算定基礎届とは?算定方法や提出期限、注意点などを解説
算定基礎届は、従業員の社会保険料を決める大切な届出です。1年に1度必ず提出するものから、報酬に変動があった際に提出するものなどに分けられます。従業員の報酬を個別にチェックする必要があるため、業務が煩雑になるケースも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、算定基礎届の概要や算定方法、未提出の際の注意点などについてご紹介していきます。
算定基礎届とは
算定基礎届とは、毎月給与から差し引かれる健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料を算出するときの基になる「標準報酬額」を届け出ることです。
毎年1回、7月1日時点で労働者に支払った賃金を基にし、標準報酬額の基準となる賃金を4月、5月、6月の3か月間の平均額で計算されます。
算定基礎届は、被保険者である労働者の「実際の報酬額」と保険料を算出するときの基準となる「標準報酬額」に大きな差が生まれないために必要なものとされています。
対象者の範囲
算定基礎届の定時決定の対象者は、7月1日現在で被保険者である労働者全員です。休職中や長期欠勤、育児休業、介護休業などで会社を休んでいる人も対象となります。
例外として、以下のような要件に該当する場合は、対象外となります。
- 6月1日以降に被保険者となった人
- 6月30日以前に退職した人
- 7月に随時改定の月額変更届を出す人
定時決定
定時決定は、毎年7月に提出する算定基礎届です。すべての労働者が対象となるため、必ず作成し提出しなければなりません。上述で触れた通り、定時決定の基準となる報酬は4月、5月、6月の3か月と決まっています。
随時改定
随時改定は、昇給や降給などにより賃金が大きく変わる場合に行います。賃金が変わるとはいえ、1か月分だけ変わっただけでは随時改定の対象になりません。随時改定は次の要件に該当する場合に行います。
- 昇給や後給などで固定的賃金に変動があった
- 変動付きからの3か月間に支給された報酬の平均月額とこれまでの標準報酬月額に2等級以上の差が出た
- 3か月とも支払基礎日数が17日以上(短期労働者は11日)
上記の3つの要件にすべて該当した場合に、4か月目の標準報酬月額から改定されます。なお、「固定的賃金」にはどのような賃金が含まれるかは、後述で詳しくご紹介します。
算定基礎届の概要については、こちらの「社会保険料の算定基礎届で理解しておきたいポイント」で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
標準月額報酬の算定方法
算定基礎届に記載する標準月額報酬は、次の通りです。
対象となる報酬
通貨で支給される報酬
- 基本給(月給、日給、時間給、歩合給、歩合率など)
- 通勤手当
- 家族手当
- 住宅手当
- 役職手当
- 残業手当
- 休日手当
- その他手当
- 賞与、決算手当などで年4回以上支給のもの
現物で支給される報酬
- 通勤のための定期券、回数券
- 食事代など
- 社宅、寮など
対象とならない報酬
- 慶弔金(結婚や出産祝いなど)
- 公的保険給付(傷病手当や休業補償給付など)
- 一時的な賃金(退職金など)
- 旅費、交際費など ・賞与、決算手当などで年3回まで支給のもの
- 制服、作業着など ・食事や社宅で本人負担が一定以上のもの
固定的賃金について
固定的賃金とは、固定的に支給額または支給率が決まっているものを指します。月給に限らず、日給や時間給なども含まれます。固定的賃金は以下の方法で算出します。
固定的賃金は対象となる報酬を加算して算出する方法と、給与から非固定的賃金を差し引く方法でも算出ができます。
- 固定的賃金 = 総支給額 – 非固定的賃金
固定的賃金と非固定的賃金の区分は次の通りです。
固定的賃金 | 非固定的賃金 | |
---|---|---|
月給・週給・日給・時間給 | 残業手当 | |
役職手当 | 宿直手当 | |
家族手当 | 皆勤手当 | |
住宅手当 | 食事手当 など | |
寒冷地手当 | ||
通勤手当 など |
なお、随時改定では固定的賃金に変動があったときのみ届出が必要になります。
算定基礎届の作成方法
算定基礎届は4つのステップで作成します。
- 対象となる報酬と対象とならない報酬を区分
- 支払基礎日数を確認し、17日以上であることを確認
- 4月、5月、6月の対象報酬を合計し、平均額を算出
- 平均額から都道府県別の標準報酬月額保険料額表で等級を確認
ステップ2で、月の勤務日数が17日未満の場合は算定対象外となります。勤務日数が少ないと適切な平均月額報酬を算定できないため支払基礎日数が定められています。
算定基礎届の記載方法と提出期限
算定基礎届は、被保険者ごとに4月、5月、6月の3か月の報酬など記載して提出します。以前は「被保険者報酬月額算定基礎届総括表」も提出する必要がありましたが、令和3年度から提出は不要になりました。
記載内容の詳細については、日本年金機構のガイドブックを参考にしてください。
算定基礎届の提出期間は、例年7月1日から7月10日までとなっています。最終日の7月10日が土日祝などにあたる場合は翌日以降の開庁日となります。(詳細は管轄の年金事務所の情報をご確認ください)管轄の年金事務所窓口に提出、もしくは事務センターへの郵送で提出することも可能です。
算定基礎届は、用紙のほか、CD・DVDなどの電子媒体も可能です。また、電子政府の総合窓口であるe-Gov(イーカブ)も利用できます。
算定基礎届の未提出に注意
算定基礎届の定時決定や随時改定をうっかり忘れてしまった場合は、変更があったときまで遡って社会保険料が請求されることになります。また、場合によってはペナルティを課せられることになりますので、確実に手続きをしましょう。
社会保険は企業と個人が互いに負担しているわけですが、遡って請求されたとき個人からも徴収しなければならず、個人の負担にもなるため、未提出とならないように注意が必要です。
算定基礎届は随時改定のチェックを含めると、意外と手間がかかる実務です。自動的に判定チェックをしてくれるシステムなどを導入することで、ミスや漏れを防ぐことができるでしょう。
社会保険の種類、保険料の計算などについてはこちらの記事でもご紹介していますので、併せてご覧ください。
経理プラス:法定福利費の計算方法とは?福利厚生費との違いをマスターしよう
まとめ
今回は、算定基礎届の概要や対象となる報酬、算定方法や提出期限、注意点などについてご紹介しました。すべての労働者が対象となるため、チェックの数も多くミスにもつながりやすくなります。
定時決定では早めの準備で余裕をもって作成することが大切であり、随時改定においては日頃のチェックをしっかりと行うことがポイントとなります。未提出とならないように気を付けながら進めていきましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。