固定資産台帳とは?見方や作成方法、テンプレートを解説
固定資産台帳とは、所有するすべての固定資産データを網羅的に管理する書類のことです。決算書類の作成や法人税、償却資産税の申告といった固定資産に関連するあらゆる業務が、固定資産台帳に基づいて行われます。ここでは固定資産や減価償却費の意味など基本的な知識から、固定資産台帳の具体的な作成方法まで解説します。
固定資産とは?
会計上の固定資産とは、自社で1年以上継続して使用する(販売目的ではない)一単位あたり20万円以上の資産を指します。
固定資産は建物や機械装置のように使用や時の経過により価値が減少する「償却資産」と、土地や美術品といった価値が減少しない「非償却資産」の2つに分かれます。また、償却資産は物理的な形がある「有形固定資産」とソフトウェア、特許権などの「無形固定資産」に分かれる点を覚えておきましょう。
減価償却資産 | 有形固定資産 | 建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品 |
無形固定資産 | ソフトウェア、特許権、実用新案権、商標権など | |
非減価償却資産 | 土地、美術品、骨董品など |
通常、固定資産の金額基準は20万円以上です。ただし中小企業に対しては、取得額30万円未満の資産について取得額の合計額が年300万円に達するまで損金算入できるといった、税制上の優遇措置が設けられています。
減価償却とは?
建物や車両などの購入代金は、取得したときに全額費用計上することができません。使用や時間の経過によって資産の価値が減少する分を、徐々に費用化していきます。これが減価償却です。
会計の考え方として、「費用収益対応の原則」があります。たとえば10年間使用する機械装置を購入した場合、その機械は10年に渡って製品を製造し収益獲得に貢献します。そのため、費用も利用期間に応じて計上することで、正しい企業の業績を計算することができるのです。また、法人税法上も資産の取得に要した金額は取得時に一括費用計上することを認めておらず、その資産の使用可能期間に渡り分割して費用化することを求めています。
固定資産台帳の見方、作成方法
固定資産台帳で行う主な項目は以下の通りです。
- 減価償却資産の増加(取得)、減少(除却)の管理
- 減価償却費として費用計上する金額の計算(損益計算書)
- 期末簿価の計算(貸借対照表)
- 法人税申告書、償却資産税申告書の作成
固定資産台帳には決まったテンプレートがなく、会社によって多様です。機械装置など多くの資産を保有する製造業であれば、固定資産システムを導入する必要があります。しかし、管理する資産がそれほど多くなければエクセルのテンプレートで十分でしょう。
固定資産台帳の各項目
固定資産台帳は様式フリーですが、記載する項目はある程度決まっています。各項目について詳しくご説明しましょう。
資産番号、資産名
各資産に具体的な名称と資産番号を付与します。同じ資産を複数所有する場合は、資産番号を分けるなどしておくと管理しやすいでしょう。現物と固定資産台帳のアンマッチを防ぐため、現物資産に番号シールを貼り付けて識別できるようにするのがおすすめです。
資産の種類
一般的に、償却資産は建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、無形固定資産に大別されます。勘定科目や償却資産税の申告様式も上記区分なので、合わせて記載しておくと集計時に便利です。
数量(土地の場合は面積)
パソコンなどを複数台、同時期に購入した場合は、数量を記入します。
取得年月日
減価償却費は取得した月から計算しますので、取得年月の情報が必要です。なお、償却の開始は「事業の用に供した日」から行うことが原則となります。
耐用年数
会計上は、資産の使用期間等に応じて会社が任意に設定できるとされています。ただし、税法上は資産の種類や構造、用途によって一律に法定耐用年数が決められています。会計と税務で耐用年数が異なると処理が煩雑になることから、実務上は国税庁が定める法定耐用年数を使うことが多いでしょう。
償却方法
会計上で償却方法は複数認められていますが、税法上は以下の通りです。耐用年数と同様、実務上は税法上の償却方法に準ずることが多くなります。
資産区分 | 税法上認められる償却方法 |
---|---|
建物 建物付属設備 構築物 無形固定資産 | 定額法のみ |
機械装置 車両運搬具 工具器具備品 | 定額法または200%定率法 |
定額法は、耐用年数にわたり毎期同じ金額を減価償却する方法です。たとえば200万円の車両で耐用年数5年であれば、毎年40万円が償却されます。「取得額÷耐用年数=毎期の減価償却費」となり、分かりやすい償却方法と言えるでしょう。
200%定率法は、期首簿価に毎期定率をかけて減価償却計算する方法です。初期は大きく償却費が計上されますが、段々と減少していきます。
例)200万円の車両を5年で200%定率償却する場合(償却率0.4)
1年目:200万円×0.4=80万円
2年目:120万円×0.4=48万円
定額法による償却率を2倍することから「200%定率法」と呼ばれています。
定額法と定率法は、どちらも簿価1円まで償却を行います。なお、時々の税制改正によって償却方法は見直されますので注意が必要です。定額法や定率法の詳細な説明は、下記リンクをご参照ください。
経理プラス:減価償却とは?定率法と定額法の違いと計算方法を解説!
- 取得価額
- 期首帳簿価額
- 期中増加額、期中減少額
- 減価償却費
- 期末帳簿価額
運送費用などの不随費用も含めます。
前期末の貸借対照表残高と一致します。
増加額は期中に取得した価額、減少額は除却(廃棄)した簿価になります。
耐用年数、償却方法によって計算します。費用計上され、損益計算書へつながります。
期末における未償却残高です。貸借対照表の資産の部へ計上されます。
<固定資産台帳のテンプレート例>
固定資産台帳のテンプレートを下記に作成しました。フォーマットをお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください。
経理プラス:固定資産管理台帳テンプレート
まとめ
固定資産台帳は、決算や税務申告といった固定資産に関わる業務の基礎となるとても重要な帳簿です。誤りの内容正しく理解して、適切な資産管理に努めましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。