子会社とは? 親子会社間取引の会計処理、グループ法人税制を解説!

子会社とは? 親子会社間取引の会計処理、グループ法人税制を解説!

親子会社とは何か?

ある会社(A社)が他の会社(B社)の株式の過半数を持っていれば、株主総会における議決権も過半数を持っていることになります。このような場合には、B社の重要な事項についてA社が意思決定をすることができます。つまり、B社はA社の支配従属関係にあります。このような関係にある場合において、支配する側のA社を親会社、支配される側のB社を子会社といいます。

親子会社化することによる税制上のメリット・デメリット

原則として株式の過半数を持っていれば親子会社の関係となりますが、法人税制においては原則として完全支配関係にあるかどうか、つまり、ある会社が他の会社の100%株式を直接的または間接的に保有しているかどうか、が一つの基準となります。そのような関係にある場合は、グループ法人税制が適用されますし、事前の申請により連結納税を行うことができます。

後述しますが、グループ法人税制が適用されれば、グループ間での取引は原則として課税されないこととなります。そのため、これを利用して、グループ内の法人間で資産を移転・再配置して効率的な経営を行ったり、配当などで資金を移転させて効率的なキャッシュ・マネジメントを行ったりするようなことができます。

また、赤字が続く会社と黒字が続く会社があるような場合で連結納税を行うと、グループ内の赤字と黒字を通算した上で、法人税を支払うことができます。連結納税を行っていないと、赤字の会社の税金は生じませんが、黒字の会社は.黒字に対して課税されてしまいます。

一方で、親子会社化することのデメリットもあります。
一定の大法人の100%子会社等は、法人税等の計算にあたって、軽減税率や交際費等の損金不算入制度の定額控除制度などの中小企業向け特例措置を使えなくなるなどのデメリットがあります。

また、連結納税にしても、開始する際も資産の時価評価が必要となるなど手続きが複雑ですし、その後の毎年の申告計算も複雑です。さらに一度適用すると原則として継続して適用しなければなりませんので、メリットがなくなったから止めるということもできないのです。

親子会社間の取引で適用されるグループ法人税制とは?

グループ法人税制とは、原則として100%資本関係(完全支配関係)にある企業グループを一体の企業とみなして課税しようとする制度のことをいいます。

A社とB社の企業グループでグループ法人税制が適用される場合、このA社とB社を一体として考えます。つまり、A社からB社へ資産を譲渡したとしても、それはグループの中(一体の中)での取引なので、そのような資産の譲渡による損益は税金の計算上は考慮しません。具体的には、帳簿価額が1,000万円以上の一定の固定資産、土地、有価証券、金銭債権や繰延資産などをグループ内で譲渡したときに生じた損益は、課税が繰り延べられます。これにより、課税されることを気にすることなく、グループ間で資産の再配置を行うことができますので、効率的な経営にも繋がります。
また、グループ内で配当をしたときや寄付をしたときも同様に、課税が生じないような調整が行われます。

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グループ会社間取引をする際の注意点

完全支配関係にはないグループ会社間で取引をする際には次のような点に注意が必要です。

親子会社の利益相反取引について

たとえば、親会社の取締役が子会社の代表取締役を兼任している場合に親子会社間で行われる取引は、親会社にとって利益相反取引になる可能性があります。利益相反取引とは、自社と取引先の利益が相反する取引をいいます。

この場合、子会社の代表取締役は親会社の利益を害するような取引を行う可能性が考えられます。取締役が利益相反取引を行う場合は、株主総会や取締役会の承認が必要です。特にどちらかに有利な取引でなくても、外形上、利益相反取引に当たる場合は、原則として承認が必要なので、手続が漏れないように注意が必要です。

グループ間の貸付について

貸し借りを行った場合は、通常、利息が生じます。その利息が不当に高く設定されていたり、低く設定されているような場合は、当事者間での利益の移転が行われたものと考えられる可能性があるため、グループ間の貸付に際しては適切な金利を設定することが必要です。

グループ間の寄付について

完全支配関係にないグループ会社間で寄付を行った場合は、原則として、寄付金の損金不算入の対象となり、課税される可能性があります。

グループ間の資産譲渡について

金利の設定と同様に、グループ会社間で資産譲渡を行った場合、その取引価格が不当に高く設定されていたり、低く設定されているような場合は、利益の移転があったものとして寄付金とみなされる可能性があります。グループ間で取引を行う場合の取引価格は合理的な金額に設定する必要があります。

親子会社間の取引で税務署が注目するポイント

親子会社が完全支配関係にないときは連結納税を適用することはできませんし、グループ法人税制の対象ともなりません。つまり、親子会社間の取引は、他の企業と行った取引と同じように課税されることとなります。

一方で、親子関係にある会社で行う取引は、取引金額を比較的柔軟に決めることができてしまいます。たとえば、他の企業で同じ取引を行うときよりも高い金額または低い金額で取引を行ったようなときには、親子会社間で利益が移転しているというように捉えられる可能性があります。そのような場合は、親子会社間で寄付をしたことと同様の結果となるため、寄付金があったものとして課税されるようなことがあります。
親子会社間で取引を行ったとき、税務署は、その取引価格に注目することがあります。取引価格が合理的であるということをしっかりと説明できるようにしておきましょう。

まとめ

完全支配関係にあるグループ会社であれば、連結納税を適用することができたり、グループ法人税制を適用することとなったりしますが、いずれも複雑な税制です。連結納税にはメリット・デメリットがありますし、グループ法人税制にも様々な規定がありますので、まずはそれを把握しておきましょう。また完全支配関係にないグループ会社間では、通常と同じように課税されるため、特にその取引価格が妥当かどうかという判断が大切です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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