つまり、先ほどの事例であれば、25%が安全余裕率となります。これは売上高がどの程度変動すれば損益分岐点売上高となるかを見る指標です。そのため、安全余裕率は高い方が経営は安定することとなります。損益分岐点比率が増加すれば、安全余裕率は減少するため、覚えやすいでしょう。
損益分岐点分析の活用方法
企業が利益を増やすには、売上を増やすか、費用を減らすかの二つの方法だけです。とはいえ、売上を増やすためには営業のための経費が増えることも考えられます。そのため、損益分岐点分析を用いて、将来的に予測される費用を計算し、利益を増やすにはどれだけの売上が必要なのかを把握します。
売上増加のために広告費を増やした場合、その効果でどのくらい売上が確保されれば利益が増やせるのか、利益計画を達成できるのかをシミュレーションできるわけです。
逆に、費用を減らす予測をした場合、利益にどれだけ貢献できるかも知ることができます。
まずは、売上の増減にかかわらず必要な固定費を削減することを想定します。家賃や保険、人件費など安易に削減できないものもありますので、現実的に対応できるもので分析します。
次に変動費として、製造原価や仕入れ単価の見直しなどです。仕入れ価格は利益に直接的に影響します。仕入れルートの見直し、品質を確保した代案の商品仕入れなどあくまで企業の評価を下げることなく、損失にならない方法を検討しましょう。
損益分岐点分析を行う際の注意点
損益分岐点分析をして、損益分岐点比率や安全余裕率を見て、それで終わりということではありません。肝心なのは分析の結果を活用することです。業種や業態、事業規模などによって特徴があり、損益分岐点比率などの適正な水準というのはさまざまですが、いずれにしても損益分岐点比率は低い方がよいでしょう。そのため、固定費を削減したり、変動費率を低くしたりするなど損益分岐点比率を低くするための改善を日々考えていくことが大切です。
また、固定費や変動費というのは一度決めたらそれで終わりではなく、事業活動を行っていく中で変わっていくものです。そのため、一度、自社の損益分岐点分析をしたら終わりなのではなく、常に最新の情報で分析を続けることが必要です。
経理プラス:損益分岐点とは?具体的な計算方法と分析方法を分かりやすく解説
まとめ
財務分析の基本の損益分岐点分析について解説しました。損益分岐点分析は、それほど複雑なものではないですが、売上、費用、利益の関係を表すものであり、利益をあげなければならない会社にとって、とても重要なポイントです。目標利益をあげるためには売上をどうすればいいのか、費用をどうすればいいのか、これをもとに考えることができることがたくさんあるので、ぜひ活用してください。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。