償却資産申告書で迷わない!具体的な書き方、手続き方法を紹介!

償却資産申告書で迷わない!具体的な書き方、手続き方法を紹介!

個人・法人を問わず、事業のために機械装置や器具備品などの償却資産を所有する場合、所有者自らが所在する市町村へ「償却資産申告書」を提出し納税しなくてはいけません。ここでは償却資産申告書の目的や対象となる資産、標準税率といった基礎的な知識から具体的な書き方、そして注意するポイントなど実務に役立つ内容をご紹介します。

償却資産申告書の目的、対象となる資産、対象外の資産

土地や建物を所有すると固定資産税が課税されます。同様に、事業に所有する償却資産に対しても税金を支払わなくてはいけません。

固定資産税は登記簿に基づいて所有者へ納税通知書と納付書が送付されますが、償却資産税は所有者自らが対象となる資産を申告する必要があります。これは、償却資産には土地や建物のような登記制度がなく、市町村では資産内容の把握が困難なためです。

実は償却資産にかかる税金も固定資産税の一部であり、償却資産税という名前の税金はありません。便宜的に土地や建物は固定資産税、それ以外は償却資産税と区別して呼んでいます。

対象具体例
固定資産税土地、建物
償却資産税構築物駐車場舗装、フェンス、門、塀など
機械装置各種製造機械、太陽光発電設備など
車両および運搬具大型特殊自動車など
工具、器具、備品パソコン、エアコンなど

償却資産税の対象となる資産は、「土地建物以外の事業の用に供する資産で減価償却するもの」とされています。一方、ソフトウェアなどの無形固定資産は課税対象外ですので注意しましょう。

<償却資産税の対象にならないもの>

  • 10万円未満の物品
  • 10万円以上20万円未満の一括償却資産
  • ソフトウェアなどの無形固定資産
  • 自動車、軽自動車など自動車税等の対象車両

なお、一括償却資産とは取得額が10万円以上20万円未満の資産で法人税法上は3年間の均等償却を行います。一括償却資産の詳しい説明については下記URLを参照ください。

経理プラス:一括償却資産はどう扱う?償却資産税の取扱いは?

標準税率、賦課期日とは?申告書の提出期日

償却資産税は毎年1月1日(賦課期日)に、会社等が所有する資産について課税されます。税率は課税標準額の1.4%を乗じて計算されますが、課税標準額の合計が150万円未満の場合は課税されません。

申告は償却資産が存在する市町村に行います。ただし、前年に申告を行っている場合は12月中に申告書の用紙が郵送されてきます。申告書は各市町村のホームページからもExcelなどでダウンロードできますので、初めての場合はこちらを利用しましょう。なお、申告書の提出期限は1月31日です。申告しなかったり虚偽の申告を行ったりした場合は、地方税法で定める罰則の対象となります。

課税標準額の決め方

償却資産の評価額は、所有者からの申告に基づき取得年月、取得価額、耐用年数から定率法によって計算します。耐用年数別の減価率(償却率)は、耐用年数表(財務省令)によって決められています。

<前年中に取得した資産(半年分のみ償却)>
評価額 = 取得価額 ×(1-減価率 ÷ 2)
<前年前に取得した資産>
評価額= 前年度の評価額 ×(1―減価率)

なお、評価額の下限は取得額の5%です(最低限度額)。

中古資産を取得したときは使用可能年数を見積もり、その年数を耐用年数とすることができます。使用可能年数の見積もりが困難な場合は、経過年数を考慮して算出する簡便法で計算します。通常は「評価額=決定価格=課税標準額となりますが、公害防止設備などの要件を満たすものは軽減制度がありますので課税標準額にそれを加味します。課税標準額は千円未満を切り捨て記載します。

2007年(平成19年)までは評価額と帳簿価額を記載し、高い方を決定価格としていました。しかし、2008年以降は帳簿価額と比較することなく、評価額=決定価格となります。

具体的な書き方例の紹介

償却資産の申告には「一般方式」と「電算処理方式」の2種類があります。一般方式は、償却資産の増加と減少のみを申告し、評価額の算出は市役所等で行います。また、電算処理方式は、すべての償却資産を申告し、評価額の計算も申告者側で行います。

償却資産の増減のみを報告する一般方式の方が簡易的です。製造業など管理する資産が多く、固定資産管理システムを導入している企業は電算処理方式が良いでしょう。なお、申告書には「種類別明細表(増加資産)」「種類別明細表(減少資産)」「償却資産申告書(償却資産課税台帳)」の3種類があります。

種類別明細表(増加資産)

会計ソフトやエクセルで管理している固定資産台帳から、前年中に取得した償却資産を記載します。記載する項目は資産の種類、資産の名称、数量、取得年月、取得価額、耐用年数、増加理由です。

種類別明細表(減少資産)

同様に、前年中に売却や処分した資産があればこちらに記載します。記載する項目は資産コード(抹消コード)、資産の名称、所得年月、取得価額などです。

償却資産申告書(償却資産課税台帳)

償却資産申告書の上部は、提出日、会社の住所、会社名、法人マイナンバー、担当者名と連絡先などを記入。下部は「前年前に取得したもの」「前年中に減少したもの」「前年中に取得したもの」について、資産種類別に金額を記載する欄があります。前回提出した償却資産申告書や種類別明細表の増加、減少を参考に数字を入力します。

償却資産申告書は前年提出した申告書との整合性、種類別明細表の増加明細・減少明細の合計欄との一致を必ず確認しましょう。

提出方法、修正方法、遅れた場合の対応

申告書の提出方法は、市役所等へ郵送または窓口へ持参します。資料がそろっていれば償却資産申告書に受付印を押してくれますので、控えが必要な場合はコピーを1枚持参すると良いでしょう。

市町村ではこの償却資産申告書をもとに税額を算出し、6月上旬までに納付書が送付されます。通常、納付は4回(6月、9月、12月、翌年の2月)に分けて行い、口座振替等も可能です。

提出後に誤りがあった場合は、償却資産申告書の上部余白に「修正」と記載し修正後の金額を記入します。種類別明細表の増加資産、減少資産の申告書も同様に修正し、摘要欄に理由を記入しましょう。納付書が届いた後であっても、納付書の追加発行などの対応をしてくれます。誤りが判明した場合は市町村の窓口(資産税課など)へ相談してみてください。

また、提出が遅れそうな場合も、まず市町村の窓口に電話で相談してみましょう。1か月程度の遅れであれば、問題なく受理してくれることが多いはずです。償却資産申告書作成について重要なポイントをQ&A方式でご紹介していますので、下記も参考にしてください。

経理プラス:償却資産税のQ&A ―経理担当者ならマスターしたい、償却資産の対象と対象外の重要ポイント―

まとめ

償却資産申告書の対象となる資産や対象外の資産、標準税率など基本的な知識や申告書の作成、提出の流れといった実務手順について解説しました。12月の決算は、翌1月の1週目で締まる企業も多いでしょう。決算締めから申告までは3週間程度しかありませんので、事前にしっかりと準備をしておいてください。

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。