敷金の勘定科目は?意外と悩む不動産賃借時の敷金の会計処理

敷金の勘定科目は?意外と悩む不動産賃借時の敷金の会計処理

オフィスや店舗として不動産を借りる時、経理担当者が頭を悩ませがちなのが「敷金」の会計処理です。契約時に家賃の数カ月分として発生する「敷金」ですが、その契約形態により支払い処理が異なるという性質があります。

今回は、不動産の賃貸借の際に必要な敷金の勘定科目や仕訳例、決算書における位置付けなどを、実例を交えて分かりやすく解説します。一度頭に入れておけば、難しくありませんよ。

会計処理における敷金の位置付け

そもそも、敷金とはなにか説明できますか?

敷金とは、家賃などの担保として預けておく保証金のようなものです。退去の際には、原則として全額返金され、もし損害がある場合は、修理費分を差し引いた額が返金されます。

このように、敷金は単にサービスの対価として支払う金額ではなく、場合によっては残金が返却されることもあるため、経理担当者にとって会計処理に注意が必要な金銭です。

契約書の内容によって勘定科目が異なる

敷金の勘定科目は、契約書の内容によって異なります。基本的には、「敷金」か「差入保証金」という科目を用います。退去時に返金されなかった部分の費用は、「修繕費」か「雑損失」を用いて必要経費として計上しましょう。

しかし、契約内容によっては、退去のタイミングで敷金の一部を償却することが定められている場合もあります。敷金の返金額が一定に決まっているタイプの契約です。この場合は、「長期前払費用」「権利金」といった勘定科目で計上することになります。ちなみに、戻らない敷金や保証金のことを「敷引き」「解約引き」と呼ぶこともあります。

会計処理をする際、「敷金」と「差入保証金」のように、並列で紹介した勘定科目はどちらを用いても構いません。しかし、一度設定したものは後で変更しないようにしましょう。

決算書(財務諸表)における敷金の表示

敷金・保証金は、賃借対照表の「資産の部」に該当する勘定科目です。「投資その他の資産」に表示されます。

保証金同様、退去時には返金されるものだから、と考えると分かりやすいですね。

敷金の仕訳例

では、敷金に関する仕訳を具体的に見ていきましょう。

1:敷金を支払った場合

まずは、敷金支払い時の仕訳。
オフィスを賃貸するにあたって、敷金800,000円を現金で支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

借方金額貸方金額
敷金800,000円現金800,000円
計上時期は、支払いを行ったタイミングです。  

2:敷金が返還される場合(一部修繕費等に充当される場合)

退去した時に、原状回復費用として支払った敷金800,000円から200,000円控除されて普通預金に振り込まれた場合の仕訳は以下のとおりです。

借方金額貸方金額
普通預金600,000円敷金800,000円
修繕費200,000円

3:敷金の40%が退去時に償却される場合

普通預金から支払った敷金1,000,000円のうち、40%が退去時に償却される契約内容の場合の仕訳は以下のとおりです。

借方金額貸方金額
敷金600,000円普通預金1,000,000円
長期前払費用400,000円

ちなみに、敷金から償却されるのが200,000円未満の場合は、複数年で償却せずに、「支払い手数料」として一括損金計上が可能という特例もあります。

敷金の税務上の取り扱い

敷金の金額のうち、控除する金額が契約書で明示されている場合は、その金額は延資産「建物賃貸借権利金」として扱われ、5年間の均等償却が可能です。

たとえば、上記3の例を償却する場合は、毎年以下のように仕訳します。

  • 1年目
    借方金額貸方金額
    敷金償却80,000円長期前払費用80,000
  • 2年目…これを5年間続ける
    借方金額貸方金額
    敷金償却80,000円長期前払費用80,000円

また、敷金は消費税の観点からも特殊な扱いを受けます。一般的に、敷金を支払った際は消費税の対象外です。しかし、返還されない金額や、返金時に控除される額がはっきりしている場合、その部分については仕入税額控除の対象となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?敷金の処理は、ポイントを理解できれば簡単なもの。この記事で考え方を頭に入れておけば、実務で必要になった際も、焦らずに対応できますよ。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。