配賦とは?基準の決め方や計算方法を解説
企業の生産活動により発生するコストを製造原価と言います。製造原価は大きく材料費、労務費、経費に分かれますが、これらを上手に割り振らないと「製品1単位あたりの原価」を算出できません。
配賦とは特定の基準によって原価を製品に割り振ることであり、正確な原価計算には必須の知識です。ここでは「配賦とは?」「配賦基準とは?」といった基礎的な知識や、考え方のポイントを分かりやすく解説します。
経理プラス:原価計算とは?目的・種類・計算方法・仕訳例など基本知識を解説!
配賦とは?
配賦とは、「製品に直接紐付けられない共通的な原価を何らかの基準で割り振ること」です。生産設備にかかる修繕費や減価償却費、水道代、電気代、工場事務員の労務費などは特定製品と直接的な関連はありませんが、生産活動には必要な原価です。このような原価を「間接費」と言います。間接費を製品に負担させるときに、何らかの関連性の高い基準で割り振ることを「配賦計算」と言います。
一方、素材費や直接工の労務費、外注費といった、どの製品に使われたかが明らかな原価を「直接費」と言います。直接費は該当する製品へ直課されます。
配賦の目的
配賦の目的は、正確な製品原価の算出です。共通的にかかる間接費を配賦することで正しい原価が計算され、製品ごとの収益性評価や具体的なコスト削減目標の設定が可能となります。
配賦のメリット
配賦のメリットとしては、工場長などの管理者が自部門だけではなく、会社全体のコストや収益を意識するようになることも挙げられます。事業部や工場の責任者には管轄する製品の収益を上げていく責任がありますが、コストについては自部門のみを管理範囲と考えがちです。間接費を配賦することで、会社全体のコストに対して十分な収益が確保されているかを意識できます。
配賦と按分の違い
配賦とよく似た言葉に按分があります。按分とは、「基準に応じて物品や金銭を分けること」です。たとえばシェアハウスの家賃を、占有面積見合いで分けることなどがイメージしやすいでしょう。日常生活や家事按分、期間按分などさまざまな場面で広く使われます。
配賦も按分と同じく「基準に応じて分ける」という意味を持ちますが、さらに「分けたものを配る」の意味合いを含みます。また、配賦は通常、間接費の割り当てといった原価計算にのみ使われる点も按分と異なります。
配賦基準の決め方
配賦には「部門別配賦」と「製品別配賦」2つがあります。
部門別配賦
原価計算は通常、費目別原価計算、部門別原価計算、製品別原価計算の順に実施します。部門別配賦は、第二ステップである部門別原価計算において、補助部門(間接部門)の費用を配賦率に従って製造部門(直接部門)へ配賦することです。
補助部門は電力などを供給するエネルギー部門、工場の修繕を担当する設備部門、製品の試験を行う検査部門などがあるでしょう。また、総務部、経理部、資材調達を行う購買部といった、工場管理を行う部門も補助部門に含まれます。補助部門ごとに配賦基準を設定して製造部門へ配賦するのですが、その配賦方法には「直接配賦法」「階梯式配賦法」「相互配賦法」の3種類があるので覚えておいてください。
1)直接配賦法
すべての補助部門費を製造部門のみに配賦する方法です。たとえばエネルギー部門が提供する電力や水は他の補助部門でも使用しますが、計算上は無視します。もっともシンプルな配賦方法ですが、計算の正確さにやや難があります。
2)階梯式配賦法
補助部門間で行うサービスを比較し、他の補助部門への提供が多い順から費用を配賦していく方法です。提供数が同じ場合は、金額の大小で順番を判断します。補助部門への配賦も行いますので正確性は向上しますが、配賦順位の低い補助部門のサービスは正確に反映されているとは言えません。
3)相互配賦法
まず、補助部門を含めたすべての部門間での配賦計算を行います(一次配賦)。次に、一次配賦で割り当てられた費用を、直接配賦法と同様に製造部門のみに配賦します(二次配賦)。
補助部門間の配賦率をすべて設定するため手間がかかりますが、他の配賦方法より正確性が増します。
製品別配賦
部門別原価計算で補助部門から製造部門へ配賦された金額を、作業時間や生産量などの配賦基準によって、今度は製品ごとに割り振ることを製品別配賦と言います。小規模な工場で製品の種類も少なければ部門別原価計算を行わず、間接費を作業時間見合いなどで製品に配賦する方法も考えられるでしょう。しかし原価をその発生場所別で押さえ、管理を効果的に行うために、通常は部門別原価計算を実施します。製品別配賦は、製造部門の間接費と補助部門から配賦された費用を製品別に割り振る方法と理解しましょう。
配賦の具体的なやり方
部門別配賦と製品別配賦のどちらにおいても、配賦基準の設定、配賦率の計算、配賦額の決定の手順で進みます。
配賦基準の設定
部門別の配賦基準は対象の補助部門の費用発生と関係性が強く、また、数字として把握できるものを選択します。たとえば、修繕部門は修繕作業時間見合いで配賦し、経理や総務などの事務部門は各製造部門の在籍人員数で配賦するなどです。
製品別の配賦基準は、製品ごとの生産重量といった物量基準、直接材料費の金額見合いなどの金額基準、機械稼働時間や作業時間による時間基準のいずれかを用います。配賦基準によって各製造部門や製品の負担額が変わるので、関係者が納得できる基準を設定することが重要です。一方、あまり細かく設定すると説明が難しくなりますし、コスト自体が減るわけではありません。そのため、「共通部門は労務費見合いで配賦」などの割り切りも実務的には重要です。
配賦率の計算
各部門への配賦率を決定します。たとえば事務部門を在籍人員数で配賦する場合、配賦率の計算は下記表の通りです。
例:事務部門の配賦率
部門A | 部門B | 部門C | 合計 | |
---|---|---|---|---|
在籍人員 (配賦基準) | 100人 | 70人 | 30人 | 200人 |
配賦率 | 50% | 35% | 15% | 100% |
配賦額の算出
間接費に配賦率を掛けて配賦金額を算出します。どんな配賦の方法であってもすべての金額を配賦し、補助部門や間接費がゼロになっていることを確認しましょう。
例:事務部門の配賦額(100万円)
部門A | 部門B | 部門C | 合計 | |
---|---|---|---|---|
配賦率 | 50% | 35% | 15% | 100% |
配賦額 | 50万円 | 35万円 | 15万円 | 100万円 |
まとめ
原価計算で行う配賦について、部門別と製品別のそれぞれについて解説しました。配賦は関係者の納得感が重要ですが、個別に要望を聞いていくと非常に複雑なものになってしまいます。実務的には共通部門は在籍人員数見合いで配賦するなど、割り切りをルール化することも少なくありません。さまざまな配賦方法があり、混乱しやすい論点ですので整理して理解しましょう。
経理プラス:売上原価とは?4つの仕訳方法をマスターしよう
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。