ポイント解説!経理責任者が把握しておくべき会社法
経理責任者は、経理部門のマネジメントのほか、経営者や各事業責任者が進めるプロジェクトに経理視点でのサポートや参画をすることがあるため、会計や税務のほか、さまざまな知識を有しておく必要があります。その例としてもっとも重要なものの1つが「会社法」です。
今回は、会社法をあまり勉強したことがない経理責任者、経理責任者を目指す人のために、必要な項目に絞ってポイントを解説いたします。
会社法とは?
会社法とは、会社の設立・解散、組織、運営、資金調達(株式、社債等)、管理など、会社の行為に関するルールを幅広く定めたものです。
会社法の主な目的は「株主保護」と「債権者保護」であり、会社の各行為について両観点からの規制を定めています。
過去は「商法」「商法特例法」「有限会社法」などの法律に分散されて定められていましたが、2006年5月よりその大部分が「会社法」に一本化され、国民にとって分かりやすい法律に進化し続けています。
会社法の知識が必要になる主な場面
日々の業務の中で会社法の知識を使っていると感じることは多くないかもしれませんが、経理責任者となると下記のようなプロジェクトに参画し経理周りの手続きを担当することが一般的であることから、少なからず会社法の知識がないと仕事が回らなくなってしまいます。そこで、実際に会社法の知識が必要になる主な場面を考えてみましょう。
銀行からの借入
銀行借入はその借入金額に応じて決裁者(決済機関)が異なることがありますが、その決裁者(決済機関)に関するルールは会社法に定められています。
計算書類および事業報告の作成
法定書類である計算書類および事業報告を作成するときが、経理部門の方がもっとも直接的に会社法(会社法計算規則、会社法施行規則を含む。)と触れ合う場面です。計算書類および事業報告の作成根拠、記載要領は会社法に定められています。
監査役、会計監査人による監査
計算書類および事業報告は、毎年監査役および会計監査人による監査を受けますが、その監査スケジュールに自由度は少なく、会社法に定められた厳しいスケジュールの中で進めていく必要があります。
M&A(買収・合併)
M&Aを実行する際、自社だけに限らず、相手方に必要な手続きも踏まえた上でスケジュールを組み、手続きを進める必要があります。M&Aの実行に必要な株式発行、株式取得、合併、会社分割、事業譲渡等に関する手続きは会社法に定められています。
経理責任者が最低限覚えておくべき会社法はコレだけ
会社法は1~979条までと相当な分量がありますが、経理責任者が最低限覚えておくべき会社法は下記に絞られます。
会社法の全体像と経理責任者が覚えておくべき項目
〇必ず理解しておきたい項目
▲一度は読んでほしい項目
第一章 通則
第二章 会社の商号
第三章 会社の使用人等
第四章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等
第二編 株式会社
第一章 設立
第一節 総則
第二節 定款の作成
第三節 出資
第四節 設立時役員等の選任及び解任
第五節 設立時取締役等による調査
第六節 設立時代表取締役等の選定等
第七節 株式会社の成立
第八節 発起人等の責任等
第九節 募集による設立
第二章 株式
▲第一節 総則
▲第二節 株主名簿
▲第三節 株式の譲渡等
▲第四節 株式会社による自己の株式の取得
第五節 株式の併合等
▲第六節 単元株式数
第七節 株主に対する通知の省略等
▲第八節 募集株式の発行等
第九節 株券
第十節 雑則
第三章 新株予約権
▲第一節 総則
▲第二節 新株予約権の発行
第三節 新株予約権原簿
第四節 新株予約権の譲渡等
第五節 株式会社による自己の新株予約権の取得
第六節 新株予約権無償割当て
▲第七節 新株予約権の行使
第八節 新株予約権に係る証券
第四章 機関
〇第一節 株主総会及び種類株主総会
第二節 株主総会以外の機関の設置
▲第三節 役員及び会計監査人の選任及び解任
〇第四節 取締役
〇第五節 取締役会
第六節 会計参与
〇第七節 監査役
〇第八節 監査役会
〇第九節 会計監査人
第九節の二 監査等委員会
第十節 指名委員会等及び執行役
第十一節 役員等の損害賠償責任
第五章 計算等
〇第一節 会計の原則
〇第二節 会計帳簿等
〇第三節 資本金の額等
〇第四節 剰余金の配当
〇第五節 剰余金の配当等を決定する機関の特則
第六節 剰余金の配当等に関する責任
〇第六章 定款の変更
▲第七章 事業の譲渡等
第八章 解散
第九章 清算
第三編 持分会社
第一章 設立
第二章 社員
第三章 管理
第四章 社員の加入及び退社
第五章 計算等
第六章 定款の変更
第七章 解散
第八章 清算
第四編 社債
第五編 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転
第一章 組織変更
▲第二章 合併
▲第三章 会社分割
▲第四章 株式交換及び株式移転
▲第五章 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転の手続
第六編 外国会社
第七編 雑則
第一章 会社の解散命令等
第二章 訴訟
第三章 非訟
第四章 登記
第五章 公告
第八編 罰則
まとめ
いかがでしたでしょうか?会社法の条文は膨大な量がありますが、実際に実務でつかう条文はその中の一部に過ぎません。ポイントを絞って勉強すれば時間はかからないので、ぜひ取り組んでみてください。
推薦図書
【初心者】柴田和史『ビジュアル図で分かる会社法』
【実践】江頭憲治郎『株式会社法』
【実践】相澤哲『論点解説新・会社法 千問の道標』
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。