定額小為替の勘定科目は?仕訳例と会計処理における注意点
日本の普通郵便では、現金を封筒に入れて送ることが禁じられています。そこで、金銭のやりとりで利用されるのが、「定額小為替(ていがくこがわせ)」です。郵便局で定額小為替を購入し、それを郵送することで送金することができます。それを受け取った者はゆうちょ銀行や郵便局で現金に変えることができます。
この記事では、経理担当者に向けて、定額小為替の勘定科目について解説します。使用時と購入時で仕訳方法が異なる定額小為替を理解できるよう、基礎知識を詳しく説明します。
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定額小為替(定額小為替証書)の勘定科目は?
定額小為替には、50円~1,000円まで12種類の金額が記載されており、郵便局などで現金と交換できるほか、取引先への支払いにも利用できます。
会計における勘定科目を確認していきましょう。
定額小為替の会計上の取り扱いは「現金」
定額小為替は金融機関でいつでも現金と交換でき、支払手段として第三者へ譲渡することができます。現金の代わりに用いられる証券(通貨代用証券)であることから、会計上の取り扱いは資産の「現金」として仕訳します。
定額小為替の勘定科目
購入時の勘定科目
定額小為替を購入した場合、購入した額面金額は資産の「現金」で計上します。定額小為替は1枚につき200円の発行料金が発生します。この発行手数料は費用の「支払手数料」で計上します。
使用時の勘定科目
定額小為替は銀行で現金に変換するほか、現金の代わりとして第三者に支払うこともできます。そのため、使用時の勘定科目はその使用目的によって異なります。
たとえば、定額小為替を現金の代わりとして、取引先に支払った場合は、資産「現金」を減らし、その相手方は負債「買掛金」の減や、費用「外注費」の増などで経理処理します。
また、行政機関へ手数料として支払った場合は、資産「現金」を減らし、その相手方は費用「支払手数料」の増や、費用「雑費」の増で処理します。
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定額小為替の仕訳例
では、実際の定額小為替の仕訳例について、表形式で紹介していきましょう。
定額小為替を購入した場合
郵便局で、現金で定額小為替(額面1,000円)を購入したとします。定額小為替の額面金額は課税対象外です。定額小為替の発行手数料は一律200円(税込)のため、合計1,200円の現金を支払います。
この発行手数料は郵便局から受けるサービスの対価であることから、消費税の課税対象です。そのため、200円は支払手数料と仮払消費税等に分ける必要があります。
仕訳としては、貸方金額で資産の「現金」を減らし、借方金額で資産「現金」(定額小為替のこと)の増、費用「支払手数料」の増、資産「仮払消費税等」の増となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
現金 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 | 日本郵便株式会社 定額小為替 | |
支払手数料 | 182円 | 現金 | 200円 | 日本郵便株式会社 定額小為替発行手数料 | |
仮払消費税等 | 18円 |
定額小為替を使用して支払った場合
次に支払に使った場合を見ていきましょう。
区役所で納税証明書を発行するにあたり、その発行手数料を定額小為替の使用により支払うとします。
行政の手数料は消費税非課税とされているので、定額小為替の「現金」を減らし、費用「租税公課」を増やす仕訳をします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
租税公課 | 500円 | 現金 | 500円 | 〇〇区役所 納税証明書 |
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定額小為替の会計処理における注意点
ここまでご説明した通り、定額小為替は現金として計上し、利用することができます。しかし、購入時に発行手数料が発生することから、注意が必要です。
定額小為替を会計処理する上で気を付けておきたい注意点を見ていきましょう。
定額小為替の勘定科目に対する消費税区分について
注意しておきたいのが税金です。
購入時、額面金額の部分は「非課税」として消費税の計算対象外です。これは一時的に現金を証書に代えただけで、資産の譲渡やサービスの提供などに該当しないことが理由です。一方、購入時にかかる200円の発行手数料は「課税」となり、消費税の計算対象となります。
定額小為替を購入する際には、この消費税課税・非課税の違いに注意して会計処理しましょう。
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年度末における処理について
年度末に未使用の定額小為替がある場合、貸借対照表の流動資産に計上します。
「現金及び預金」の内訳科目として「定額小為替」を設定し、未使用分の定額小為替の額面金額の合計と差異がないか確認しましょう。
まとめ
今回は、定額小為替の経理処理について説明しました。
定額小為替は流動資産の現金として扱いますが、購入時の発行手数料は費用となるため注意が必要です。これらの細かい経理処理は、会計ソフトを用いることで間違いのない処理ができるようになります。会計ソフトを用い、業務効率化を実現しましょう。
定額小為替に関するQ&A
最後に定額小為替に関するよくある質問にお答えしていきます。
Q1. 定額小為替に有効期限はありますか?
定額小為替の有効期間は発行日から6カ月です。有効期間が経過した場合は、また郵便局やゆうちょ銀行に対して、再発行の請求を行う必要があります。定額小為替証書の再交付は1枚につき200円の手数料がかかります。
なお、発行日から5年間、再発行や為替金の請求がない場合は為替金の受け取りができなくなります。注意しましょう。
Q2. 定額小為替を購入する際の持参物は?
お金が必要です。窓口にある定額小為替振出請求書を記入すれば、購入できます。
Q3. 定額小為替を紛失した場合、再発行はできますか?
可能です。
定額小為替証書を紛失・汚染・き損したとき、有効期間が経過したときは、請求により定額小為替証書を再交付してもらうことができます。ただし、紛失の場合、紛失した定額小為替証書の有効期間内は、再交付を行いません。
Q4. 定額小為替を購入した際の発行手数料は「雑費」で処理できますか?
可能です。
雑費とは、少額かつ重要度の低い支出を処理する勘定科目です。発行手数料は200円と少額のため、年間の発行回数が少なければ雑費として処理できます。ただし、雑費にはその他にも様々な経費が含まれることが多いため、見返した際に使用用途が不明瞭になりやすい点は注意が必要です。
Q5. 受け取った定額小為替を現金化するにはどうしたらいいですか?
ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口で、額面の現金と換金できます。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。