不動産取得税の勘定科目と仕訳の例|経費や消費税との関係は?

不動産取得税の勘定科目と仕訳の例|経費や消費税との関係は?

不動産の取得は、多くの個人や企業にとって大きな決断です。不動産取引においては、さまざまな税金が関わり、中でも不動産取得税はその重要な要素の一つです。この記事では、不動産取得税に関連する会計処理、具体的な仕訳例、そして経費計上の方法について詳しく掘り下げています。また、不動産取得税が消費税とどのように異なるか、および両者の関係についても解説します。

不動産取得税と勘定科目の基礎知識

まずは、不動産取得税と勘定科目の基礎知識について解説していきましょう。

不動産取得税とは?

不動産取得税とは、不動産を取得した際に課される地方税のことを言います。以下では、不動産取得税の意味と計算方法に分けてわかりやすく解説します。

  1. 不動産取得税の意味
  2. 不動産取得税は、土地や家屋など不動産を取得した際に一度だけ課される地方税です。この税金は、新築、購入、増改築、贈与、交換など、不動産を取得する方法に関わらず、不動産を取得した場合に適用されます。

  3. 不動産取得税の計算方法
  4. 不動産取得税の計算は、その不動産の固定資産税評価額に基づきます。具体的な計算式は「固定資産税評価額 × 税率」です。一般的な税率は4%ですが、令和6年3月31日までに取得した土地や住宅家屋に対しては、軽減税率の3%が適用される場合があります。さらに、不動産の取得方法や金額によっては非課税となるケースもあります。たとえば、相続による不動産の取得、10万円未満の土地取得、12万円未満の建物の売買、23万円未満の新築や増改築などが非課税の対象となります。

勘定科目とは?

勘定科目は、取引を仕訳する際に記録のために付ける名前のことを言います。たとえば、「売上」や「仕入」「備品」「建物」などがあり、勘定科目があることで、企業の経済活動を体系的に管理することができるようになります。

不動産取得税を仕訳する際には、「租税公課」という科目を使用します。

租税公課は、国税や地方税などの「租税」と、国や地方公共団体に対する公的な課金である「公課」を含む費用の勘定科目です。    

不動産取得税の支払い方法(現金払い、クレジットカード払い等)に応じて、仕訳が異なる場合がありますが、借方「租税公課」の勘定科目を用いて処理されます。たとえば、現金で支払った場合は「租税公課」を借方に、「現金」を貸方に記録します。一方で、クレジットカードで支払った場合は、支払い時に「租税公課」を借方に、「未払金」を貸方に記録し、クレジットカード会社からの請求が口座から引き落とされた時点で「未払金」を借方に、「普通預金」を貸方に記録することになります。

不動産取得税の勘定科目と仕訳の例

不動産取得税に使われる勘定科目と、支払い方法によって異なる仕訳例について解説します。

不動産取得税の勘定科目

不動産取得税の会計処理においては、一般的に勘定科目「租税公課」が使用されます。この科目は、企業や個人事業主が国や地方公共団体に納める税金や手数料などを総称するものです。具体的に、「租税」には固定資産税、登録免許税、不動産取得税、自動車税などが含まれます。これらはすべて、事業活動や資産所有に関連して発生する税金です。一方、「公課」には行政サービスの手数料、延滞税、不納付加算税、交通反則金などが含まれ、これらは国や地方公共団体への支払い義務を伴う費用です。

不動産売買を主な事業としている不動産会社の場合、「不動産取得税」という独自の勘定科目を設定することも一つの方法です。この場合、不動産取得税は売上原価の一部とみなされ、売上原価の計算に含められることになります。これにより、不動産会社は取得した不動産に対するコストをより正確に把握し、財務状況の分析に役立てることができます。

経理プラス:租税公課とは?損金に算入できる・できないものと計上時期、仕訳例

不動産取得税の仕訳例

不動産取得税の支払いに関する会計処理は、支払い方法によって異なる仕訳が必要です。以下に、具体的な仕訳例を示します。

不動産取得税を現金で支払った場合

借方金額貸方金額
租税公課250,000円現金250,000円

不動産取得税をクレジットカードで支払った場合

借方金額貸方金額
租税公課250,000円未払金250,000円

クレジットカード払いにした不動産取得税の請求額が口座から引き落とされた場合

借方金額貸方金額
未払金250,000円普通預金250,000円

これらの仕訳は、不動産取得税の支払い方法に応じたものです。現金で支払った場合、不動産取得税の金額を「租税公課」として借方に記録し、同額を「現金」として貸方に記録します。

クレジットカードで支払った場合、最初に「租税公課」を借方に、「未払金」を貸方に記録し、支払いが実際に口座から引き落とされた時点で「未払金」を借方に、「普通預金」を貸方に記録します。

経理プラス:租税公課とは?会計上と税務上の処理の違いに要注意

不動産取得税の経費処理について

不動産取得税は、土地や建物などの不動産を購入する際に発生する費用です。この税金を経費化することは可能であり、会計上の取り扱いには特定のルールが適用されます。

不動産取得税は不動産の取得価額に含める?

不動産の取得価額に不動産取得税を算入する必要はありません。国税庁の通達によれば、「たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる」とされています。この規定により、取得価額から不動産取得税を外すことで、早期に経費化することが可能になります。

出典:国税庁 第1款 固定資産の取得価額

土地の場合、減価償却の対象外であるため、取得価額に含めると売却時まで経費にならない点が特徴です。一方で建物の場合、減価償却が可能ですが、全額が経費になるまでには長い期間が必要となります。

経費に計上できる時期

不動産取得税の損金算入時期は、納税通知書が届いた時点です。固定資産税と異なり、分割での納付は原則として認められていません。また、納税通知書が届く前に、概算で見積もって経費計上することも一般的には認められていないことが通例です。

不動産取得税と消費税の関係

不動産取得税と消費税は、税金であることは共通しているものの、その性質は異なります。消費税は、何かを消費した際に生じる税金である一方で、不動産取得税は、不動産を取得した際に生じる税金です。したがって、不動産取得税と消費税には直接的な関係はありません。

しかし、不動産を取得した場合、不動産を消費すると考えるため消費税がかかります。たとえば、1,000万円の不動産を不動産会社から購入する場合、不動産取得税の支払いも必要ですし、これに加えて10%の消費税を支払わなければなりません。

不動産取得税は消費税の課税対象になる?

不動産取得税は消費税の課税対象とはなりません。その理由は、不動産取得税自体が税金であるためです。消費税は、モノやサービスの購入時に生じる税金であり、他の税金に対しては課税されないのが一般的です。したがって、不動産を取得する際に支払う不動産取得税に対して、消費税を加算することはありません。

不動産取得時に消費税が課税される取引・されない取引

不動産取得時に消費税が課税されるか否かは、取引の性質によって異なります。

消費税が課税される取引

  1. 事業者間の取引
    事業者から他の事業者や消費者への不動産の売買は、消費税の対象です。たとえば、不動産会社が顧客に住宅を販売する場合、その取引には消費税が課税されます。
  2. 新築物件の購入
    新築の家屋やマンションを購入する際にも、消費税が課税されるのが一般的です。これは、新築物件が事業者によって提供される商品とみなされるためです。
  3. 建物の仲介手数料
    不動産の仲介手数料にも消費税が適用されます。これは、仲介サービスが消費者に対して提供されるサービスとみなされるためです。

消費税が課税されない取引

  1. 土地の取得
    土地の取得自体には消費税は課税されません。これは、土地が消費税法の規定において非課税対象とされているためです。
  2. 個人間の取引
    個人から個人への不動産売買では、通常、消費税は課税されません。これは、個人が非事業者としての取引に該当するためです。

不動産取得税は適切な勘定科目で仕訳しよう!

不動産取得時に生じる不動産取得税には、「租税公課」という勘定科目が用いられ、これには国税や地方税など、国や地方公共団体に納める税金や手数料が含まれます。

支払い方法に応じた仕訳の例として、現金やクレジットカードでの支払いがあり、それぞれのケースに応じた適切な会計処理が必要です。

不動産取得税についてのQ&A

不動産取得税に関する疑問は多岐にわたります。以下に、よくある質問とその回答をまとめました。

Q1.不動産取得税の勘定科目は何?

不動産取得税の勘定科目としては、一般的に「租税公課」が適切です。租税公課とは、国税や地方税など、国や地方公共団体に納める税金や手数料などの総称です。これには不動産取得税のほか、固定資産税や自動車税、登録免許税などが含まれます。

Q2.不動産取得税の損金算入時期はいつ?

不動産取得税の損金算入時期は、納税通知書が届いた時点です。これは、税金の額が確定し、納付の義務が発生したことを意味します。一般的に、固定資産税のように分割で納税することは認められていないため、不動産取得税に関しては納税通知書が届いた時点で全額が損金として計上されることになります。

Q3.不動産取得税の納付期限はいつ?

不動産取得税の納付期限は、都道府県から送付される納税通知書に記載されています。通常、不動産を取得してから半年から1年後に納税通知書が届くことが多く、通知書には納税の方法と期限が明記されています。期限までに指定された方法で納税を完了する必要があります。

Q4.不動産取得税が課税されないのはどんなとき?

不動産取得税は、不動産を取得する方が意思を持って不動産を取得したときに課される税金です。そのため、たとえば、相続によって不動産を取得した場合には、不動産取得税が課税されません。不動産を取得した方が意図して相続したわけではないからです。もちろん、不動産を相続によって取得した際には、相続税が課税されます。

他にも、法人の合併または一定の分割によって不動産を取得し、一定の要件を満たした場合、学校法人、宗教法人などが事業に用いる不動産を取得した場合、公共の用に供する道路などの用地を取得した場合、土地改良事業・土地区画整理事業の施行に伴う換地などで取得した場合は、不動産取得税が課税されません。

Q5.不動産取得税の申告を失念した場合はどうすれば良い?

不動産を取得して、それを登記している場合には申告する必要がそもそもありません。通常、不動産を取得した際に登記を行うか、登記の変更を行います。そのため、課税を行う行政側が、不動産を取得した事実を把握しています。結果として不動産取得の事実をわざわざ申告する必要がありません。申告せずとも、行政側から不動産取得税に関する納付書が送付されてくるので、納付書を利用して不動産取得税を納めます。ただし、不動産取得税の軽減などを求める場合には、自身で不動産取得税に関する申告を行う必要があります。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 宮川 真一

税理士 宮川 真一さま

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表 岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。 現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。 また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。 【保有資格】 税理士、CFP®

税理士法人みらいサクセスパートナーズ