高速代の勘定科目は車両費?旅費交通費?仕訳の具体例と注意点

高速代の勘定科目は車両費?旅費交通費?仕訳の具体例と注意点

業務で発生する高速代をどの勘定科目で処理すべきか悩むことはありませんか?高速代は「車両費」または「旅費交通費」のどちらかの勘定科目で処理することが一般的ですが、どちらを選ぶかは事業の実態や業務内容によって異なるため注意しなければなりません。高速代を経費処理するうえでは、適切な勘定科目を選び、正確に仕訳を行うことで、正しい経費処理ができるようになります。

この記事では、高速代を「車両費」または「旅費交通費」で処理する具体的なケースと、現金払いとETCカード払いの場合とで異なる仕訳例、その際に注意すべきポイントなどについて解説します。

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高速代の勘定科目

業務で発生する高速代は、事業経費として計上する際に「車両費」または「旅費交通費」という勘定科目で処理します。このどちらの勘定科目を使用するかは、事業の実態や業務内容に応じて判断することが重要です。それぞれの勘定科目の特徴を理解し、適切な分類を行うことで、適切な経理処理が可能になります。

車両費

車両費とは、事業で使用する車両やバイクの維持管理費用をまとめて処理する勘定科目です。特に車両を利用するのが営業担当者のような特定の個人である場合や、個人事業主として自身で車両を利用する場合に車両費という勘定科目が利用されます。例えば、営業車を日常的に使用する事業者や、配送業務に従事している個人事業主などは、車両費の勘定科目を使用することが一般的です。車両の使用頻度が高い場合、維持管理にかかる支出を明確に把握するために、車両費としてまとめると便利です。

車両費の具体例としては、高速代の他に以下のような費用が含まれます。

  • 車検代
  • ガソリン代
  • 洗車代
  • 車両修理費
  • 自動車保険料
  • 自動車税などの税金

これらの費用を車両費として一括管理することで、事業用車両の維持管理コストを正確に把握し、適切に経費計上することができます。ただし、自動車税、自動車重量税のように税区分が異なるものが車両費に含まれるため、注意が必要です。

旅費交通費

旅費交通費とは、業務での移動に伴う支出を処理する勘定科目です。特に車両運搬具を利用するのが特定の個人ではなく、出張や不定期の業務などで高速道路を利用するケースにおいて旅費交通費という勘定科目が使われます。例えば、社員が出張で車を利用する場合や、プロジェクト単位で現場を訪れる際の移動費用などが該当します。

旅費交通費は、業務での移動が多く、その移動にかかる支出を明確にしたい場合に適しています。高速代以外で旅費交通費として計上できる費用の例として、以下のようなものがあります。

  • 電車代
  • バス代
  • 通勤交通費
  • ホテルなどの宿泊費

これらの費用を旅費交通費として管理することで、移動にかかる総費用を正確に把握し、適切な経費計上が可能になります。業務上の移動が頻繁に発生する場合や、移動費用を詳細に管理したい場合には、旅費交通費として処理することが推奨されます。

いずれの勘定科目を使用する場合も、一度決めた分類は継続して使用することが重要です。むやみに変更すると、財務諸表の比較が困難になるだけでなく、外部からの信頼を損ねる可能性もあります。事業の実態に即した適切な勘定科目の選択と一貫した運用が求められます。

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高速代の勘定科目の仕訳例

業務で発生する高速代を適切に仕訳することは、正確な経理処理と財務管理に欠かせません。高速代の仕訳は、主に「車両費」または「旅費交通費」という勘定科目を使用して行います。ここでは、それぞれの勘定科目を使用した場合の具体的な仕訳例について、現金払いとETCカード払いに分けて解説します。

車両費の場合

車両費とは、事業で使用する車両やバイクの維持管理費用を処理する勘定科目です。事業用車両の維持費を一括して管理する場合に使用されるケースが多い勘定科目です。

現金払い

事業に関する高速代を現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。

例: 事業に関する高速代5,000円を現金で支払った場合

借方金額貸方金額
車両費5,000円現金5,000円

この仕訳は、事業において高速道路を使用した際に発生した費用を「車両費」として記録し、その支払い手段が現金であったことを示します。

ETCカード払い

高速代を事業用のETCカードで支払った場合、支払いが後日に行われるため、未払金を使用します。

〈口座からの引き落とし前〉

借方金額貸方金額
車両費5,000円未払金5,000円

この仕訳は、ETCカードを利用した時点で費用が発生し、支払いはまだ行われていないことを示します。未払金として記録することで、将来の支払いを示します。

〈口座からの引き落とし後〉

借方金額貸方金額
未払金5,000円普通預金5,000円

この仕訳は、後日にETCカードの利用料金が銀行口座から引き落とされたことを示します。未払金を消去し、銀行口座の残高が減少したことを記録します。

旅費交通費の場合

旅費交通費とは、業務での移動に伴う支出を処理する勘定科目です。出張や不定期な業務移動が多い場合に適しています。

現金払い

旅費交通費の場合も、車両費と同様の記載方法で仕訳を行います。

例: 事業に関する高速代5,000円を現金で支払った場合

借方金額貸方金額
旅費交通費5,000円現金5,000円

この仕訳は、事業において高速道路を使用した際の費用を「旅費交通費」として記録し、その支払い手段が現金であったことを示します。

ETCカード払い

旅費交通費の場合も、ETCカードを使用した場合の仕訳は車両費と同様です。

〈口座からの引き落とし前〉

借方金額貸方金額
旅費交通費5,000円未払金5,000円

この仕訳は、ETCカードを利用した時点で費用が発生し、支払いがまだ行われていないことを示します。

〈口座からの引き落とし後〉

借方金額貸方金額
未払金5,000円普通預金5,000円

この仕訳は、ETCカードの利用料金が銀行口座から引き落とされたことを示します。未払金を消去し、銀行口座の残高が減少したことを記録します。

いずれの場合も、一貫した勘定科目の使用が重要です。事業の実態に合わせて、適切な勘定科目を選び、正確な仕訳を行うことで、記帳の適切さを担保できます。

高速代を仕訳する際の注意点

業務における高速代の仕訳は、正確かつ透明性の高い財務管理において非常に重要です。適切な勘定科目を選び、証憑を確実に保管し、従業員による立替精算のルールを明確にすることが求められます。ここでは、高速代を仕訳する際の重要な注意点について解説していきましょう。

一度使い始めた勘定科目は継続して使用する

勘定科目を選ぶ際には、「車両費」か「旅費交通費」のどちらかに決め、それを一貫して使用することが重要です。勘定科目を何度も変更してしまうと、過年度との一貫性が失われてしまいます。また、外部からは「何かを隠ぺいしようとしているのでは?」という疑念を持たれてしまうおそれがあります。そのため、初めに選んだ勘定科目を継続して使用することが大切です。

例えば、業務用の車両を頻繁に使用する場合は「車両費」として一貫して処理し、出張や不定期の業務移動が多い場合は「旅費交通費」を選び、継続して使用します。これにより、経費の分類が明確になります。

領収書などの証憑を添付してもらう

高速代を経費として計上する際には、領収書やその他の証憑を確実に保管することが不可欠です。会社の場合、高速道路の利用料金が業務上の移動に必要だったことを明示するために証憑が必要です。一方、個人事業主の場合は、事業に関連する費用であることを証明するために証憑が必要となります。

経費の計上には基本的に領収書の提出と保管が求められます。ETCカードを利用した場合、領収書の代わりに利用明細書を使用します。利用明細書には、高速代や利用した日時、通過したインターが記載されており、経費の裏付けとして十分に役立ちます。これにより、経費の適切さが証明できます。

ETC料金の立て替えのルールを決めておく

従業員がETC料金を立て替える場合、その精算手続きがスムーズに行われるように、社内で明確なルールを設けることが重要です。立替精算のルールが曖昧だと、精算や仕訳の手続きが煩雑になり、担当者の手間が増えてしまいます。

具体的には、以下のようなポイントについてルールを決めておくと良いでしょう。

  • 1. ETCの利用ポイントの扱い
  • 2. 精算の締め日
  • 3. 上長の承認の有無

従業員がETC料金を立て替える場合、社内で明確なルールを設けることで、精算手続きがスムーズに行われ、経理担当者の負担を軽減できます。以下では、各ポイントについて具体的にどのようなルールを設けるべきか解説します。

1. ETCの利用ポイントの扱い

ETCの利用により獲得されるポイントの扱いについて、明確な方針を設定することが重要です。ポイントは、利用者に還元される場合や会社に還元される場合があります。どちらの方法を採用するかを決め、それを従業員に周知徹底します。

○ポイントの会社帰属
ポイントを会社の資産として扱う場合、ポイントの利用方法と管理方法を明確にします。例えば、ポイントは会社の特定の交通費にのみ使用するといったルールを設定します。従業員が個人のポイントアカウントにポイントを貯めないように注意を促します。

○ポイントの個人帰属
ポイントを従業員個人に還元する場合は、その旨を従業員に通知し、ポイントの管理は個人に任せることを明確にします。これにより、ポイントに関する会社の管理負担を軽減できます。

2. 精算の締め日

精算の締め日を明確に設定することで、経理業務の効率化を図ります。締め日は毎月一定日に設定し、その日までに精算手続きを完了するよう従業員に周知します。

○毎月の締め日設定
例えば、毎月25日を締め日とし、従業員はその日までにすべてのETC利用明細書や領収書を提出します。これにより、経理担当者は月末にまとめて処理を行い、業務の効率化を図れます。

○提出期限の厳守
締め日の厳守を徹底するために、提出期限を過ぎた場合の対応策(例: 次月精算への繰り越し、遅延理由の記載義務など)を明確にしておきます。

3. 上長の承認の有無

上長の承認プロセスを設定することで、立替精算の妥当性を確認し、不正やミスを防ぎます。承認プロセスはシンプルで明確に設定し、全従業員に徹底します。

○承認フローの設定
従業員がETC料金の精算を申請する際、必ず直属の上長の承認を得ることを義務付けます。上長は精算申請の内容を確認し、必要に応じて補足説明や修正を指示します。

○承認の証拠書類
承認プロセスを電子システムで行う場合は、承認履歴を保存し、いつでも確認できるようにします。紙ベースで行う場合は、上長の署名や捺印を必要とし、承認済み書類を精算書に添付して提出させます。

まとめ

高速代の勘定科目の選定と仕訳処理は、事業の実態に合わせて慎重に行う必要があります。
「車両費」は、業務用車両の維持管理費用を一括して管理するのに適しており、頻繁に車両を使用する事業者に向いています。
一方、「旅費交通費」は、出張や不定期の業務移動に伴う費用を明確に管理するのに適しています。
一度決めた勘定科目は継続して使用し、領収書や利用明細書を確実に保管することが重要です。また、従業員がETC料金を立て替える場合には、精算手続きのルールを明確に定めることで、経理業務の効率化と透明性の確保が可能です。これらのポイントを押さえて、正確な経理処理を行いましょう。

高速代の勘定科目や会計処理に関するQ&A

高速代の経費計上や仕訳方法に関する疑問は、日常の経理業務においてよく見られます。
ここでは、高速代に関する勘定科目や会計処理についてのよくある質問(Q&A)を解説します。適切な経理処理を行うための参考にしてください。

Q1. ETCを利用した際の勘定科目は?

ETCを利用した場合でも現金で支払った場合でも、高速代の仕訳方法は基本的に変わりません。高速代は「車両費」もしくは「旅費交通費」のいずれかの勘定科目を使用します。

具体的には、以下のように仕訳を行います。

■車両費の場合

事業で使用する車両やバイクの維持管理費用を一括して管理するために「車両費」を使用します。高速代もこの一環として計上します。

【現金払い】
例: 事業に関する高速代5,000円を現金で支払った場合

借方金額貸方金額
車両費5,000円現金5,000円

【ETCカード払い】
ETCカード払いでは、1ヶ月後の支払いとなるので、高速代を支払った時点では未払金として処理します。

〈口座からの引き落とし前〉

借方金額貸方金額
車両費5,000円未払金5,000円

■旅費交通費の場合

出張や不定期の業務移動に伴う費用を明確に管理するために「旅費交通費」を使用します。

例えば、次のような仕訳を行います。

【現金払い】
例: 事業に関する高速代5,000円を現金で支払った場合

借方金額貸方金額
旅費交通費5,000円現金5,000円

【ETCカード払い】
旅費交通費の場合も、ETCカードを使用した場合の仕訳は車両費と同様です。

〈口座からの引き落とし前〉

借方金額貸方金額
旅費交通費5,000円未払金5,000円

Q2. 高速代を経費計上するためのETCの利用明細はどこでもらう?

高速代を経費として計上する際、ETCの利用明細は重要な証憑となります。ETCの利用明細は以下の方法で取得することができます。

1.ETC利用照会サービス
インターネット上でETCの利用明細を確認できるサービスです。各道路事業者が運営しており、過去の利用明細も確認・出力できます。登録(年会費無料)が必要ですが、一度登録すれば、PDFやCSV形式で明細をダウンロード可能です。一般に、高速代の証憑として活用されているケースが多いのがETC利用照会サービスです。

2.ETC利用履歴発行プリンター
高速道路の主要なパーキングエリアやサービスエリアに設置されています。ETCカードを差し込んで利用履歴を印刷できます。リアルタイムでの利用明細確認が可能ですが、一部の最新利用分は出力できない場合があるので注意が必要です。

3.クレジットカード会社からの明細書
クレジット機能付きETCカードを利用している場合、毎月のクレジットカード利用明細にETC利用分が記載されます。特に手続きが不要で、クレジットカード発行会社から自動的に送付されます。近年では、オンラインで利用明細書を確認することも可能です。

Q3. 高速代はインボイス制度で消費税の控除を受けられる?

高速代もインボイス制度の対象となり、適切に処理することで消費税の控除を受けることができます。インボイス制度とは、事業者が取引ごとに発行する請求書や領収書に、消費税額や事業者番号などの情報を記載することで、仕入税額控除を可能にする制度です。
高速代を経費計上する際に消費税の控除を受けるためには、以下の点に注意します。

●適格請求書の発行
ETC利用明細書や領収書が適格請求書として機能するため、必要な情報(取引先の事業者番号、消費税額など)が記載されていることを確認します。
●証憑の保管
適格請求書としての要件を満たしたETC利用明細書や領収書を適切に保管し、税務調査などに備えます。

Q4. 消費税の控除を受ける場合に領収書は必要?

消費税の控除を受けるためには、原則として適格請求書(インボイス)としての要件を満たした領収書や利用明細書が必要です。これにより、仕入税額控除の要件を満たすことができます。

●領収書の要件
領収書には、取引先の名称、取引内容、消費税額、発行者の情報(名称・住所・事業者番号)が記載されていることが必要です。
●ETC利用明細書
ETCカードを利用した場合、領収書の代わりに利用明細書が使用できます。この明細書には、高速道路の利用日時、料金、通過したインターの情報が記載されています。

適切な証憑を保管することで、消費税の控除を受けるための要件を満たし、税務上のリスクを回避することができます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 宮川 真一

税理士 宮川 真一さま

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表 岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。 現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。 また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。 【保有資格】 税理士、CFP®

税理士法人みらいサクセスパートナーズ